BRAKES~滅び止める者達~ 

低迷アクション

第1話

 空を“終わり”が覆っていた。血緑色の空から、降り注ぐ異形の群れは、世界規模のカタストロフ(災厄)の原因…だが!人々は信じている。きっと、この魑魅魍魎共跋扈乱舞の世界を救う者…そう!


「我々、兵隊の出番だ!行くぞ!国連第59特別空挺団、降下!降下!!」


空挺記章を縫い付けたベレー帽を被る隊長の“ボストン”の掛け声に、部下達は何処か

やる気無さげに降りていく。ボストンの前に、輸送機から降りる東洋人っぽい兵士が(本当に不明だから、仕方ない)遠慮がちに振り向く。


「なぁっ、大将、こーゆうのも何だが、俺等じゃなくても、もう良くね?」


「どう言う事だ!?ソージ?」


片目の下に2本の切り傷が特徴的な部下の“犠隻 争侍(ぎせき そうじ)”は頬を歪ませる。


「だって、俺達、どーみても映画とか、アニメのやられポジの兵隊だぜ?あの、怪獣共に

銃弾効かねぇよ。多分、それに…」


「そこまでだ。ソージ、降下!」


確信的台詞、と言うより、自己にかなり覚えのある言葉を言わせず、争侍のケツを押し出し、

混濁した空に舞う。飛び交う怪物達に、銃身を切り詰めた突撃銃を乱射しながら、紅蓮の舞う住宅地に降り立つ。各所では部下達が敵と交戦している。しかし、その攻撃は何処かおざなりだ。


まるで、自分達ではない、誰かが来るまでの時間稼ぎ…下手に気張って死ぬことはないと体現している様子…


(情けない!…自身の仕事に誇りはないのか?しかし、無理もないか…)


一瞬感じた迷いは、目線先の二階建て窓の小さな人影を捉えた。


「正面、要救出少女!」


争侍が吠える前にボストンは駆けだしていた。こちらを塞ぐように、自身の前へ飛び降りた異形の敵に、突撃銃の銃剣を深々と突き刺す。


「この距離で倒せぬ敵などいない!」


“見た事ない!”と言いたかったが、目の前のゼリーみたいにプルプルした人間大の翼付き

海鼠は正直見た事ないし、夢に出てきそうだ。しかし、臆する訳には…助けを待っている人がいるのだ!弾倉に詰まった30発を全て不気味に蠢動する肉塊に叩き込む!


…弾切れ音が響くのに、敵が倒れないっ!?相手の触手が肩にそっと(かなり殺意があったようだが、ボストンにはそう感じられた)載せられる。まるで“お疲れ”と言っているように…


「舐めるなぁあっ!」


怒声を上げ、肩から抜いたコンバットナイフで一気に切り開いて、押しのけた。

後ろで争侍が


“ハハッ、スッッゲェ!”


と笑うが、無視してドアを突き破る。両親の姿は見えない。そのまま二階に駆けあがる。

一目で子供部屋とわかる模様のドアを開け、ベットの上で震える東洋人の少女を抱き上げた。


「もう、大丈夫!兵隊さんが来たからね!」


首元で少女が安心したように笑うが、少し浮かない感じだ。何だ?何処か怪我を、いや、これは、まさか…!?


「ありがとう、兵隊さん、でもね(“止せ”とボストンは心の中で叫ぶ)あのね、ミクね?変身ヒーローとか魔法少女さん(ボストンの頭が絶叫で包まれる)とかに助けてもらいたかったなぁ~?」


彼女の言葉が終わるか、終わらない内に、空にいくつもの光が差し、閃光を纏った何かが

次々と黒い怪物達を蹴散らしていく。


「来たよっ!」


ミクと名乗った少女の歓声に答えるように、窓の近くで光が制止する。その発光元である、華麗なコスチュームを身に纏う少女“魔法少女”が、ゆっくり笑い、こちらに頷く。


幼い手を力一杯振り返す少女を下ろし、ボストンは静かに力なく呟いた。


「失業だな…」…



 「本当に行くのか?」


上司である指揮官に声はあまり耳に届かない。ボストンは静かに一例し、部屋を出た。あの降下作戦の後、世界は平定された。以前から姿を現し、SNSや軍関係者達の間で噂されていた魔法少女に変身ヒーロー達の活躍によって…


異能の怪物達は彼女、彼等にお任せ!最早、兵隊達は用なし、職無しの時代が訪れた。テロが起きても、数秒で駆け付け、銃弾を跳ね返し、制圧する。最近では予知能力を持つ者もいて、事前に防がれる始末…その他、色々、様々な非現実的要素が現実化する、まるで漫画みたいな世界が訪れたのだ。


基地の外に向かう彼に敬礼をする者はいない。誰もが、この新世界の到来に、本気で歓喜していた。連中の存在は国家間で保有する兵器ではないから(いずれはそうなるかもしれないが)軍隊の常設は平時通り、死ぬ危険性が無くなった、この職種の求人倍率は一気に跳ね上がるだろう。


