第11話 悪魔

 悪魔となった深海理人の朝は早い。布団から抜き出て、歯磨き、着替えを済ませジャージに着替える。お気に入りのシューズを履き、日課のジョギングをする。前の引きこもり生活では考えられないような日課。悪魔と取引したために訪れた日課であり、健康のためのロードワークだ。15分のジョグを終え、シャワーを浴び、朝食をとる。納豆、バナナ、鶏肉。比較的健康に良いものを食し、口に放り込み、咀嚼していく。健康は素晴らしい。最近、お気に入りの服装に着替え、町に繰り出す。


 海山市に1000人規模の超能力者が集まり、軍団が出来上がった。その名も『善の会チャネラー軍団』。理人は別人のように女子に話しかけ、遊びにいく約束をする。お相手はオフ会で面識のあるいじめられっ子の中学生と売れない地下アイドル。仮に、いじめられっ子を中学生と呼び、売れない地下アイドルをアイドルと呼ぼう。


 理人は人が変わったようにナンパした。


「やあ、中学生にアイドル。今から遊びに行かないか?」


 1000人規模の超能力者たちは学校や仕事を辞めて海山市に集まった。なので中学生やアイドルは不登校扱いとなる。


 理人のナンパは結果は、NG。失敗に終わる。しかし、理人は気にしない。恋愛とは打席に立ってバットを振った数に比例する。今、二人がダメでも、残り九十八回をナンパすれば必ず成功すると信じている。


 と、次にナンパに行こうとする理人の後ろから助け船が。教祖の日葵さんだ。


「私が一緒なら大丈夫でしょう。男一対女三で遊びましょう」


 それなら、と中学生とアイドルが納得する。日葵は悪魔として絶対なる権力を有していた。


 中学生が問う。


「深海さん雰囲気変わりましたね。日葵さまにどんなお願いをしたんですか?」


「ああ、とりあえず彼女が欲しいと願った。すると不思議なことに100回のナンパに挑戦しようとやる気が噴き出たんだ」


 女性陣は引くかもしれないが、男はやれれば誰でもいい。10代、20代の、比較的若い女性を彼女にして童貞を卒業しようと考えた。すると、理人の頭の中で彼女を作る方法が思い浮かび、即実行に移すことに決めた。ポイントは女性のいるグループに所属すること。話しかけること。まずは友達からと連絡先を交換し、距離を詰めること。理人の場合、『善の会チャネラー軍団』がグループとなり、すいすいと事が進んだ。日葵のおかげもあり、中学生とアイドルの連絡先を交換する。


 実際、恋愛は女性とお喋りできれば、すぐ、なのだ。後は相手から好きという言葉を引き出すだけ。理人はなぜやる気に満ち溢れ、いつでも彼女ができる思いに達していた。元引きこもりなのに。これはすごいことだ。


 日葵、中学生、アイドルの女子三人と遊びに行く。悪魔的所業。

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