葬儀屋の吸血鬼

先天的なおには存在しない。


全ての鬼は後天的に成る。


それは現代社会の常識。


だから、葬儀屋そうぎやが死後を管理する。蘇り


……。


葬儀そうぎ、それは、蘇りを防ぐ儀式。


燃やし、砕き、納める事で死者を弔う儀式。


それは、葬儀屋の仕事。


……。


友達の可鈴かりん清水きよみず家に嫁いだ。


清水の本家は葬儀屋を営んでいる。


可鈴の夫、恭介きょうすけさんは清水家の十五代目だ。


可鈴は吸血鬼の私を自宅に招くほど、自由だ。


人に飼われた吸血鬼と言っても、鬼に変わりはない。


他所の吸血鬼を自宅に招く事に抵抗感を持っている人は多い。


私が友達だから、なのか、吸血鬼なんて関係ないのか。


私は何度も可鈴から招待を受けた。


可鈴から、恭介さんの両親から止められた事を愚痴られた時は『そんなこと言って、良いのかな』なんて思ったけど。


何だかんだ、上手くやっているらしい。


自由な子だから、非常識な言動をする事はあるけど、常識を知った上で行っている事が殆どだから、手に負えない。


自由を知り、責任を重く見る、そんな可鈴は、心強い。


だからこそ、恭介さんは、可鈴を選んだんだと思う。


……。


長い間、清水家に仕える吸血鬼、晴輝はるきさんは私より百歳は年上だ。


清水家にお邪魔した時、晴輝さんの都合が合えば、稽古をつけてもらっている。


晴輝さんは清水家を守るために清水家の当主と血契約ちのけいやくを結んでいる吸血鬼だから、鬼を狩る〝鬼狩おにがり〟じゃない。


その影響か、晴輝さんが殺した鬼は、十数体らしい。


晴輝さんは『大した事は無い』って謙遜して居るけど、それは守護を目的としているからで、十分、自慢できる数だと思う。


軍の鬼駆除班おにくじょはんに属する吸血鬼の中には、百を超える鬼を殺したって人が居るらしいけど、それは鬼を駆除する為に彼方此方へ遠征しているからで。


比較する対象が間違っていると思うんだけど。


晴輝さんは『彼と比べたら、大した事は無い』って言う。


晴輝さんはその人の事を、尊敬しているのかな。


何時か、私も会ってみたい、そう思っているけど。


私が活動している範囲は、在住している町の鬼駆除班で間に合っているから、その人と会った事が無い。


会ってみたいけど、会うって事は町が大変な事になっている訳で。


それは嫌だなって思うから、会わない事が幸せなのかなって思う。


【終わり?】


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