第6話家族

「まあ……確かに」


 アルクも自分の父親の方を見ながら私に共感してくれた。私は「だろ!」っとアルクに向かって言うと、アルクの父親の方を見ながら。


「ただいま、お父さん」


 と、挨拶をする。それに続いてアルクも。


「ただいま」


 っと一言挨拶をする。私たちの挨拶に対して、お父さんは笑顔で。


「おう、ただいま!」


 と言って、洗濯カゴを持ったまま居間の方に向かって行った。靴を脱いで、私たちも居間の方へ向かうと、いい匂いが漂ってくる。


「今日は……カレーか?」


 アルクは台所にある鍋の蓋を開けて、中身を確認すると。


「よし、先に食べようぜ」


 居間で洗濯物をたたんでいるいるお父さんを横目に、カレーをご飯の乗ったお皿によそい出した。

 

「あ、私のもよそってくれ」


「はいはい」


 めんどくさそうにしながらも、アルクは私の分のカレーをよそい始めた。二人分のカレー皿を、居間にあるテーブルの上に置くと。


「おい、なんでお前ら先に食べようとしてんだよ。俺は待っててやったのに。


 「ったく」と言い、畳んでいた洗濯物を床に置くと、お父さんは皿の上にご飯とカレーをよそってテーブルの上に置く。


「全く。誰だよ、こんな薄情な息子を育てたのは……」


「あんただろ」


 一人愚痴をこぼすお父さんに、アルクは冷静にツッコンでいた。


「まあそんなことより、早く食べようぜ」


 アルクは待ちきれないとばかりに、一人先にいただきますと言ってカレーを食べ始めた。


「まあそうだな。いただきます」


 私もアルクにつづいて食べ始める。


「はぁ……お前らなぁ……」

 

 パクパクとカレーを食べる私たちを見て、もうどうでもよくなったのか、お父さんは何も言わずにカレーを食べ始める。

 

「今日はなんかあったか?」


 唐突にお父さんはそんなことを聞いてくる。いつも食事の時間いなると、毎回この質問をしてくる。

 一日中家にいるお父さんの楽しみは、私たちの学校で起こった話ぐらいしかないらしいから、いつもこの質問をするらしい。


「今日は……アルクが握力で私に負けたことを色々と言い訳してたぐらいかな……」


「ほーどんな言い訳だ?」


 興味を持ったのか、お父さんは持っていたスプーンを皿の上に置いて聞く姿勢に入った。

 私もさらにスプーンを置くと。


「なんか、本来はお前ら女よりも男の俺らの方が強いとかなんとか言って」


「うん」


「アルクが握力測ったら、1、3しかなかった」


「はは、なんだそりゃ。本来は男の方が強かろうが、現実は女の方がつえーじゃねぇか。てかお前、1、3って低すぎだろ! 鉛筆持てんのか?」


「確かに、お前よく今まで生きてこれたな」


 私とお父さんがアルクのことを煽っていると、アルクはゆでダコのように顔を真っ赤にして、


「ごちそうさん!」


 食べ終わった皿を思いっきり机に置くと、自分の部屋に行ってしまった。


「あいつはほんと短気だよな」


「うん、心が狭いんだよ」


 アルクの姿が見えなくなってから、私たちがアルクの悪口を言っていると、ドンっと壁を叩く音が隣の部屋から聞こえた。

 この家の壁は薄くてよく音が聞こえる。今の悪口も、アルクの耳に届いてしまったのだろう……。


「ごちそうさま」


 私もカレーを食べ終えると、テーブルの上に置いてあったアルクの食器も一緒に台所に持っていき、部屋に戻った。


「おいアルク。さっきはごめんて」


「別に怒ってねーし。もう今日は疲れたから寝る」


 ベッドに入ったアルクは、ガバッと布団を頭まで被せるとそのまま寝てしまった。

 さて、どうしようかな……。アルクも寝てしまったし、此れと言ってすることがない。

 でも、いま無理やりアルクを起こしたらめんどくさいことになりそうだし……。てかコイツ風呂入ってなくね?

 汚いやつだな……。そんなこと思いながら、私は天井を仰いだ。




















  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る