第4話 脱出
引きこもりが外に出るのは勇気がいる。ふだん出ないせいで、いったん外に出ると遠近の関係で視界がぼやける。遠くを見ると、久しぶりに見た遠くの景色に視界をやられる。
日葵の話がやけに真剣みを帯びていたので彼女に連れ立つことにした。
日葵は理人を歓迎してくれたが、外は彼を歓迎しなかった。明るい天気がさんさんと照り付け、肌を刺す痛みを感じる。日光が痛い。心が痛い。外に出るということは命がけだ。
「もっとも日葵の話があまりにも奇想天外だったから出たんだけど」
小言を呟く理人。世界の危機に外に出ない訳にはいかない。
日葵と名前呼びするのは、彼女に不思議な魅力を感じたからだ。まるで魔法。電波系のくせにコミュ力が抜群。
外の何の悩みもない天気とあいまって、ひどく嫌になる。
「理人様には実際に見てもらったほうがいいかもしれない。“悪”になってしまった私に引かれ、たくさんの善が目覚める。善を探しに行きましょう」
デートというにはあまりに場違い。電波中二病の探検に巻き添えをくらった奴隷という表現が正しいか。理人はRPGの勇者の後をついていく仲間Aと同じ。ぐんぐん進む日葵の後を追った。意外に早い。彼女の進む速度は目的地を知っているようで、難なく尋ね人にたどり着いた。尋ね人というか、尋ね猫に。
「ニャー」
話しかける日葵。
「リココ星雲から降臨した“悪”です」
「ニャー」
白い猫。どこにでもいる愛らしい顔をしている。男なのか女なのか性別は不明。
「隠しても無駄ですよ。『喋る』を獲得した猫さん」
「チッ、さっそく見つかったかい」
「え!?」
おっさんの声がした。猫から。この、愛らしい白い猫は男性のようだ。
善『喋る』を獲得した猫さん。彼は、ありとあらゆる言語を介する。人と猫の通訳にもなるし、ほかの動物、虫、植物と意思疎通ができる。
「猫が喋った!?」
「ふんっ、これでやっと信じてくれたみたいですね。私“悪”を倒すために地球の生物たくさんに超能力を与えられたのです」
猫が喋る現場を目撃したのだ。日葵のファンタジー話を本当だと信じるしかない。ということは、理人にも善が目覚めたということになる。いわく性行をすれば“悪”を封印するという善を。
「ほほう、兄ちゃん。激レアな善をもらったようだな。チートだぜ」
おっさん、の白猫が話しかける。彼は心の中が読めるらしい。超絶凄い。
「勘違いすんなよ。テレパスによる会話は“悪”に何の関与もできない。クソ雑魚の中だ。上中下の真ん中な。ええ、兄ちゃん。“悪”に直接関与できる能力は上だぜ」
「猫さん、なんでそんなに詳しいんですか?」
「そりゃ、おめえさん。リココ星雲と敵対する地球に聞いたからさ」
そういえばそうだった。彼、白猫さんは地球と会話することも可能なのだ。
リココ星雲からきた“悪”海上日葵。VS地球で目覚めた能力者たち善。
立場や関係が見えてきた。
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