船にのりたい

 ぼくが住んでいるのは、山間部だった。近くに海はなく、ボートに乗れるような川もなかった。人間自分の暮らす地域にないものには憧れるもので、ぼくもよく都会に行ってみたいだとか、海に行きたいだとか感じることが度々あった。その一つに船に乗ってみたいというものがあった。


 ある日、そんな夢をかなえるかもしれない閃きがあった。手持ちの札は親のいらなくなったガラケーだった。スマホもWiFiもない時代だったので、できることは限られていて、カメラと目覚ましくらいにしかならなかったけどそれでも十分に遊べるものだった。


 「発泡スチロールの船に川に浮かべて、その上に乗せたガラケーで動画を撮ろう。」


 今のスマホと違い防水機能なんてついていないしカメラの性能もお粗末だったけど、結果としては大満足だった。進路上にカエルを泳がせたりと、演出も用意したおかげで実際に船を流している間だけでなく後で動画を見ているときも楽しめた。視点が低くカエルも大きく見えるので、自分が乗っているというよりもアリになったかのような視点だったのもよかったと思う。


 ないものに憧れるだけでなく、今あるものでどう楽しめるかを学んだ一日だった。


――――――――――――――――――――――


 もし現代のスマホやアクションカメラで同じことをやるとすれば、水中の様子も撮れたり、高画質で撮れたりともっと夢のある遊びなのかなと思ったりした。

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虫捕り少年事件簿 表之裏 @reobverse

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