第5話

 そこには黒いワンピースの上に白いフリルのついたドレスを着て、頭にホワイトブリムをつけたメイドさんが立っていた。

 

 ハーフのような顔立ちをした女性は、金色の髪の毛を頭の上で纏め上げて背中に流していた。

 そして、さらに不思議に思ったこと。

 それは、女性がやたらと大きく見えたこと。


 私の身長は160センチくらいだけど、その私が子供に見えるくらい目の前の女性は大きい。

 さらに極め付けは、肌の色も透きとおるように白く、耳がまるで空想上の御伽噺に出てくるエルフのように尖っていて……長い?


 私は、そこで首を傾げた。

 たしか、私が事故にあった場所は、神田だった。

 少なくとも神田には、メイドの格好をするような人は朝からいないと思う。

 

「どうかなされたのですか? シャルロット様?」


 彼女が、語りかけてきた言葉が一瞬、分からなかった。

 私は首を傾げながら周囲を見渡す。

 

「ここって……ど、どこなの?」


 私は、呆然と呟く。

 だって、目に映った世界は今までいた高層ビルが乱立していた神田でなく、そこに存在していたのは白い大理石で作られた建物であったから。


「大丈夫でございますか?」


 女性が心配そうな表情で私に語りかけてくるけど、今は、それどころじゃない。

 自分が、どこにいるのか?

 それが分からないと、恐くて仕方がない。


 さらには近くに噴水まであり、目算で直径20メートル、深さ2メートルはある池があり中央には美しい女性の彫刻が置かれている。

 女神像のような彫刻は抱えている水瓶から水を吐き出している。




 どう考えても、どっきりとは思えない。

 それに、私に話かけてくるような女性は、特殊メイクで耳を尖らせているようには見えない。

 まるで、本当のエルフのよう。

 着ているメイド服だって、安っぽく見えないし、きちんとした仕事着だと思う。

 だって、きちんと着こなしているように思えるから……。


 ――って、私は何を言っているのかな……。

 本職のメイドなんて見たことなんて無いのに、知ったかぶりをしたらダメでしょうに……。

 

「あの――。シャルロット様、お体が冷えてはいけませんので、お洋服を替えませんか?」

「洋服?」


 彼女に言われて、私は始めて自分の体が濡れていることに気がついた。

 それと同時に、自分の体がおかしな事に気がついてしまう。


「どういうことなの? これって……どういうことなの?」

 

 あまりのことに、私は気が動転してしまう。

 だって、自分の体が幼稚園に入園する前くらいまで若返っていたから。

 すくなくても、18歳の女の子の体ではないと思う。

 こんな幼女の体で、18歳だったら、それこそ問題だと思う。

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