餓鬼の影響

不死者ふししゃ、それは蘇った者。


餓鬼がき、それは飢えた不死者。


飢えて死した者は餓鬼になり得る。


それは常識。


……。


餓鬼の歴史は古く、十世紀前の文献にも記されている。


その餓鬼は不作が続き、多く農民が餓死した村で発生し、退治されるまで、複数の村を回り、村民を喰らったらしい。


過去に100体以上の餓鬼が確認されている。


度重なる餓鬼の出現を経験し、人々は餓鬼を生み出さない方法を見つけた。


それは『遺体を燃やし、骨壺に収め、蘇生せぬ様、墓を管理する』事だ。


それを怠れば、餓鬼は生まれ得る。


人々は餓鬼を生まない為に葬儀は欠かさず行おうと心がけている。


それでも、行方不明者は埋葬できない。


だから現代でも餓鬼は生まれ得る。


……。


餓鬼は裕福な人々を狙う傾向がある。


余程、飢えていない限り、選り好みするらしい。


脂肪を蓄えた人や健康体の人などだ。


庶民は好まれないけど、標的になり得ることは注意するべき。


餓鬼は食べない鬼を食べないと考えられている。


鬼を食べている姿を目撃した人が居ないからなんだけど。


同類だから? 美味しくないから? それ以外の理由?


どの様な理由なのかは未だに分かっていない。


肥えた人、主に富裕層は餓鬼に怯えている。


だから、富裕層は強い吸血鬼きゅうけつきを欲する。


自分の血を吸わせてでも、身を守らせる為に。


……。


餓鬼を見分ける方法は『生者を食べたか』『常にお腹を空かせているか如何か』だ。


近代までは軍の餓鬼駆除班がきくじょはんが常人を餓鬼と勘違いし、謝って殺処分した事も多かったけど。


現代は少なくなっている。


それは餓鬼と疑われた人を『一か月、監禁し、食べ物を与え、空腹が満たされるか』で判断するようになったからなんだけど。


生者を食べたい欲求を我慢する餓鬼も居るが、一か月も我慢できる餓鬼は居ないと学者たちは考えている。


軍や警察による誤認は減ったけど、一般人の疑心暗鬼や私刑は過激になっているのかもしれない。


『あいつは餓鬼なんじゃないか?』そう噂された人は迫害されてしまう。


最悪、権限を持たない一般人から殺される場合がある。


私刑は犯罪だ。


殺された者が餓鬼でも犯罪に変わりはない。


だけど、私刑で餓鬼を殺した人は一般人から賞賛され、英雄視されている。


『役立たずな国に代わって餓鬼を殺した』って。


それは疑心暗鬼になった人々が軍や警察、政府を信用できなくなっているから、だと思う。


今、過激な思想が人々に伝染している。


『疑わしきは罰せず』と考える行政に対し『疑わしきは罰せよ』という思想が。


今は餓鬼に用いられている思想だけど、その用途が広がらないとは限らない。


だから、今の社会は不安定だ。


それ原因は、餓鬼を真似た犯罪者が人々を殺しているからだ。


国に恨みでもあるのかな?


それとも、悪鬼あっきの仕業だろうか。


その正体が何であれ、それを止められなければ、社会の秩序は崩壊してしまう。


【終わり?】

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