第35話 AIに囲まれた世界〜レンタル父親って?

『良かったですねぇ?芳樹君。』

『そうだねぇ?学校に3ヶ月休んでも、優等生だからすぐに学校に溶け込んでいるし、先輩からイジメにあっていたわけでもなくて、野球を一生懸命にやっていて、投手で4番で活躍しているよぉ。秋季大会は公立で初めての優勝だからなぁ。』

『でも、すごいですねぇ?何かあったのですか?』

『知りたい?』

『もちろん、知りたいですよぉ。』

『実はなぁ…、レンタル父親の申請をしたら、何とねぇ…お母さんの初恋だった人に出逢っただよぉ。』

『えぇ!それって、運命的な出逢いですねぇ?』

『でしょ?それも、中学校から高校まで一緒のクラスで野球部のキャプテンとマネージャーだったらしいんだぁ。お互いに別々の人生を歩んで奇跡的に再開ってすごいよなぁ?それに、向こうも今でも好きだったらしくて運命の赤い糸がつながったみたいだよぉ。神様は見ているだなぁ?』

『そうですよぉ。神様はいますよぉ。』

『でもさぁ…神様はいるかも知れないけど大変だよなぁ?やっぱり、シフト制で休みは交代で勤務しているのかなぁ?』

『はぁ?神様はいるだろうけど…シフト制、交代勤務って…もう、ロマンチックではないなぁ?』

『ロマンチックではないけど…この仕事をしていると現実的な思考になるし生活困窮者や色々と問題を抱えている人をサポートするだろう?神様っているのか?それまでに神様が助けてあげたら良いのになぁ…って思うんだぁ。だから、どのくらいの人が神様にお願いしてどのくらいの人が幸せだと感じているのかなぁ…ってねぇ?』

『確かにねぇ?かなりの人が神様にお願いするなぁ。それに少ないお布施ですからねぇ…。それにすべての人が公的扶助や社会保障や介護保険などのサポートを理解していなかったり、国の援助にはならないって言う人もいるからなぁ。』

『だろう?でも、この国で生まれたのは運が良いとは思わないかぁ?』

『そうねぇ?確かに、運が良いかもなぁ。戦争もないし、それなりに贅沢をしなければ生きていけるからなぁ。』

『だよなぁ。でぇ、何の話をしていたんだっけ?』

『はぁ?呆れるなぁ…レンタル父親が運命の人だった話でしょ?』

『あぁ…そっか、そっか。』

『でも、レンタル父親に申請したという事は何か問題があったという事でしょ?』

『確かに…問題はあったよぉ。』

『どんな問題があったのですか?』

『ホームレスでアルコール中毒だったよぉ。』

『えぇ?運命の人が無職でホームレスでアルコール中毒ってだめじゃん。』

『だよなぁ。でもなぁ…そんな姿になっても助けてあげたくなるのが女心なのかも知れないなぁ。』

『でも、そうなるには理由があったのでは?』

『そうなんだよぉ。実はなぁ。3年前のネオ東京台風で家が流されて、目の前で奥さんと子供が流されて気付いたら、自分だけ助かったらしいんだぁ。何度も死のうとしたらしいけど死にきれずにアルコールに逃げてアルコール中毒になった。そんな時にNPOのホームレス支援施設で助けてもらってレンタル父親を申請したって訳なんだ。』

『なるほどねぇ…大変だったんだぁ。』

『そうだねぇ。大変だったと思うけど運命的に出逢ったのはお互いに意味があるのかもなぁ。しかし、申請したレンタル父親の方はレンタル父親を受け入れる家庭との面談まで顔が解らないから、逢って数秒で手を握って号泣してたなぁ…。最初は何が起こったのかなぁ…って戸惑ったよぉ。いきなり、声を上げて号泣だからなぁ。というのも、高校の卒業式で告白しようとしたらしいけど…まさかの交通事故にあって意識不明になった事も知らなかったらしい。』

『えぇ、そんな事ってあるんですか?』

『そりゃ、仲良く付き合っている姿を見ていたら、友人はいじわるしたくなるだろう?』

『えぇ?もしかして?』

『そうだよぉ。交通事故の現場に遭遇した友人が携帯を川に流したのさぁ。意識が戻って、半年も過ぎて連絡を入れてもだめだよなぁ?』

『えぇ!最低!もしかして?』

『そうだよぉ。DV夫がその犯人さぁ。結婚して、6年が経過した時に真実を知るのさぁ。』

『そんな残酷なぁ…』

『真実を知った時にはお互いには家庭があって幸せな家庭を送っていたら、コロナウイルスでリモートワークで本性があらわになったという流れだなぁ。』

『でも、幸せになれて良かったですねぇ?』 

『そうだねぇ。』

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