平和を守る仕事の軍人が、ただのお飾りになる。そんなは耐えられない。だから、辞めるのだ。


「ご苦労さんだな。隊長!で、これからどうすんだい?」


ゲート前に立っていた争侍が片手を上げる。


「ソージか?見送りはお前だけだよ。この事態を喜ばない私は、周りによく思われてないからな。まぁ、故郷に帰って、畑でも耕すさ。土壌の肥えた良い土地でな。お前も来るか?」


「生憎、戦いが仕事でね…新しい場所を見つけるさ」


「まさか…お前、テロリストにっ!?そりゃ、確かに悪人面だが、おま…」


「ちげぇよ、断じてな!何っ?今までずっと、そんな目で見てたの?俺ん事ぉっ!」


「ハハッ、すまんな。それはないか…ソージ、冗談だ。とにかくこれで失礼する。サヨナラだ。」


戦友の横を抜けるボストンの耳に争侍の声が響く。


「隊長、俺達が必要になる時がすぐに来るさ。」…



 電車を降りると、懐かしい風景が広がっていた。キャベツ畑の先に出来た

モールはちと不釣り合いだが、まぁ、許すとしよう。確か、あの角を曲がると、我が家の庭が…独身者である事と任務の都合でほとんど帰っていなかった。掃除と手入れが大変だな。


自身が過ごした子供時代を思い出す。赤レンガと煙突が目印の…

懐かしの我が家の煙突は折れていた。そして、大きな庭には巨大な穴…まるでテロにでも遭ったみたいだ。


崩れた壁を乗り越え、玄関に向かう。何故か、掛かっていない鍵を押し開き、

中に伸ばした手は柔らかいマシュマロみたいなものを掴む。その正体は


“キャッ”


と言う可愛い声を出す耳が常人より眺めの金髪娘…ボストンの頭が急速な勢いで頭痛が

進む。更に追いうちをかけるように


「あっ、すいません、家主の方様ですよね。私、異世界から逆転生してきたエルフ族の

“ミミィ”です。お家を壊してしまったお詫びにここで召使いとして住まわしてもらいたいと思いましてですね。ハイッ、あの、えっと、ご主人様?」


胸を文字通り弾ませ、元気に、かつパーペキ標準話を喋るエルフ娘の前で、ボストンは

現実を疑い、最早、これが当たり前という事に気づき…


「とうとう、居場所までもか…」


と呟き、気絶した(この後、覚醒するが、彼を膝枕していたミミィが喜びのあまり、有り余るバストを頬に押し付けたため、再度気絶した)…



 「通信が混線だと?一体、何が起きてる?あの、崩れたビルに爆発は?」


「一切不明です。平和式典警護中の部隊及び、警察要員からは混乱した通信しか入ってきません。とゆーより、彼等の中にも武装勢力が混じっている模様です。」


「現場に、とゆーより、今回の主賓である魔法少女達はどうした?彼女達なら即解決だろう?」


「こちらのドローンは全てEMP妨害のようなモノにより、偵察不能…最後に入った通信によれば、状況ガス及び、テロリストは民間人を板や防護板に縛り付けた“人間の盾”で前進してきているとの事です。」


「銃弾や爆発は防げても、NBC戦(化学兵器)は未適応か…加えて」


「一般市民を盾にした死に物狂いの敵に、まだ、未成年の彼女達は荷が重いでしょうね。どんなに異形の怪物を倒せても、それは人と異なるモノ、戦いにもフィルターがかかります。

ですが、人対人はそうはいかない。特殊能力者や変身ヒーロー達はどうです?」


「少女達の危機に出動したようだが、同様の攻撃を受けている様子だ。恐らくガスも彼女達の特性と弱点を突いたモノだろう。全く、やってくれる。連中は相当準備しているぞ…

ところで、君は誰だ?」


その言葉に緊急対策室の職員達が一斉に、司令と彼の前に音もなく現れた

黒スーツの男に注目した。


東洋人のようにも見えたが、白人、中東系、黒人と、どの人種にも該当しそうな非常に曖昧な顔をしている。


「これは失礼、私は今回の事態に対してのアドバイザーだと思って下さい。」


「アドバイザー?それは大統領命令か?」


「いいえ、更に最上位の方からです。」


「何だと?それじゃ、神だとでも言うのか?」


「うーん、そこは…今はノーコメントでお願いします。最も、神なら、最近じゃぁ現出化してますけどね。知ってます?ワルキューレさんってすっごい巨乳ですよ?」


「馬鹿を言ってる場合じゃない。新たな時代の幕開けを記念する式典を入念に武装し、準備したテロリスト達が襲撃したんだぞ?しかも、敵どころか、警備に当たった者までもが、敵に内通している始末だ。完全に隙をつかれた。情けない事に敵の正体もわからないと来ている。」


