命より大切なもの

ラリックマ

プロローグ

第1話命より大切なもの

 荒れ狂う砂嵐。目を開けることすら困難な道のりを、真っ直ぐ進み続ける。


「ねぇ、私たちはどうして戦っているのかな……?」


 隣を歩いている友人のニーチ=ハルクスタは、そんなことを聞いてくる。


「それはお前……大切なものを守るためだろ」


「でもさ、私たちは命をかけてるんだよ? 基本的に命って一番大切なものじゃん。それを犠牲にしてまで、私たちは何を守ってるのかな?」


 そんなもっとなことを、ニーチは言ってくる。


「確かに、一般的価値基準にしたら、命は一番大切だよ」


「じゃあなんで……」


 ほこりのついた綺麗な白髪をなびかせながら、ニーチは俯く。そんなニーチに、私は遠くに見える敵兵の姿を視認しつつ。


「でもさ、その命を犠牲にしてでも守りたいって思うものが、世の中にはあるんだよ……」


「うーん……そうかな……?」


 私の言葉に納得できずにいるニーチは、訝しげな顔をしている。


「ほら、雑談なんかしている暇なんかないぞ。結局、理由があろうがなかろうが、私たちは戦わなくてはならないんだから……」


 ニーチにそう言うと、私は鞘から剣を抜く。


「こんな無意味な戦争を、早く終わらせるために……」


 そう言いながら、誰よりも早く敵兵の元に突撃した。










 

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