ぜあ あいんと なっしんぐ
小岩井茂
エピローグ
心地よい陽が射す冬の日だった。
例のごとく、他の人のin率が悪くなる午前2時から6時間寝て、近所の小学校の予鈴で起きる。
そういったニートには珍しい午前中に起きるルーチンを獲得している俺だが、その日は一味違った。
近所の西友で購入した皆様のお墨付き醤油ラーメン、そして、メンマ、刻みネギ、チャーシューが冷蔵庫に揃っているのだ。
朝ごはんにラーメン2食分、醤油スープがよく浸されたゆで卵、メンマ、チャーシューをゆっくりと食べる。
「朝ごはんはそんなに食べれないよ派」の人達が見れば卒倒必至の油まみれブレックファスト。
そして、茶碗に入れたご飯を投入。
ラーメン汁で猫まんまを作り、チャーシュー出汁のきいた汁と共にかきこむ。
うまい。うますぎる。
そうして腹がいっぱいになったら、自室に戻り、PCを起動。
Mechavvとラベルの着いたソフトにカーソルを合わせクリック。
GPUを冷やすファンが唸りを立てて回り始める。
肩を回して首を左右に傾げ、肩こり解消をする。
気持ち効く気がする。
"MECHANICAL VICTORY VOLTAGE"のタイトルがブラックの背景に浮かび上がる。
略してメタゲ。直訳すると機械的な勝利の電圧。
格好がつかないだろうこれは。と起動する毎に思う。
そうしてタイトル画面が始まる。
このゲームは人型ロボットを操作して戦うFPSゲームだ。
実況者やらが取り上げて、一躍有名になったゲーム。
スマホバージョンも展開しているらしいが、pc版とモバイル版はサーバーが別のようだ。
右端に赤い!マークが表示される。
フレンドからチャットでも来たのか。
カーソルを合わせてクリック。
フレンドのPomoからチャットが来ていたようだ。
「メタゲを卒業する」の文字が目に飛び込む。
そんなばかな。
アイツは大学の単位を落としても、直下型地震が起こっても辞めなかった男だぞ。
「何があったんだよ」と打ち込む。
『お』との返信。なんの『お』だよ。どう言う意図があるんだ。
『大学を中退を機に勧誘されてた自衛隊的なやつに入るわ』との事。
「中退は考え直せよ
俺たちみたいなやつは自衛隊とか向かねえよ」と打つ。
『いやそれが違うんだよなー』
「何がだよ」
『あっ』
「何が言いたんだよ」
『あれだ朝比奈みくる的なやつだわ「禁則事項ですっ☆⌒(ゝ。∂)」』
「歳考えろよきっっしょ」
『それはごめん』
「そうかやめるのか」
『おう』
「達者で頑張れよ」
『まああと1週間あるんですけどね』
「何この今生の別れみたいなことしといてあと一週間あるとか舐めてるのか?」
『ちょっと!逆ギレはやめてくださいよぉ!』
「誰のせいだよ!」
『ダイソーで鉄分サプリ買ってきた方がいいんじゃないすかぁ!?』
「うるさい」
『まあなんだ、お別れ前にduoしようぜ』
「おk お別れ前の花束だな」
そうして右下にカットインする招待の文字。
クリックして承諾を押す。
対戦待機中の文字と、それを囲む回転する丸。
「あーあー」
マイクチェックをする。
『うぃーっす』とヘッドホンから声が聞こえる。
「フラッグ?」
『そう』
フラッグは陣取りゲームのようなゲームモードで、マップに9つあるフラッグを制圧(一定時間フラッグのそばにいる)するモード。2人4チームで争う。
最後に生き残った人数×10ポイント + 死亡時に持っていたフラッグ数×5ポイントが最終的なスコアになる。
対戦開始の文字が炎のエフェクトで燃える。
3 2 1 Gooo!!という文字が画面に浮かび、ゲームが始まる。
ランダムで決められたステージは砂漠。
見通しがいいが発見されやすいステージ。