男の本気か?冗談かわからない言葉に、司令は苛立ちを隠せない。だが、相手はあくまでも

おどけた調子を崩さず、言葉を続ける。


「敵の正体は狂信的武装集団“ボゴ・タルタ”半年前にどこぞのスーパーヒーローが指導者達とその家族の暗殺に力を貸し、成功させた。その報復と言う所でしょう。


連中は彼女達の世界平定後に燻っていた各国の反政府組織及び、テロリストをまとめ上げているようです。恐らく政府関係者の中にも、味方がいます。全てがヒーロー達を歓迎している訳ではないでしょうからね。」


彼の説明と指摘に司令は愕然とする。本来なら、自分達が行うべき仕事だ。圧倒的とも言える正義の力に魅了され、怠惰になっていた事を否めない。更に悪い事は連続して起こるものだ。


「司令、新たな報告が…たった今、入った情報によりますと、某国の原子力潜水艦が武装勢力に拿捕されました。連中は動画サイトを通じて、今から3時間以内に搭載されている

全ての核ミサイルを式典会場のある極東の島国に撃ち込むとの事です。」


「予知能力者は一体何をしていた?こんな時のための能力だろうがっ!」


「予知に関して一考察を上げますと、仮に未来が見えたとしても、限界があります。また、

幻視で見た映像に靄が被るようであれば、それは能力者の心身的疲労として、片付けられます。彼等、彼女達は機械じゃありません。


働き方改革の影響下で、労働条件は管理されてますよ。役人ばりにね?本来なら、貴方達がキチンとすべき問題です。なまじっか、楽に頼ろうとした結果ですね。」


「返す言葉もない…」


司令が言える事は、ただそれだけだった。彼の指摘は全て事実が裏付けしている。だが、

どうすれば…?一体だれが、これを止める?まもなく滅びるであろうこの世界の崩壊を

誰が…


「大丈夫!」


自身の気持ちを読んだように男が手を上げる。ニコリと微笑んだ彼は言葉を続ける。


「一つ、提案があります。」…



 “葵 空跳阿(あおい くうとぁ)”は、訪れた式典会場で銃声が聞こえた時、思わず身構えた。足元を伝ってくるガスの中から短機関銃と拳銃を乱射しながら、ゆっくり歩いてくるガスマスクの人間達、その背後のビルや建物の間から次々と爆発が起こっていく。


(テロね…久しく聞いてなかった音だわ)


学生の頃から着ている赤ジャージのジッパーをゆっくり上げていく。これは返り血対策、

生まれた瞬間に、母親の顔を蹴り上げた暴力娘には、戦いを“仕事”にするしかなかった。違法な地下ファイトにデスゲーム、傭兵…闘い、争い、戦いの繰り返しの18年…


だが“機械”には勝てなかった。人間なら無敵だ。だが、ヘリとか戦車とかその手の兵器には彼女の暴力は通じなかった。それでも充分すぎる戦闘能力だったが、異能者に魔法少女の

台頭は、彼女の殴る、蹴るに特化した戦闘特性を過少評価させていく。


結果として職、いや、人生を失った葵は、この式典で能力者達相手に、

道場破り的な事を仕掛ける気でいた。

それが先客に邪魔されたようだ。このまま迎合?便乗?さて、どうする?


「早く、逃げて下さい。」


幼さMAXの声に気づけば、ガスの中から、可憐な衣装を纏った1人の少女が、ゆっくり

歩いてきた。変身ヒロインというモノだろう。加えて足元を伝うガスは催涙効果も、多少はあるが、彼女達のような存在に最も効果があるようだ。現に、少女の顔色は悪く、報道や

動画で見たような神々しさが欠けている気がする。


正直言って、


「いや、君こそ、逃げた方が良さそうじゃない?」


と声をかけてしまうほどに…


「えっ?えと、わ、私は…」


思わぬ返しに慌てる少女に一瞬、年相応の幼さが見えた。刹那、その肩に赤い血の花が咲く。ゆっくり崩れる彼女の背後には無機質なガスマスクの男達が立っている。そのままトドメとばかりに彼女の頭に銃を突き付ける相手は、直角90度に立て曲げられた自分の手と銃口に乾いた音で挨拶され、血飛沫を上げ、崩れ落ちた。


