#11 建築と魔法使い

 今日は稼ぎが良かったので少し贅沢をしてギルド以外で昼食をとることにした。


「串焼き盛り合わせを1つ」


「あいよ」


 串焼き屋台の前のベンチに腰掛け、屋台の店主に注文する。

 500Rを支払い、広場でぼーと見ながら待つと、串焼きが目の前に置かれた。

 塩味の肉の串焼き4つ。かぶり付くと肉汁が口の中に広がった。うまい。


 串焼きはどこに行ったって外さない鉄板料理の一つだ。

 俺は初めて行く場所では、こういった外さないものから手をだすことしていた。


 串焼き屋台のある、洞窟前の広場の人通りは結構多い。

 店も集約しており、ここにくれば大体の買い物ができると聞いている。

 肉をもぐもぐやりながら、のんびりとあたりを眺めると、広場に面した土地の一角で、建設工事が行われているのを発見した。


 そこは、それなりな広さの土地で、広場前としてはかなり条件良い場所のように見えた。

 そこに3人の魔法使いが、建築図をにらみながら、魔法を駆使し次々と壁を作り上げていく。

 地中から壁を生やしては、窓用に四角い穴をあけ、なにもない中空に平たい石の壁を作っては、上にのせ天井としていた。

 少しずれたら念力で調整。魔法で接着し一体化をはかる。

 そして、あらかじめ用意してあったドアと窓をはめこむと、まるでプラモデルみたいに簡単に家ができあがった。

 

 これが食事をしている間に行われた。早すぎる。

 現代科学では真似のできない、驚異的な建築風景がそこにはあった。

 

 あの魔法が俺にも使えたら、ダンジョン内外で良い稼ぎが得られるだろう。

 なんとか魔法使いになれないものか、そう思った。







「だいたい6年くらいね」


 ギルドの受付嬢は魔法使いらしい。

 そう話を聞いて、彼女に魔法使いになる方法を尋ねたときに返ってきたのはその一言だった。


「基礎修行4年に、初級魔術2年。一般的な初級魔術師になるまで6年。加えて授業料も当然かかるわ」


 出せる?と目で問いかけられる。


「大人になってからはじめるものじゃないわ。諦めたほうが身のためよ」


 確かに今から6年は厳しい。そう上手い話はないか。

 しかし、一応詳細は知っておきたい。


「だいたいというのは?学校に通うわけじゃないのか?」


「塾にいって先生に教わるのよ。習得方法はパターン化されているけど、個人によって差があるわ」


 まだ引き下がらないのか…そんな声が聞こえるような態度だった。

 非常にやる気がない。


「じゃあ、早い人になるとどれくらいで?」


「……基礎修行2年、初級魔術1年で終わる人もいる。でも逆に才能がないと基礎修行に5年かかる人もいるの」


「なるほど…、大変なのはわかった。参考までに聞いておきたいんだけど、一体どこに時間がかかるんだ?」


 知識ならば、要点だけ抜き出せば省略できる可能性も……。


「魔力の扱いね。基礎修行で、魔力の認識と基本操作。初級魔術で属性に合わせた魔力の変換。毎日最低4時間続けて、やっと使えるようになるのよ」


 ……省略できる要素はまるでなかった。


「DPで手に入るアイテムを使うと、簡単に魔法が扱えるようになるけど、あれはあくまで神の特別製だからよ。普通、魔法を習得するには、相応の年月がかかるものなの」


 簡単にできるとよく勘違いするのよね、と彼女はため息をついた。


「落ち人が魔力を扱えた例はほとんどないわ。大人しく使い切りか、DP消費型のマジックアイテムで満足しておきなさい」


 どうやらDP消費を抑えるために、魔法のことを聞き始めたように思われたようだ。

 間違ってはいないが、俺はDP消費より魔法使いへの憧れのほうが強かった

 それこそ手段なんてどうでも良いくらいに。


「魔法を使う方法は他にはないのか?」


「えっ、他に……。精霊に頼むとか?エルフなんかは自分で魔法を使うんじゃなくて精霊に頼んで魔法を行使するみたい。その場合は魔力は必要ないわ」


「精霊か。その方法は俺でもできるかな?」


「マジックアイテムにはそういうものもあるみたい。一般的じゃないから詳しくは知らない」


 精霊使いか。このカタログリストには夢がつまってるな。

 最後に魔法について詳しく書いてある本の位置を聞くと、俺は受付を後にした。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る