第45話 分岐
眞白さんが学校を休むようになって、一週間が経った。
彼女はまだ学校に来ていない。僕はさすがに心配になってきた。
「先生。眞白さんはまだ体調不良なんですか」
帰り道、僕は車の中で由加里先生に訊ねる。
九月に入ったとは言え、まだ残暑がきびしい日々。半袖のシャツから伸びた先生の綺麗な白い柔肌の腕がハンドルを握っている。
「本人からの連絡ではそう言っている。だが、もう一週間だ」
声色から、由加里先生も別の理由があると考えていることが伝わってきた。
「彼女への連絡は」
「してみました。けど、今はもう返事もなくて……」
あの既読スルー(事件?)から一週間、僕は眞白さんのことが心配で、めげずにLINEを送り続けていた。
その中で、一度だけ『心配してくれてありがとう。私は大丈夫です』というメッセージが送られてきた。なぜか『ゴメンね』というメッセージが末尾に添えられて。
しかし、彼女からの返信はそれっきりで、以降、既読スルーどころか、未読スルー状態に進化した。泣きたい。
それはそれとして、気になることといえば、もう一つ。
眞白さんへのメッセージは彼女個人ではなく、安原さんも含めた三人のグループ部屋に送っていた。それは、安原さんからの呼び掛けも望めると思ったからだ。
しかし、安原さんははじめの方こそ僕と一緒に呼びかけのメッセージを送っていたが、それが徐々に減っていき、今はもう途絶えてしまっていた。
僕の件で協力してくれたという話を聞く限り、彼女が友人を放っておくようなことをするとは思えない。
そこで僕は、ここ最近部活動に集中できていないと言っていた由加里先生の話を思い出した。もしかしたら、安原さんにも何かあったのかもしれない。
「先生。安原さんの調子はどうですか」
先生は前の車を見つめながら、小さく溜め息を吐いた。
「相変わらずだ。顔を出してはいるが、まるで身が入っていない」
「そう、ですか……」
「その影響なのか、チームもどこかまとまりが欠けてしまっていてな。もうすぐ大会もあるというのに」
これは眞白さんだけでなく、安原さんの方も心配だ。
それに、来月には中間試験もある。まだ一ヶ月弱あるとはいえ、二学期の中間試験は範囲が広い。だから僕は今回早めに勉強会を提案しようと思って、ワクワクしていたのだ。
しかし、今の二人には、それどころではない何か問題が起こっているようだった。
ならば、先にそちらを解決することが優先だ。
そのためにはまず、二人に何があったのか。状況把握をする必要があるだろう。
安原さんと眞白さん。
さて――
僕は二人のどちらから、声を掛けようか。
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