「な、何だ?」


男達がくぐもった声を上げる中を“赤”が走り抜ける。反撃の暇もない。次々に血柱を上げ、全身を粉砕され、地面に転がっていく。


それを受け止めたのは、巨漢のガスマスクの1人、この部隊最後の1人だ。そのまま

力を込めた蹴りを相手に叩き込むが、自身より小さい赤、いや、赤ジャージの女は両腕で

自身の足を絡めとり、一気に叩き折る。


「やるな…」


短く呟く巨漢は腰を屈め、拳を繰り出す。ここまで密着すれば顔面を潰せる。任務のために強化した体は痛覚も恐怖も感じない。だが、相手が、こちらの手を口で受け止め、

噛み潰した瞬間、情けない声で大きく叫んだ。


「何か、メッチャウっぜぇんだよ?オメー等!」


自身の手を咀嚼しながら、吠える血塗れの女“葵”は、相手の顔面を踏み砕いた後、

少女の元に駆け寄り、アンダーを裂いた即席包帯で負傷した肩を縛った後、ガスの届かない

ベンチに彼女を横たえる。こちらを見上げる少女にウィンクを1つ…


「弾は抜けてる。後はお姉ちゃんにまっかしときー!」


そんな戦いへの再就職を決めた葵に、声をかけるベレー帽の兵士が靄の中から現れた…



 「戦線へ復帰しろと言うのか?ソージ」


久しぶりの戦友からの電話は極東の島国で開かれた平和式典が襲撃されたとの事だった。聞けば、かなりの大被害に対し、正義の存在達は全くの無力との事…


かつて、自分を失職に追い込んだ存在がだ…


「戦ってる奴等がいんだけど、統率力がねぇ、アンタに指揮をとってもらいたい。すぐに

現場に行けるように手配ずみだ。」


「しかし…」


「オイオイ、世界を守るのは兵隊の仕事って言ってたじゃねぇか?それが

どうした?農耕楽しくなっちまったか?」


「いや…」


相変わらずの争侍の軽口に懐かしい気持ちがするが、自身の隣で、ジーッと視線を送ってる

ミミィが怖い。お手伝いというより、同棲じゃない?ばりにモーションをかけてくる彼女に

何と説明するか?いや、そんな事よりも…


「もう、終わった。俺達の戦いはな。後は彼女達がやるさ…」


「勝手に終わらせんな。あの子達じゃ戦えない敵がいるんだ。それとも嫉妬か?隊長?

俺達が必要になるって言っただろ?適材適所だ。それぞれが得意を活かして支え合う必要がある!」


「……」


「あの、ボストン…その電話誰からですか?」


「ん、何だ?今の声…その声、まさか女か?隊長、守るモノが出来ちまったな?なら、いっその事、滅びを止めなけりゃ…」


「すぐにかけ直す」


電話を切り、目の前に立つエルフ娘に振り返る。


「元の仕事仲間から電話があった。出かけてくる」


まだ、迷いはある。だが…ボストンの真剣な表情を見て、ミミィも静かに頷き、呟く。


「それは大事な用なのですか…?」


「正直、わからない。しかし、貴方達のような存在とこの世界を守る事だと思う」


「わかりました。でも…」


「?」


「じゃっじゃーん、家のドア及び、窓は全て内側から鍵が付いてる仕様に変えましたー!

(“バカな、いつの間に”というボストンの声に、軽く微笑み)エルフは手先が器用…舐めてはいけません!そして、気になる鍵はぁっ!」


妖艶な笑みと共に彼女が指さすのは自身の豊満なバスト&谷間…


全く、とんでもない居候が転生してきたものだ。しかし、時間がない。兵隊の行動は迅速…

手段を選んでいる時間はない。


「すまない!」


の一声と共にミミィの胸に手を突っ込むボストン(“キャッ、モーレツ!”と言うミミィの

嬌声は何とか無視し)鍵を穴に差し込む。


外に飛び出た瞬間、ボストンの体は光に包まれ、硝煙と悲鳴に銃声の“元職場”へと

一気に帰還した…



 「なぁっ、おい“タケ”言ったよな?俺達、明日が見えねぇ強盗団、正義の野郎、女の子じゃなくて、覆面つけたヒーローの、あ、これ、すごく重要ね!剛腕な蹴りとかじゃなくて、ニーソックスとかブーツに踏まれたかったな!ウン!に負けて、あれじゃん?

有り金全部で、何とか南米行こうって言ったじゃん?


その前にさ、ちょっと記念に式典に出てる魔法少女とか

変身ヒロインちゃん達のいたいけなパンチラ?目に焼き付け思い出やんだった筈じゃん!


それだけだったじゃん!なのに、何してんだー、お前ー?」


ビル爆発の後地で懸命に市民を瓦礫から救い出す男“タケ”の横でがなるのは、どーみても

悪人ポジの黒覆“アスク”だ。


「言うな!アスク、今は救う、ただ、それだけだろ…」


「馬鹿か?お前、馬鹿だろ?救急車の中から擲弾砲抱えた奴が出るご時世だぞ?オマケに飛んでるヘリはあれじゃん?50口径雨みたいに撃ってんじゃん?助けこねぇよ、

終わりだよ。この国は、いや世界もな。俺の携帯ラジオ、混線してる通信拾ったぞ?核だぞ?


