第100話
そういうつもりで聞いたわけでは、無いのですけど……。
「まぁ、よい。お主は、魔力量は我よりも低いとは言え魔王軍の中では上位に位置するレベルである。そのような者が始めて攻撃魔術を使った際、どのような事態になるか想像もつかんからな。今日から攻撃魔術に関しては城外で練習をする」
「――ほ、本当ですか!?」
私は、城外に出られるということに驚いた。
今までは、城外に出ることは許されていなかったけど、遊びではないにしても城外に出られるのは、とても嬉しい。
町とか村とか街道を素通りするだけでも、気分転換になるし、異世界の庶民生活に触れることは、将来、王家の人間として国を支えていくなら、とても重要なこと体験になる。
「うむ、手を差し出すがよい」
「はい!」
私は、差し出された魔王さんの手を強く握る。
「手を載せるだけでよいのだぞ?」
「大丈夫です! 迷子にならないためです! 出来たら身体強化の魔術を使ってもいいくらいです!」
「それは止めてほしいのだが……」
魔王さんは苦笑いすると、魔術を発動し――。
景色が一瞬で切り替わると、あたり一面何もない大草原の真ん中に魔王さんと二人で立っていた。
「…………えっ……と?」
「どうだ? ここならば、誰にも見られず迷惑をかけず魔術の修行が出来るであろう?」
たしかに、誰にも見られず迷惑をかけずに魔術の修行が出来るけど! 出来るけど! 私の考えていた外出とは違う!
「どうかしたのか?」
私が、頬を膨らませて不機嫌そうにしていると魔王さんが、私を見下ろしながら話かけてきた。
「なんでもないです!」
町の様子とか色々と見られると思っていただけに、少しだけお怒りモードです!
そして、魔王さんは手を繋いでいないもう一方の手で自分の頭を掻いて困っている様子。
前々から薄々と感じていたけど……。
魔王さんって女心が良く分かってない?
私は小さく溜息をつく。
これは一度、確認しておく必要があるかもしれない。
「魔王さん、ちょっと質問があります!」
「質問? ふむ……。答えられる範囲でよいなら何でも答えよう」
何でも答えようと言っているわりには、答えられる範囲とつけているのは矛盾しているのでは? と思わず突っ込みを入れたくなったけど、それは後に取っておくことにしようっと。
「魔王さんは、奥さんとかいるのですか?」
「――ん? どうしたというのだ。急に、そんな話を持ち出してきて……」
「魔王さんは、奥さんとかいるのですか?」
「…………」
「魔王さんは、奥さんとか――」
「分かった、わかった。妻はいないぞ? 何度も聞くこと重要なことなのか?」
「はい! かなり重要です!」
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