#10 マジックミサイル

「マジックミサイル!」

 俺の右手のリングが起動し、力を集める。


トテテテ

(4.5m)


1秒……


テテテ

(4.2m)


2秒……


テテテ

(3.9m)


3秒……


テテテテ

(3.6m)


4秒……


テテテ

(3.3m)


ズパンッ!ピギャ

【35DP獲得しました】



 結果からいえば、マジックミサイルは大正解だった。

 射程を4分の1にしたせいで5Mまでしか届かず、5秒の溜め時間も相当邪魔くさいが、どんくさいネズミを殺す分にはなんの障害にもならなかった。


 やはり直接殴り倒すのと、飛び道具で撃ち殺すのでは雲泥の差がある。

 撃ち殺すのも罪悪感がないわけではない。

 だが、昨日の生々しさに比べれば、すぐに慣れることができた。


ミュ


 少し進むと、ネズミがすぐに姿を現す。

 さきほどネズミを撃ち殺してからまだ、1分とたっていない。

 先ほどのマジックミサイルリングの再使用時間はまだ4分以上残っていた。

 しかし、俺は慌てず少し下がると、"2つ目の"マジックミサイルリングを起動する。


トテテテテテテテ……ズパンッ!ヒグゥ

【33DP獲得しました】


 近寄られる前に、マジックミサイルは難なくネズミを打ち抜き、小天使が消滅を告げる。

 俺の左手にはすでに3つのマジックミサイルリングが装着されている。

 1つ目の使い後心地を確認したあとに、5分の再使用時間を補うために即座に追加購入したのだ。

 使い勝手がいいので、さらにもう2つ追加してもいいかもしれない。


 問題は、DP消費半減効果をつけたが、それでも1発撃つに13DPかかることだ。

 購入DPは625で100発しか使えないので、実はさらに6DPちょいのコストがかかっている。

 収支的に、1発33-13-6=14DP程度の儲けにしかならないが、1日50匹倒せれば700DP前後の黒字にはなる。

 効率は悪い。が昨日から比べると希望がもてる結果だったからよしとした。

 それにここの敵は苦手なネズミばかりではない。


 索敵リングの反応を確認すると全く動かない敵が1つ。

 地面に目を走らせると、目的の敵がいたのでこんぼうを構える。

 そして、ごつごつした四角い岩へ向けて振り下ろすと、岩はみごとに真ん中からつぶれ、緑の液体を吐き出した。


【41DP獲得しました】

 少し待つと岩は静かに消滅し、小天使が獲得メッセージを告げる。


 ダンジョンモンスター『岩蟹』


 岩に偽装して待ち構え、冒険者の足を切り落とす凶悪なモンスターらしい。

 非常に気配が薄く見つけづらいのが特徴で、索敵リングなしには大怪我必須だとか。


 ただし、逆にいうと索敵リングさえあれば、なんの苦にもならない敵ということだ。

 動かず柔らかいので俺としては、こいつばかり倒したい。見た目も岩が潰れているようしか見えないので、心が痛まないのも素晴らしかった。

 邪魔なネズミをマジックミサイルで落とし、岩ガニを探してはつぶす。

 かれこれ、これだけで20匹以上倒していた。

 昨日に比べればすこぶる順調だ。

 さらにサクサクと岩ガニとネズミを殺すと、


【累計30体撃破ボーナス! 1000DP獲得しました】

 小天使が、『累計撃破ボーナス』を告げた。


 どうやら、敵を多く倒せば、このようなボーナスも用意されているらしい。

 少々現実感にかけるなぁと思ったが、ありがたかったので、素直に喜ぶことにした。

 

(しばらくは、このサイクルで稼ぎながら効率のいい方法を探そう)


 俺は、追加のマジックミサイルリングを購入すると、それを使い切るまでダンジョンに潜り続けた。



―――――――――――――――――――――――


■モンスター解説「岩蟹」

 ダンジョン上層にてよく見られる擬態モンスター。

 横幅35cm程度の少し大きい岩のような見た目をしている。ハサミと足は地面の下に隠しており、持ち上げるまで見分けることは困難。

 地中にひそませたハサミは50cm(個体差により前後する)もあり、切断力は非常に高い。自身と同じサイズの石を砕いたという報告もある。油断した冒険者が足を切断され、ポーションを使用した例は後をたたない。

 見た目に反して外殻は柔らかく、強く殴れば容易に倒すことができる。

 魔法による索敵を怠らず、50cm以上離れた場所から攻撃することを心がければ、容易に対処することができる。

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