第25話 支え
「あっちゃー。なんで教室に教科書忘れるかなー、僕は」
放課後。
図書室で勉強会の途中、数学の教科書を忘れたことに気がつき、僕は教室へと向かっていた。ちょうど、数学の解説をしようとしたところで、鞄の中にないことに気がついた。
数学の教科書には、沢山メモ書きがされている。
由加里先生との合宿で、特に気合いを入れて取り組んでいたからだ。
クラスの教室には、珍しく誰もいなかった。
試験勉強のためだろうけど、他のクラスの生徒はまだちらほらと残っている生徒もいた。きっと、うちのクラスの人達は、赤点採って由加里先生に雷落とされるのが恐ろしいんだろうな。僕もそうだったし。
机の中に手を入れる。
「お! あったあった……ん?」
取り出したのは、間違いなく僕の教科書だ。だが……
教科書の表紙には、真新しい大きな折り目と、上履きで踏まれた跡が刻まれていた。
僕は嫌な予感を覚えながら、中を開く。
数ページ分が、黒のマジックでグチャグチャに書き殴られていた。
「・・・・」
まるで、僕のメモ書きを嘲笑うかのような悪意を感じた。
けど、なによりもショックだったのが、由加里先生が書いてくれた「ガンバレ!」の文字まで黒く塗りつぶされてしまっていたことだった。
教科書を強く握り締める。
大丈夫。まだ、大丈夫だ……
今度の期末試験をがんばって、由加里先生に褒めてもらうんだ。
そうすればきっと、辛いことも全部、笑って流すことができる。
そう自分に言い聞かせて、折れかけた心をなんとか支える。
結果を残すという目標だけが、今の僕を支える全てだった。
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