幼少期編

第2話ナリアとアルク

「退屈……」

 

 私はそんな独り言を、ポツリと呟く。今は学校の授業の最中。こんなものを受けたところで、何か意味はあるのだろうか……?

 どうせ将来役に立つことなんてないのに、一体なぜこんなことをしているのだろうか。

 こんなことをしている暇があるなら、剣術の授業をしていた方がよっぽど有意義だ……。

 このまま寝てしまおうかな……。そうだな、そうしよう!

 私は机に置いてある教科書を枕のようにして、うつ伏せで寝る態勢に入る。

 おやすみなさい……と心の中で言い、パタンと机に突っ伏した。

 ………………………。


「おい、起きろ!」


 ゆさゆさと何者かに肩をゆすられる。聞き覚えのある声。覚えのあるどころじゃない。毎日聞いている声……。

 

「あと十分」


 そう言って、肩に置かれた手を振り払う。


「はぁ? 次は移動教室だぞ。お前の楽しみにしてた体力測定の授業なんだぞ?」


 体力測定……?

 あぁ、そういえば今日だったか。私はゆっくりと顔を上げて、椅子から声の主を見上げる。

 私とあまり変わらない背丈。金色の短い髪に、綺麗な金色の瞳。整った顔立ち。見慣れた顔、聞き慣れた声。

 私の幼馴染、アルク=ハーベルトが怒った顔をして私を見つめていた。


「早くしろよ。置いてくぞ」


「まあ待て」


 椅子から立ち上がると、グイッと背伸びをする。


「じゃあ行くか」

 

 起こしてくれたアルクを置いて、私は目的地に足を運んだ。小さくてオンボロな校舎の中を、走りながら進んだ。

 

「あ、おい、ちょっと待てよ!」


 置いていかれたアルクが何か言っていたが、それを無視して走った。

 

「ふぅ、危うく遅れるところだった」


 アルクを置いて、全力で走ったおかげで時間ギリギリだが授業に間に合うことができた。


「えー、皆さん揃ってますか?」


 私が教室に入った時、担任のルーマ先生はクラスメイトがちゃんと来ているか確認をしている最中だった。

 私はニヤリと口角を少しだけあげると。


「ルーマ先生、アルクがまだ来てません」


 そんな報告をした。


「もー全くあの子は。あとでお説教ね……」


 先生がそんなことを言ったと同時に、ガラガラと勢いよく教室の扉が開き、息を切らしたアルクが飛び込んできた。


「やっと来たのねアルク。みんなを待たせて悪いとか思わないの?」


「へ? いや待ってください! 俺が遅れたのは全部ナリアのせいで……」


「言い訳しないの! あとで職員室に来てもらいますからね」


「は、はぁ!?」


 先生とアルクのそんなやりとりをみて、私は笑いを抑えられなかった。少し悪いことをしたなーと思ったが、申し訳ないとは思わない。

 こんなこと日常茶飯事で、アルクが怒られるのなんて今日に限った話ではない。まあ大体の原因が私にあるのは認めるけど……。

 

「まあアルクがどうして遅れたかは後でじっくり聞きますから。それじゃあ早速だけど、体力測定の方を始めようと思います」


 そうして、私が待ちに待っていた体力測定が始まった。





































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