幕間 いとなみと宝物 ※
「なあ、覚えてるか? 優徒」
明かりの消えた部屋の中。
ベッドの中で僕を胸の中に抱きしめながら、由加里先生が呟いた。
ついさっきまで激しく愛し合っていたから、お互いまだ躰が火照っている。行為が終わった後、先生はいつも僕を胸の中に抱きしめて、息が整うまで僕の頭を優しく撫でてくれる。そうするの、好きなのかな。
「なにがです?」
余韻に浸るように肌と肌を密着させて抱きしめ合う。先生のふくよかな谷間はまだ微かに汗ばんでいて、熱が籠っていた。とても柔らかい。
先生の胸に顔を埋めて抱きしめられると、どうしてこんなにも安心するのだろう。
「君が一年のときの夏、私に髪飾りをくれただろう」
「ええ。もちろん覚えてますよ」
「思えば、私にとってあれは、人生で初めての異性からの贈り物だった」
「そうなんですか」
「ああ。だからもらったときはとても驚いて、情けなくも動揺してしまったんだよ」
「そうですか? そうは見えませんでしたけど」
布団の中で脚を絡める。
僕が先生の脚の間に自分の片脚を入れようとすると、身体が憶えているかのように、抵抗なく受け容れてくれた。
「そう見えないように気張っていたんだ。あのときはまだ、生徒に情けない姿を見せないようにと思っていたからな」
「いまじゃあ、先生の躰の隅々まで知り尽くしていますからね」
「ばっ、バカッ! そういう恥ずかしいことをはっきりと言うんじゃないッ」
僕の頭を乱暴になで上げながら言う先生。どうやら、まだこの手の話には恥ずかしさが残っているようだ。
「嬉しかったなぁ。優徒、今年もあれを付けて花火大会に行くか」
「ぜひ。僕も行きたいです。ところで、由加里先生。さっきの話ですけど」
「ん」
「贈り物をもらったの、僕が初めてだったんですよね」
「ああ」
「それじゃあ、この先、贈る物は変わるかもしれないけど、贈る相手はもう変わることはありませんが、それでもいいですか」
僕を抱きしめる由加里先生の手が強くなる。ついでに、心臓の鼓動も早くなる。相変わらず分かりやすい。
僕は顔を上げ、先生と見つめ合う。
暗くてはっきり見えなくても、先生の頬が赤くなっていることは分かった。
「それは楽しみだな」
そう言ってから、先生の手が僕の頬に伸びてきて、触れる。
「優徒」
どこか、切なげな声。
「信じて、いいんだよな」
表情も、声に合わせて切なげになる。由加里先生にそんな顔をされて、我慢できる男などいるはずがない。
僕は先生の不安に、唇を重ねて応えた。
ついさっき2度も達した後の火照りが冷め止まぬ中、もう僕のそれに復活の兆しを感じていた。
由加里先生が、挟み込んだ僕の脚に、もどかしそうに自分の秘部を擦り合わせてくる。
それに煽られ、深くなるキス。
息が苦しくなったところで、一度互いの唇が糸を引いて離される。
荒くなるお互いの吐息だけが、明かりの消えた寝室に漏れる。
僕はもう、我慢できない。けど先生、明日も仕事だけど大丈夫かな。
そう思って見つめると、甘く蕩けきった由加里先生の顔が、僕を求めていた。
……もう、構うもんか!
僕は躰を起こし、先生の躰に上乗りになる。
舌と唇を由加里先生の滑らかな肌にそっと這わせ、漏れる切なげな声を十分に堪能してから、僕は新しいゴムと付け替えた。
もう一度互いに見つめ合い、僕達は意識が幸福の中に溶けていくまで、たっぷり重なり合った。
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