しかも相手はボゴ・タルタ!ヤべぇよ。アイツ等、滅亡思想も辞さないからさ。俺が覆面

被ってる理由も結構、あいつ等絡みだからさ、だからさ、逃げよ?コイツ等置き去りにしてさ、なっ?」


卑屈が覆面ごしにもわかるアスクをタケは侮蔑を抑えない表情で見返す。


「お前の好きな魔法少女達も傷ついているぞ?」


「いや、それは趣味だしさ。そこまで思い入れは…」


言葉途中でタケがアスクの顔面を張った。瓦礫に吹っ飛ぶ無様な覆面男に一気に捲し立てる。


「だったら、少し黙れ!俺が元自衛隊員という事は前に話したな?あの津波で、救えなかった命に賭けて言う。もう、誰も死なせんとな!何とか言ってみろ」


「‥‥声がでけぇよ。大将…」


「何っ?」


口元を拭うアスクの皮肉に振り向けば、こちらに向かってくる武装勢力の姿が現れ始めていた。


「クソッ、不味いな…」


「だろ?兄弟、そこで相談だ。」


「断る!」


「いや、何も言ってねぇよ」


「絶対に断る!」


「状況を選んでる場合じゃねぇだろ!今はあれだ!非常時だ。」


「駄・目・だ・!」


アスクの懇願にタケは頑として首を振らない。頭を抱える覆面の前で敵が銃を構え始めた…



「そいつは連中の技術を利用した転送装置、一瞬で対象を目的地に送れる代物だ!

凄いだろ?まぁ、俺達がこんだけ調べられ、用意出来るなら、敵だって同じだよな?」


携帯ごしの争侍の声は、ボストンの耳に届かない。目の前に繰り広げられる戦いに怒りと

先程、躊躇した自分を恥じていた。


逃げ惑う市民、よろめきながらも懸命に戦う魔法少女達…それらに銃弾を撃ち込む

ガスマスクをつけた武装勢力…


争侍の言っていた意味がようやくわかった。今、彼女達が対峙する相手を退治するのは、自分達だ。それすらに気づけないとは…


被ってきたベレー帽を強く掴む。一番手前の相手にすばやく距離を詰めると、首根っこを掴み、盾にして、敵の手そのままに突撃銃を周囲にばら撒く。倒れた相手を踏み越え、次の敵へ…銃弾を躱し、死体から武器を拾い上げる。建物の屋上に陣取った狙撃手達は撃ち込まれる前に銃弾で片づけ、迫る武装ヘリには奪い取った携帯式対戦車ロケット弾を撃ち込む。


戦いの中で、自分と同じ行動をとっている者を見つけた。赤ジャージの東洋人女性、

敵の中を飛ぶように駆け回り、拳と蹴りのみで敵を粉砕している。迷わず声をかけた。


「君、所属部隊は何処だ?」


「先に名乗るのが基本じゃない?今は無職の無所属だけど、カワゆい柔肌守り隊を勝手に

結成、孤軍奮闘中!文句ある?」


「これは失礼、私はボストン、元軍人だ。君は今から即興即戦部隊に編入される」


「それってスカウト?ナンパじゃなさそうね、仕事内容は?」


相手が答える。血濡れの顔には興味が見えている。ボストンはニヤリと笑う。


「そうだな、名称はまだない、強いて言うなら、止める者だ」…



 「アスク、負傷者を遠ざけろ!」


「ほいほい、全く、人使いが荒れーぜ」


喋る二人の間を銃弾が通過する。咆哮を上げたタケは、手近な建物に力を込め、巨大な壁面ごと抜き出すと、巨大な盾のように自分達の前に置く。相手の驚愕が加速する銃弾の雨で

伝わってきた。


「相変わらず、イカれた馬鹿力だ。出来れば、そいつを敵に使ってくれねぇか?」


「駄目だ、これは守るためのモノ、敵を倒すモノではない。」


「そう言ってられるのも今の内…」


喋るアスクに呼応するように瓦礫の前でいくつもの爆発が起こる。敵が手榴弾を投擲した様子だ。


この次は榴弾…50口径機関銃、それともバズーカ?いつまでも防ぎ切れるものではない。

だからこそ…


「俺の出番だ、タケ!“アレ”を寄越せ!もしくは取りに行かせろ?」


「それは…駄目だ。お前は、その前例がある」


「あの時は仕方なかったろ?今はつべこべ言う状況じゃねぇ!早くしないと皆死ぬぞ?」


「しかし…」


「あ、あの…」


2人のやり取りに割り込む、か細い声に気づけば、寝かしている負傷者の内の1人、変身ヒロインの少女が手を上げていた。


「わ、私戦います。大丈夫です!ちょっとフラつくけど…」


「病気の女の子は可愛さ2割増しって言うけど、デマじゃねぇな…あっ、いや無理、無理!