オアシスや砂丘、ランダムで発生する砂埃を利用して戦う。
俺は近くの砂丘の上でうつ伏せになり、5秒数える。
するとステルスが起動し、見つかりにくくなる。
Pomoは開始と同時に走り出し、一番近くにあるフラッグを取りにかかる。しばらくしてフラッグが青になる。スピードタイプゆえに他のフラッグの占有状況を見ると、一番早くフラッグを取ったようだ。
スナイパーライフルのスコープを覗き込んで相手の居そうなところを注視する。
まだ相手の姿は見えない。
Pomoは二個目のフラッグも取ったようだ。
するとPomoがアサルトライフルを撃ち始める。
『砂丘の裏!硬いぞ!』
「了解」
スコープを覗き込むと、敵の機体の白い頭部が見えた。
照準を合わせてクリック。
すぐにリロードが始まる。
そして画面下に1killの文字。
『ナイスヘッショ!もう一匹いた!』
頭部への命中をヘッショ。そう言うらしい。
「どこ?」
『あれだ、黒い岩の裏!』
スコープを覗き込んでも見えない。
『次のフラッグ行くわ』
「おっけー行ってくれ俺は見とくわ」
『サンキュー』
敵機体が砂丘の裏から突然飛び出しPomoを撃ち始める。
幸いにもPomoへの被弾は軽かったようだ。
その隙を突いてヘッドショットを打ち込む。
『さすが神エイム』
「まあそれほどでもねえよ」
ブザー音とTEAM GREEN SCRAPPEDの文字が画面に映る。
2つあった緑色のフラッグが白色に戻る。
そして離脱していたPomoが別のフラッグを制圧し、今現在我々のチームのフラッグは計3つあることになる。
「Pomo今中央のフラッグ行ける?」
『いや無理じゃねー?』
「緑側もキツいか?」
『向こうの赤チームが来そうなんだよなぁ』
「援護するからさっさと取りに行こうぜ」
『まあそう言うなら』
うつ伏せ姿勢を解き、緑チームがいた砂丘の方へ向かう。
後ろからPomoが来て追い抜かしていく。
『お先に〜』
「早すぎだろ。横顔新幹線やん!」
『ん?』
「関西人しか分からないと思うわ。ごめん」
「許した」
亡き緑チームのフラッグが二つとも一望できる高所に陣取ってうつ伏せになる。
奥からPomoは占領するようだ。
ブザー音とTEAM RED SCRAPPEDが見える。
「マジで?」
『黄色と一騎討ちっぽいぞ』
「そのまま赤側に行くか?」
『後ろから来られて俺らのフラッグ取られるのは嫌だぜ』
「じゃあ黄色叩きに行くか?」
『いいね』
Pomoがステージ中央に向かって進む。
おそらく赤と黄色がぶつかったのは対角線側。
ステージ中央を通るのが最短コース。
回り道しながら俺も追従する。
俺の機体はスピードは遅いため、どうしても遅れる。
索敵しつつ、物陰を経由しながら進んでいくPomoが立ち止まった。
『あ、いたいた。俺の見てる方向。』
「ん?あぁ...あれか」
『もう片方は多分ステルス使ってるな』
うつ伏せになってすぐにスコープを覗き込み、Pomoのいう方向を見る。
ステルスがしばらくしてアクティブになる。
Pomoがアサルトライフルの弾を撒き散らして狙撃する。
そうして岩陰に隠れこんだ所は俺からは丸見えだった。
頭に一発打ち込むとそのままリザルト画面に切り替わる。
「終わりかよ」
『もう一体は赤に削られてたんだろうな』
Point順にチームが並べられ、我らが青チームが10×2+5×3で35ポイント。一位だった。
「まあ順当だな」
『まあそうだよなぁ
俺たち二人ともワールドランキングTop3に入るしな。』
ぜあ あいんと なっしんぐ 小岩井茂 @kubikashige
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