#4 魔神ダンジョンとは

 曰く、ダンジョンとは魔神によって浸食された大地である

 曰く、ダンジョンとは魔神の体の一部が変化したものである

 曰く、ダンジョンとは神の課す試練である


「諸説あるが、結論を言うとどれも正しい」


 正しいのかよ、諸説じゃなくないか?


「結局はどれも神託を言い換えただけだからな。そんなことよりも大事なことはただ一つ」


 ギルマスは人差し指を立て、そして、下を指さした。


「この街の地下には、確かに魔神が封印されている。俺たちの使命は魔神を弱らせ倒すこと、それに尽きる」


 ラスボスは魔神アクバアルか。魔王ではないんだな。


「いまこの瞬間にも魔神は復活するために力を集め、世界を浸食している。浸食を止めなければ、やがて世界はダンジョンに飲み込まれ、人々は死に絶える」


 先ほどまでとはうってかわって真剣な雰囲気に、ごくりとつばを飲む音が聞こえた。


「国も街も冒険者を支援するのはそのためだ。そして神も我々を支援してくれている」


 その証拠がこのリストなのだと、ギルマスは本を持つであろう手を掲げた。


「そして堕ち人のお前達は数々の前例から、ダンジョンの攻略を期待されいる」


「俺が期待されてる?」


 勇者っぽい流れだからかイハルが目を輝かせた。


「あぁ、それが初期10万DPであり、数々の特別なアイテムに他ならない」


 リストガイドとかな、とギルマスは付け加える。


「実際、堕ち人によって攻略された魔神ダンジョンは複数あるんだ。偉大なりし『パインセ』も攻略者の一人だしな」


 なるほど、ここの他にも魔神ダンジョンってあるのか。

 そこでの功績が俺たちにつながって、今の支援に至るわけね。


「ただ、どの攻略も冒険者が一丸となって挑み、長い期間かけて行われた大事業だ。一筋縄でいくもんじゃあない」


 とはいえ、やることは一つなんだがなと言い、続ける。


「魔神を弱らせる方法は簡単だ、日々回復する以上のダメージを与えること。これはやつから生み出される魔物を倒すことで叶う」


「そして、魔神の力を砕いた分だけ、神はその力を我々が利用できる形に変えてくださる。それこそが」


 ギルマスが自分の本のある場所を指さす。


「DPってことか」


「そう、やることはシンプルだ。魔物を倒し、自身の力に変え、さらなる魔物を倒す。お前たちには馴染み深い、日常的なことだと聞いた」


 それってゲーマーだけじゃないですかね。

 いや、堕ち人ってゲーマーばかりなら間違っていないかもしれない。


「まぁ、そうだな。俺RPG大好きだし!」


 あ、やっぱゲーマーばかりだな、これ。

 イハルの発言に対し、やはり歴戦の勇者であったかとしみじみ頷くギルマス。

 なんか少し申し訳ない気持ちになった。


「慣れているなら申し分ない。各階層の攻略方法はそこの本棚にまとまっているから読んでいくといい」


 本はこの応接間含め、各所にあるとのことだった。


「一度に多く進まず、慎重にいけ。あとは早めに信頼できる仲間を見つけてパーティを組むことだな」


 これで終わりだとばかりに、ギルマスは手をパタパタと振り言った。


「さぁ、説明は終わりだ。あとは自由にしろ。吉報を待ってるぞ」

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