第26話 AIに囲まれた世界〜仮設住宅の住民たち

『この度はお忙しい中、大変な時に住民懇親会にご参加頂き誠にありがとうございます。』

『米さん、真面目かい?もっと、ざっくばらんに話そうよぉ?』

『俺たちは命があるだけで有り難いって…思っているし、米さんがネオ東京センターシティーの役所に急ぎで仮設住宅を依頼しなければテント暮らしだったからなぁ。』

『そうだよぉ。』

『ありがとうねぇ。』

『いやいや、本来なら避難所に集まって過ごしてもらいたかったけど…ソーシャルディスタンスで個別にテントと…本当にすまなかった。

それに、加え、体調を把握出来ないと困るのでビニール素材でなおかつ、プライベートもありゃしなかった。』

『なに、言ってるんですか?経済的に破綻した国ですよぉ。そんな国でも、頑張ってくれたじゃないですか?有り難いですよぉ。』

『そうかなぁ。ところで最近、困っている事などはありますか?』

『ないと言えば嘘になるけど…困っている事はこれからの事だなぁ。仕事にありつけないのがキツイなぁ。社会保障である程度の衣食住は賄ってはもらってはいるけど…その為に、台風で洪水になった前の記憶は全部消されちまった。』

『だからよぉ。ここから再建って…言われてもなぁ…』

『そうさぁ?こいつらが何でここにいて、米さんとの関係はここで作られた。米さんは知っているんだろう?』

『本当は台風は人工的に作られて、AIの管理がしやすくする為じゃないのか?』

『いやいや、そんな事はないと信じたいが…それよりも、仕事は今、何を皆さんされているんですか?』

『えぇ?喋ったよぉ?』

『ビックリしたよぉ。米さんが連れてくるのは…』

『おい、おまえ?その話はここではなしだぁ。消すよぉ?』

『あぁ、すいません。先程の話ですが…最近は、AIに管理されるようになってから…デリバリーサービスの仕事しかないし、派遣だから収入が…』

『ネオ東京になる前の東京がコロナで汚染されてから、おかしくなったし、貧富の差は拡がったなぁ。まずは、自主規制や外出規制、ロックダウンになり、映画館や劇場は閉鎖、屋外のイベントは中止になるし、遊園地も倒産、デパートなど密集する場所や飲食店も次々に倒産、夜の繁華街からは灯りが消え、風俗などは全面禁止になり、しまいにはパチンコなどのギャンブルも禁止になり、多くの失業者は出て、駅前はもはやシャッター通りになったじゃないですか?それから、禁酒法も試行されアルコールの販売は飲食店のみになるし、家庭から晩酌が消えたなぁ。』

『でも、そのおかげで駅前は活気が出るようになり仮設住宅にいてもデリバリーサービスの派遣の仕事があるねぇ?』

『確かになぁ。でもなぁ…最近は、インターネットによる無店舗販売をする以外の店舗経営出来なくなるし、それにより仕事と言えばデリバリーサービスだからなぁ。しんどくなったよなぁ。』

『本当よねぇ?でも、自宅お届けが一切、禁止になったからたくさんの荷物を1箇所に届けるだけでよくなったけど…顔が見えないのは辛いねぇ?』

『本当よねぇ?それにしても、こんなに仮設住宅に人が住んでいたんですねぇ?』

『ですねぇ?リモート会議が最近では多いから、不思議な感覚ですよぉ。それに、家の入口から外への外出はこのパイプを通り、ソーシャルディスタンスで仕事をするから、人に会わないからなぁ。』

『えぇ?そう何ですか?』

『もしかして、知らなかったんですか?ほとんどの人がそんな生活ですよぉ。』

『バキューン。バキューン。バキューン。ダァ、ダァ…うぅ、米さん…』

『おまえ達は、しゃべりすぎたなぁ?』

『先輩!何をしているんですか?人殺しじゃないですか?ちょっと、ちょっと、死んでますよぉ!』

『ちょっと、三村さんこれをみて?』

『パシュン。』

『あれぇ、ここは?』

『さぁ、帰ろう。』



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