第101話

 私は元気よく答える。

 なるほど、つまり魔王さんには妻はいないと――。

 だから女性への配慮が足りないと。

 

「次の質問です! 彼女さんとかはいるのですか? 付き合っている異性とか! 魔王さんってすごい良物件ですよね? 魔王さんですし!」

「魔王の何が良物件かは知らないが、魔王になってから千年近くになるが、異性と付き合ったことはないな――」

「ふむ……」


 なるほど、つまり魔王さんは、魔王さんであり、つまりはどーてーって奴ですか。


「つまり、一度も異性と付き合ったことがなくて、男性としては不能だということですか?」

「言っている言葉の意味はよく分からんが、男だぞ?」

「そう言った意味ではないのですけどね」


 なるほど……。

 だいたいの魔王さんの遍歴は理解した。

 つまり魔王さんは千年間彼女がいない童貞さんであり、女性への対応が上手くできない朴念仁ということ。


「あれ? 魔王軍って女性はいないのですか?」

「居る訳がないであろう? 人間の国では女騎士や女魔術師などと言うものが軍に居るらしいが。体の作りが男とは違うし、何より女特有の問題もあると報告は受けている。そんな不確定な状況下で、無理な行軍がある軍事に参加させるなど、愚行も良いところだろう?」

「――そうなのですか……」


 あれ? 思ったより魔王軍の仕事の内容でホワイトだったりする?

  

「さて、そろそろ攻撃魔術の修練を行うぞ?」

「あ、はい……」


 魔王さんが、私から離れると前方を指差した。


「この8年以上、魔術の行使に必要なのは全部教えたが、覚えておるか?」

「はい。魔術発動に必要なのは、魔術発動時の明確なイメージ。つまり構成と、その結果で得られる魔術結果を明確に描けるかどうかです!」

「うむ――。それでは……」


 魔王さんは、指差した先に土で作られた人形を生み出す。


「クリエイト・ゴーレム……」


 私は、目の前に生み出されたゴーレムを見ながら言葉を紡ぐ。

 すると魔王さんは頷きながら。


「うむ。それでは、ここからが問題だ。攻撃魔術を発動させるためには対象を如何にして破壊するか、捕縛するかを想像しなければならない。分かるな?」

「はい――」


 魔王さんは、私が返事したことに気がつくと、手から巨大な火の球を生み出し、魔王さん自身が作り出したゴーレムを焼き尽くしていき、ただの土くれに変える。


「さて、私が今なにを思ったのか分かるか?」

 

 私は頷く。


「土に含まれていた粘度を炎の魔術で焼き尽くして結合力を弱めた……そうですよね?」

「ふむ……、私は土で作ったゴーレムを焼くことで強度を落とそうと考えていたのだが……まぁ、よい。お主は、幼き頃から時折、千年生きてきた我でも知らぬ言葉を口にする。いまだに汝の真価が我には測り知れぬ」

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