顔真っ白じゃん?無理だよ」


「この覆面の言う通りだ。今は我々に任せて!」


「で、でも…」


言葉途中で意識を失う彼女を、アスクが抱きかかえる。


「‥‥軽いな、それに柔らかい。世界はこんな子供にとんだ重責を押し付けたモンだ」


「それでも、彼女達は戦うんだろ?それが仕事、いや、未成年だな。使命と信じて…」


「ハハッ、勝てねぇな?コイツは参った。足洗って再就職と行こう。今度は間違えねぇ」


「オイッ、何処に行く?」


「ハロワだよ。戦場のな!」


ニヤリと覆面を歪ませたアスクが瓦礫の盾を抜ける。相手の銃撃が自分に向く瞬間、

不意に現れた赤ジャージが、アスクを床に押し倒し、その後ろに続く

ベレー帽を被った兵士が銃弾を撃ち込んでいく。


「大したガッツだ。戦友、その力で皆を守れ!」


ボストンの声に赤ジャージの葵が頷き、敵の中に飛び込む。上がる血飛沫の数だけ、敵の数が減る。立っているのが、彼女1人になった時、その手が止まる。


彼女の先を見れば、市民を盾に張り付けた、瓦礫ではなく“人の盾”を構えた敵が迫ってきていた。


男も女も老人もいる。子供は肉の壁には小さすぎるとの判断から、磔にされていない。ひとまずの安心だが、射撃を封じられたボストンとしては何か手を考えないといけない。


「不味いな、葵、どうにか出来ないか?閃光弾もフラッシュバンも効果なさそうだ」


「流石に無理。近づく前に銃弾で蹴散らされちゃう」


悩む二人に、盾の隙間から銃弾が撃ち込まれる。彼等としても瓦礫の盾に下がるしかない。


「あのよ?お二人さん、ちぃっといいすか?」


様子を窺う二人に覆面が割り込んでくる。いかにも悪人面という面、覆面だが、何か使えるか?


「いいアイディアがあるか?」


「“銃”を貸して下せぇ」


「駄目だぞ?アスク!それは駄目だ!」


瓦礫を持った男が叫ぶが、覆面男はまっすぐこちらに視線を向けている。確かにまともじゃない雰囲気だが、真剣な眼差しに賭けるか?時間もない。腰に入れた自動拳銃を放る。


「ありがてぇ!」


感謝を示すアスクが自分達の前に飛び出し、次々と銃弾を明後日の方向に撃ち込む。声をかける前に、それらが建物や壁を跳弾し、人の盾を通り越し、それらを構えた敵に着弾していく。


「ハハッ、この感触に匂いがたまんねぇ!やっぱり、俺はこれで良いや、アハハ、ハァッハハハ」


笑いながら、飛び出すアスクは崩れ落ちた盾を飛び越え、至近距離の1人にほぼゼロ距離で銃弾を撃ちこむ、飛び散る脳漿をカモフラージュに、拾った短機関銃で踊るように銃弾を

ばら撒いていく。


敵の1人が携帯ロケットを構えるが、発射する前に、その先端に放った銃弾を命中させる。

爆発で吹き飛ぶ相手の中を駆け、両手に突撃銃を持ったアスクが笑いながら、


各所の敵に銃弾を撃ちこむ。相手も反撃するが、銃弾を巧みに避けるアスクに一発も当たらない。


「銃口を見れば、弾道が視える。後は体をちょっと動かすだけ、お次は何だい?」


楽しそうに呟き、新たに出現した敵の銃を持った方の腕を撃ち抜き、下がった銃口で足を吹き飛ばさせていく。


地面に転げ、のたうち回る敵一人一人にゆっくり銃弾を撃ち込み、血塗れの相手の耳元に顔を近づける。


「痛いか?戦いは厳しいな?兄弟、お前も俺も同じ貉の穴だな。だが、残念、今回は俺達側が優勢だな?いや、優勢に変わっていくさね?」


「フハッ、馬鹿者共がっ?お…お前が…戦っても何にもならない、やがてはく…駆逐される。

お、俺もそうだった‥‥アイツ等に全てを…踏みにじられた‥‥」


「ハッハァ!いいねぇ、それ、可愛い娘の足とか、パンチーラ上等!最高じゃねっ?結構、好きだよ?俺、そーゆうのっ!」


「ハッ、へ、HENTAI…」


「ああっ、これで、お互い地獄行きだな?いや、最近じゃぁっ、閻魔さんも女人化?確認ヨロだぜ?」


「・・・・・」


こと切れる敵に静かに笑いかけ、新しい獲物を探し、走り出す。


その背中を見つめボストンが呟く。


「話している事半分しか、わからなかったが、使える奴ではあるな」


「何処がっ?ヤバいぞ?アイツ、弾切れまで暴れ回るぞ?オマケに銃は至る所に転がっている。制限なしだ。だから、渡したくなかった…」


「いいんじゃない?状況が状況っしょ?」


「その通りだ、諸君、前進だ。奴等を止めるぞ!」


ボストンの声に全員が頷き、いや、若干1名、頭を抱えたが、銃声の続く道に向かって走り出した…



 「司令、偵察ドローンが回復、状況確認が再開、各部隊とも通信回復…映像出ます」



「こちら、会場警備、残存は数名、味方の中にも敵がいた模様…状況は劣勢、劣勢ですが、

優勢に変わろうとしています!」


「どーゆう事だ?」


「わかりませんが、敵が後退しています。凄い!少数ですが、強い。そちらの派遣した増援ですか?」

 

