第21話 追い込み
六月ももう三分の二が過ぎた、夜。
「一週間後はいよいよ期末試験だな」
「はい!」
試験期間中は部活動が禁止ということもあり、最近は先生との勉強が特に熱を増していた。
数学に関しては、元々学校での由加里先生の授業だけでも十分に身についていたが、この合宿でさらに理解が深まっている。怖いものなんて、もうない。
今更ながら、先生と
「本来、掘り返すことではないだろうが、あえて君に訊ねる。中間試験での君の順位はどうだった」
苦い思いが蘇ってくる。
忘れもしない、赤だらけの結果用紙。あんなに酷かったのは、僕だけだろう。
「最下位、です」
「そうだな」
当然知っていたであろう結果に、先生は目を伏せて頷く。
もちろん、先生はただ傷を抉ることが目的で問い掛けたわけではない。
真っ直ぐに僕を見つめてくる。
「では、また同じような結果になると思うか? いまから、試験が怖いか?」
その問いに、僕は一拍置いてから、
「いいえ」
そう口にして、口角をつり上げた。
「少し前にはあんな酷い結果だったはずなんですけど、もう同じ結果になることはないって、不思議と今はそう口にできるんです」
僕を見て、先生もまた笑った。
堂々とした不敵な笑み。もしかしたら、僕も今、同じような顔をしていたのかもしれない。
「よく言った。いいか、友瀬。それが、自信だ」
「自信」
「努力なくして自信は得られない。友瀬、お前が今、恐れるものはないと言うなら、それはお前の努力の賜物だ」
「先生の、おかげですよ」
「それは違うさ」
先生はかぶりを振る。
「私はただ、提案しただけだ。決断し、努力したのはお前だ、友瀬」
それは謙遜が過ぎます。その提案がなければ、きっと僕は今よりもっと落ちぶれていた。
けど、そうは口にしなかった。その理由は、続く先生の言葉に込められていたからだ。
「あとは、結果だけだな」
「はい!」
がんばってきたという実感はあるが、現段階ではあくまで努力は努力。
結果を出さなければ、先生とのこの合宿は無駄とまでは言わないけど、真に感謝を伝えることはできない。
「さあ! あと一週間。詰めてくぞ!」
気合いの入った先生の声。きっと、部活のときもこんな感じなんだろうな。
「しばらくバスケ部の指導も無いからな。みっちりシゴいてやるから覚悟しておけよ!」
「オッス!」
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