第7話転校生
それから翌日のこと……。私たちは、いつも通り薄汚い校舎の中にある教室へと足を運んでいた。
いつも通りの教室だが、雰囲気は少しだけ違う。妙にクラスメイトたちがザワついている。
「なぁアルク、みんなどうしたんだ?」
昨日のことをまだ怒っているのか、アルクは机に突っ伏したまま。
「転校生が来るんだとよ」
強めの口調でそんなことを言ってきた。転校生か……。
珍しい……というか初めてのことだ。少なくとも、私がこの校舎に来てからは初めての出来事だ。
ここはなんの変哲も無い、ただの小さい村だ。そんなところにわざわざ引っ越してくる物好きなんて、いままでいなかった。
「どんなやつかな……」
私は内心ワクワクしながら、
「はーい、皆さん席に座ってくださいね」
ガラガラと教室のドアを開けて、ルーマ先生が杖をつきながら教室の中へと入って来る。
「もう皆さん知っているかもしれませんが、今日は私たちの新しい仲間がこの校舎にやってきました。ほら、おいで」
ルーマ先生が廊下の方に手招きをすると、一人の女の子が教室に入ってきた。砂埃のついた肩まである白髪に、薄汚れたシャツ、泥だらけのズボン。
お世辞にも綺麗とはいえない服装の女の子だ。
「あ……あの、今から何をすれば……」
「じゃあ自己紹介しよっか。名前と後は……趣味とか」
先生にそんなことを言われた女の子は、ゆっくりと教壇の前に立つと。
「え……えーと、名前はニーチ=ハルクスタと言います。趣味は……特に無いです。これからよろしくお願いします……」
なんとも面白味のない自己紹介だった。まあ普通こんなものか……。私は椅子に背中を預けると、グデーっとやる気のない姿勢を取る。
隣に座っているアルクも、心底どうでも良さそうな表情をしながら頬杖をついている。
まあ、少し期待してたけどどうってことなかったな。普通の少しだけ汚い女の子が来ただけだ。
特に興味を惹かれるものもないし、今後関わるかと言われたら関わらないと思う……。
「じゃあニーチにはあそこの席に座ってもらおうかな」
転校生の自己紹介が終わると、ルーマ先生は私の左隣の席を指差した。昨日までここに席はなかったが、転校生のために新しく設置したのだろう。
「は……い。わかりました」
ルーマ先生に指示された通りに、転校生は私の隣に置いてある席に座る。ゆっくりとした足取りで、一歩づつ。
転校生が私の横の席に座ると、私は手を差し出して。
「よろしく、私はナリア」
そんな挨拶をする。
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