第5話環境
「やっと終わった……」
アルクがルーマ先生のお説教から解放され、私たちは帰路についている。
「お疲れ!」
「……誰のせいだと思ってんだよ」
ギロリとアルクが睨めつけてきたが、笑って知らんぷりをする。意外と根に持つ奴だな……。もう1時間ほど前の出来事なのに……。
「まあそんなことより、そろそろお前の誕生日だな!」
「あ、そういえばそうだったな……」
話をそらすように、私は誕生日の話題を振る。
「確か……13歳だっけ?」
「あぁ、もう大人だな……」
アルクは夕焼け空に目を向け、目を細めながらそんなことを言っていた。何言ってんだコイツ?
「何か欲しいのとかあるのか?」
「うーん、お前からもらえるものとなると……。いらない、どうせロクなものじゃないだろうから……」
アルクは、はぁと思いため息をついていた。そういえば前のプレゼントに、虫の入った箱を渡した気がする……。
「まあまあ、次はちゃんとしたものだと思うから」
「思うってなんだ! ちゃんとしていると言う確証がないならいらん」
「ははは、じゃあケーキに虫入れよ」
「はぁ!? まじでやめろ! どうしてそう言う結論になった?」
またも、はぁと思いため息をアルクはついている。
「なぁ、前から思ってたんだが」
急に真剣な雰囲気になったアルクは、私の顔をジーと見た後に。
「お前ってなんでそんなに男勝りなの? 黙ってれば女っぽいのに……」
そう言ったアルクは、私の長い髪の毛をサラッと触ってきた。
「ぽいとはなんだぽいとは。私は正真正銘女だ」
アルクとそんな雑談をしながら歩いていたら、もう家までついていた。私は木製のドアを勢いよく開けると、
「私が男勝りなのは……」
「お、ナリアとアルク! もう帰ったのか。おかえり!」
玄関には洗濯カゴを持ったアルクの父親が、忙しなく挨拶をしてきた。それを見た私は、アルクに向かって。
「環境のせいだろ」
そんなことを言う。
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