「いや…」


「とにかく、我々も早急な救出活動に転じます。しかし、確認した所、魔法少女の1人が

敵に捕まっているとの報告が入っています」


「何っ?」


「すぐに部下を向かわせたいのですが、何分、こちらも状況が…」


「わかった、現状努力しろ!」


包帯を巻いた警備隊員に告げ、司令は映像を切る。傍に控えた謎の男に確認する事がいくつもあった。


「あれが、君の提案した者達の仕業という事でいいのか?」


「どうやら、そのようですね。でも、私が雇い主って訳じゃありませんよ。あくまでも、彼等の自主的行動の賜物です。」


「何者なんだ?」


「さぁっ、私も前任者からの引継ぎで、詳細までは…ただ、何年も前から、こーゆう事態の際、現れるみたいですね。」


他人事のように話す男に司令は苛立ちを隠せない。それを察したのだろう?補足するように男の話が続く。


「貴方達、常に権力者側サイドにはわからんでしょうがね?人類は生まれた時から

何度も滅亡の時を迎えています。彼女達のような異能の存在も太古から存在していたようです。そして、核物質が兵器になった瞬間から、人類は自身の首を締め上げる度合いを強くした。


何故、そうまでして滅びないのか?彼等、ブレーキをかける者達がいるからです。

その時代によって、姿や人を変え、だが、確かに存在する。今回のメンバーはまだ、

未確認ですが、その内わかるでしょう。こういった事態に対応できる適正者である事には

間違いないのですから!」


「君が集める訳ではないのか?」


思わず出た声に、相手は申し訳さなそうに頷く。


「ハイッ、ここまで捲し立てて何ですが、その通りです。私は彼等の存在を政府機関に

伝える仲介人でしてですね。招集するのは、別の者です」


「その者とは…?」


「会った事はありますが、お会いにならない方がよろしいかと…」


「何故…?」


「こう言えば、わかるでしょう。私も、私の前任も、その前の者も、招集者に会ってます。

彼等も私も全員、同一の人物にね」…



 「どうした?作戦が滞っているのか?」


深海に潜む潜水艦の中で“ボゴ・タルタ”現指導者は焦る。作戦は成功した筈だ。それが、つい今しがたから、ほとんどの部隊が通信途絶の状態…


「異能者共の反撃か?」


ならば、事態を早めねばならない。これだけの準備をして、尚、殲滅不能な敵共には…

指導者の視線に部下達がシステムチェックを開始し、驚愕の声を上げる。


「同志、核のサイロが開きません!それどころか、艦内コントロール不能…まもなく臨海水域まで沈みます…」


「馬鹿なっ!?一体どーゆう事…」


指導者の声に、低く軽薄な笑い声が答える。顔を上げれば、艦橋前の通路から黒い影のような人物が歩いてきた。


「おたく等の作戦は終いだ。残念だったな?おっと、拳銃は無しだぜ?狭い密閉空間では

武器はご法度、焦るな、どのみちお前等全員、あの世行き確定だから…ハハ」


「何者だ?正義を隠れ蓑にする化け物の仲間か?」


「違うね、そんな綺麗な感じじゃない。だが、必要な者だ。お前等みたいな連中と同じでね?」


「‥‥そうか、フッ、やはり強いな。だが、忘れるな、戦いは続くぞ?いつか、人は自らの選択で、その身を亡ぼす。奴等が良い例だ。今は人のために戦う。だが、今回の事件のような目に何度も遭えば、その力の矛先は変わる。必ずな。その時、お前はどうする?」


「止めるさ。数百年前から変わらない、今回も良い奴等に会えた。目的のために諦めず、

強く抗い続ける者達にな…」


艦内を不気味な破砕音が走り、あちこちから水が浸入してくる。悲鳴を上げる指導者を含めた人間達の中で“犠隻 争侍”は1人笑った…



 「隊長、司令等である潜水艦からの連絡途絶…どうします?」


式典近くの高層ビル屋上に配置する実行部隊隊長の彼は、その報告に迷わず、目の前に拘束した魔法少女の頭に銃を向ける。


作戦は、失敗の兆しが見えていた。会場及び、周辺に展開した味方は数分前から、各個撃破されている。


異能者ではない。彼等はこちらの準備した特殊ガスでろくに動けんだろう。無論、会場の警備兵でもない。彼等にそんな実力はないと言い切れる。


(やはり、止める者が出てきた、わかっていたぞ。こちらが映画や漫画のように、おめおめ、待つと思うか?)


