第2話 神の啓示

「私はとある理由から深海様にお仕えすることになった天使です。以後、一切の抵抗を禁じます。今すぐ、あなたの部屋に入り、ファック(セ○クス)してください」


 おお、ファック(死ね)。


 彼女の名前。海上日葵(かいじょう・ひまり)というのは後から聞いた。


「何なんですかいったい、警察を呼びますよ」


「問答無用」


 日葵はドアをこじ開けて、それは強い力で抵抗むなしく家宅侵入を許してしまう。理人を押し倒し、踏みつけて、そのまま彼のルームに移動してしまう。


「すんすん、これが深海様のお部屋ですか、なるほど、イカ臭いですね」


「死ね」


 女子高生一人の侵入におびえる理人ではない。正気を若干失いつつも客人として女を扱うことにする。立ち上がり、台所に行き、お湯を沸かす。


「くんくん、深海様。エロいです」


 オール無視。とりあえず飲み物はどちらがいいかを聞く


「君、紅茶とコーヒーどっちを飲む?」


「激甘の砂糖入りコーヒーでお願います」


 元気よく手を挙げる日葵。


 このとき、理人の脳内で完全なる不審者日葵の存在を議論させていた。一、親族の関係者。普通、他人の家に土足で上がるのは近しい関係が強い。姉か妹か、従妹か。しかし、理人にこんな型破りの親戚はいない。二、頭のおかしくなった障害者。世の中、ときおり、電波系と呼ばれ、意味不明な発信、言動をする思春期特有の病気がある。中二病、とも呼ばれるそやつは、無害な一般市民を苦しめる。


 チンチンポーン。


 およそ10秒ほどの脳内会話の結果、海上日葵を中二病の妄想野郎と決定づけた。


 理人はコーヒーに砂糖を入れ、自分はブラックで二つのコップを部屋の中央に置く。とりあえず中二病野郎の話を聞く。


「天使様だっけ? なぜ君は僕とファックする羽目になったの?」


「よくぞ聞いてくれました深海様」


 日葵はおさげの女の子で可愛らしいバンダナを巻いている。利己的な顔立ちのせいで余計に言動が危うい。


「私はリココ星雲から発せられた電波により、深海様の童貞を取るべく天使となったのです」


「ど、ど、ど、童貞ちゃうし!?」


 真っ赤になる理人。図星を当てられて動揺する。


「リココ星雲の超能力者は、私に天上の能力を授けました。しかし、反動として私の中に“悪”という二重人格を作り上げたのです。私は、堕天した半分が善で、半分が悪の存在。そんな私の中にある“悪”を取り除くには、深海様のお力が必要なのです」


 んんん、と苦しむ理人。日葵は顔を使づける。


「理人さまのお力が! おもにあなたの童貞チ○チンが欲しいのです!」


「チ○チン言うな!」


 恥ずかしいので、日葵の額に軽くチョップした。


 突然やってきた海上日葵。彼女は電波系とも中二病とも言う。しかし、高次元存在の知的生命体から信託をもらう存在を、天使、またの名を――チャネラー、と言う。

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