第6章〜依存症対策と農地改革

第34話 AIに囲まれた世界〜ゲーム依存症って?

 『こんにちは、私、先程、連絡を頂いた、社会福祉士の米山幸治です。こちらが助手の三村です。』

『あぁ、どうも、初めまして、レンタル雇用推進社会福祉主事 三村由香です。』

『あぁ、どうも、お忙しいところ、申し訳ございません。田中 佳子(38)になります。今回、芳樹(14)がバーチャルネットゲームですか、最近、流行っている空間リアルをうりにした『天空の楽園〜ピカリスタン』にはまっておりまして…学校に行かなくなりまして…』

『なるほど…最近では、スクールソーシャルワーカーも学校にいるとは思うのですが…相談はされましたか?』

『今は、不景気もあり、スクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラーは私立の中学校からエスカレーターで大学に行ける付属校にしかいないです。』

『あぁ、そうでしたねぇ。今は大学まで誰しもがエスカレーターですから受験は私立と国立しかないんでしたねぇ?』

『えぇ、そう何ですか?知らなかったなぁ。私の時は、公立でも受験があったからなぁ。だから、近くの中学校ではなくて、隣の市にある中学校に進学したなぁ。』

『それでは、少しお母さんに聞き取りをしたいのですが…大丈夫ですか?』

『もちろんです。』

『まずは息子さんが引きこもりになった経緯をお聞かせ下さい。』

『実は8年前に離婚しまして、息子が6歳の頃になります。当時は夫がコロナウイルスで自宅でリモートワークを行ってから、DVが始まりました。最初は暴言から始まって、物を投げたり、壁を叩いたりと散々でした。夜勤明けで帰ってくると突然、腹を蹴られました。最初は何が起こったのかさえ、解らなくて泣いていました。その後、些細な事で叩かれるようになりました。『飯の準備が出来ていない。』『洗濯物がたまっている。』『おかずがまずい。』など。その後、息子に手や足に痣が出来るようになり、息子の安全を考えて離婚しました。』

『なるほど…大変でしたねぇ?』

『そうですねぇ。でも、それからは日勤だけのシフトにして、家族からの援助もあり、息子とともに成長しました。野球をやりたいと言われて、少年野球のチームに入ってレギュラーになり、地元の中学校に入りプロ野球の選手になって、『カーチャンを楽にする。』まで言ってくれました。』 

『なるほど。素敵な息子さんですねぇ?』

『そう何ですか…中学校に入り、野球部に所属してから野球部の先輩からイジメを受けてレギュラーを外されてしまい、同時に野球部を辞めてしまいました。』

『なるほど…野球は好きなんですねぇ?』

『そうですねぇ。野球は好きなんです。甲子園に行きたいとも言ってました。』

『なるほど…ところで息子さんがゲームを始めたきっかけは?』

『実は、野球部を辞めてから学校に行きたくないと言われてしまい。少しでも、気を紛らわせる為にゲームを買ってしまいまして…私も生活の為に夜勤を入れてから息子とも話さなくなりまして…』

『なるほど…学校の先生は来ましたか?』

『学校の担任は最近はアンドロイドなので、学校以外には来ません。その為、学校以外での生徒の関心はAIにより制御されています。』

『なるほど…公立は学費が無料ですからねぇ?やむを得ないですねぇ?』

『そう何ですか…これでは、息子の人生が不安です。』

『なるほど…『もしも、野球をやりたい。と言われ転校したい!』と言われましたらどうしますか?』

『そうですねぇ…野球はやらせたいのですが…公立に通ってもらいたいです。』

『なるほど…学費の問題があるようですねぇ?』

『そうですねぇ…やはり、学費の問題はありますねぇ。』 

『なるほど…学費の問題が解決すれば可能ですねぇ?』

『そうですねぇ…学費の問題が解決出来れば可能ですねぇ?』

『はい。』

『では、息子さんとお話は出来ますか?』

『はい。』

『こんにちは、芳樹君?』

『はい、どちらさまですか?』

『私、社会福祉士の米山と申します。少し、お話を伺っても宜しいですか?』

『はい、大丈夫ですよぉ。』

『『天空の楽園〜ピカリスタン』ですねぇ?楽しいですねぇ?』

『そうですねぇ…楽しいけど、本当は辞めたいんだぁ。やる事もないから、息抜きにやっているけどたいていは寝ているよぉ。』

『なるほど…学校に行きたいのかなぁ?』

『そりゃ、行きたいけど…流石に無断で3ヶ月も行っていないっと…』

『あれぇ、もしかして、右足骨折してません?』

『そうだけど…もう治ってはいるけど…』

『なら、行きませんか?』

『いやぁ、先輩がいる間は流石に顔を合わせたくないから…野球はやりたいけど…』

『なるほど…野球はやりたいけど、先輩がいるチームには行きたくない。骨折の原因は先輩が原因ですねぇ?』

『いやいや、先輩が悪いじゃないだぁ。2階から飛び降りて怪我をしたんだけど…』

『えぇ、そう何ですか…母親には迷惑かけたくないから、野球部でイジメにあって辞めたと嘘をついたねぇ?』

『流石に解るよねぇ。実は、母親が頑張っている姿を見ていてたら、公立で野球をしても、プロになれないし、甲子園に行けないなぁ…って感じたんだ。だから、嘘をついて、イジメにあって骨折した。野球部を辞めたと言ったんだよぉ。』

『なるほど…それで、ゲーム依存症になったふりをしたんだねぇ?』

『芳樹!あんたはもう…』

『カーチャン、聞いていたのかよぉ。』

『あんたの夢は何なの?プロ野球選手でしょ?』 

『家は貧乏じゃないかぁ…』

『あんたの夢を諦めないわぁ…これから、レンタル父親を申請するからねぇ?』

『大丈夫なのかよぉ?知らない人が父親になるのは嫌じゃないのかよぉ?』

『大丈夫よぉ。』

『カーチャン、ありがとう。明日には学校に行くよぉ。』


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