引き金に添える指に力を込めた。こちらを見る少女の顔には幼さがある。惑わされはしない。

彼女達の力は自分達を一瞬で灰燼に帰すものがあるだろう。実際に目で見てきた自分だからわかる。


「お前達に恨みはない。しかし危険だ!だから…」


「殺すってか?抜かしてろよ、大将!」


不意の軽快な声と自身の銃が吹き飛ばされるのは同時だった。一体、何処から?疑問に思う彼の視界にビルの外側から複数の影が飛び上がってくる。思わず叫ぶ!


「ありえんっ!ここを何階だと思ってる?」


「タケの馬鹿力を舐めんなよ?映画とか漫画みたいな感じの人間カタパルトだ!そして、もう残ってるのはお前だけだぞ?」


硝煙を吐く突撃銃を構えた覆面の声に気が付けば、味方は全員、赤ジャージに粉砕されている。魔法少女を立ち上がらせ、ナイフを抜く自身にベレー帽の兵士が銃を捨て、同じくナイフを抜く。


言葉を交わす必要はない。少女に食い込ませる一撃は相手の腕が身代わりとなった。そのまま突き出す、こちらの二撃で離した少女を庇うようにベレー帽が間に立つ。


無言の剣劇が繰り広げられる。自分もそうだが、相手もかなり出来る。片腕を負傷して、

ここまでやりあうとは…確信に近い疑問が声に出る。


「どうやら、貴様もコイツ等に仕事を、役目を盗られた者のようだな?」


こちらの問いに相手が少し動きを止める。覚えがあるのだろう。少しづつ距離を詰めながら、言葉を続けていく。


「何故?そんな奴等を守る?殺してしまえば、俺達は安泰、そう思わんか?化け物だよ?

彼女達は、後ろにいるその娘もな。見てきた筈だ。だから…」


相手の反応を待つフリをして、一気に距離を詰め、突き刺す。手ごたえはあった。だが、相手は倒れない。何故だ?疑問に思う男の前でベレー帽が静かに口を開く。


「お前は正しい。ある意味ではな。だが、兵士の役目は“守る事”これは戦う者全てに通ずることだと考える。主義、理想、形は違えどな!


彼女達が戦闘不能に陥った時点で、魔法少女は平和維持の対象から、我々が救うべき

救出対象へと姿を変えた。


そう考える!だから、貴様等はそれに害為す敵、よって制圧する!」


一気に捲し立てたベレー帽がこちらに腕を素早く突き出す。反撃する暇もなかった。相手に突き刺さったナイフは抜けず、拳がそのまま顔面にめり込む。思わず声が出た。


「き、詭弁だ…ただの取っ手つけの」


「それを言うなよ…俺だって、まだわからない。だが、兵士のモットーは考えるより動けだ。理由とか、大儀は後づけ…上の連中が何とかするさ。上が何処かもわからないがな」


正に皮肉と言った表情のベレー帽の後ろでは、赤ジャージと覆面が魔法少女を介抱している。確かにそうだなと納得する自身も、かつては兵士だったと気づき、そのまま意識を失った…




 銃声や悲鳴が聞こえなくなって久しい。靄と瓦礫の中を進む変身ヒロインの少女は

辺りを警戒して進む。敵がバラ撒いたガスは、自分達の能力を半減させた。反撃を試みた者達は一般市民の盾に反撃が出来なかった。


彼女も必死に応戦し、ここまで来た。戦いはどうなったろう?仲間達は無事なのか?


「魔法少女さん?」


不意の幼い声に思考が中断される。目の前に、親とはぐれたらしい少女が立っていた。


「あのね、ミクね!今日ね、式典を見に来たの!お母さんと、そしたらね、花火とか、

大きな声がしてね。それで、それで…」


言葉途中で涙目になる少女を抱きしめる。今の自身に出来る精一杯の事だ。


その小さな顔の後ろに複数の影がさす。全く、何てタイミングだ…ガスマスクの一団の1人が、こちらに銃口を向ける。


「撤退の最中に最高の獲物だ。俺達はついてる」


「何故、こんな事を?」


「お前達が終わりを招き、始めた事だ。戦いは続くぞ?永遠にな。例え、我々が…」


「いや、止まるね?だって、あたし等がいる。」


軽快な声と共に赤ジャージの女性が飛び蹴りを、先頭の敵にかまし、笑いながら銃を乱射する覆面、剛腕を奮う男が続く。


彼等は何者?呆然とする魔法少女の背中で少女が嬉しそうな声を上げた。


「兵隊さん!」


その声に呼応するようにベレー帽を被った兵士が、横をすれ違い様に自身と少女に

向けて敬礼する。その隣に並ぶ、まるで今、海から上がってきたと言う感じの、

びしょ濡れ男が低く笑い、言葉をかけた。


「悪いな、お嬢さん方、今日は俺達で勘弁だ。」…(終)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

BRAKES~滅び止める者達~  低迷アクション @0516001a

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る