第3話

 王都クレスの王城である執務室に「陛下、大変でございます!」と、慌てて入室してきたのは、近衛兵のアレスという男。

 クレイクは、彼が断りもなく入室してきた事を嗜めることはせず、「どうかしたのか?」

と、すぐに何があったのかを問いただした。

 火急の案件であった場合、手順を踏んでいては間に合わないこともあるからだが――。


「シャルロット王女様が、王城内の池に散歩中に落ちてしまわれました」

「なん……だと……!?」


 すぐにクレイクは顔色を変える。

 椅子から腰を浮かせながら「それで、今は、どうしておるのだ?」とアレスに問いかける。すると、アレスは、「ハッ! それが……シャルロット王女様の付き人のメイドであるメロウからの報告ですと、シャルロット王女様は、目を覚まされてから何も覚えていないということです」

「何も覚えてない? どういうことだ?」

「い、いえ……。私も詳しくは……」 

「娘に会いにいく。着いて参れ!」

「ハッ!」


 執務室から出たクレイクは、はやる気持ちを抑えきれずいつのまにか城内通路を走り自分の娘であるシャルロットの部屋の前に到着すると両開きの扉を開けた。

 そこには、今年6歳になる国王の娘シャルロット王女が椅子の上で本を読んでいた。

 


「これって英語? ドイツ語? ううん、どこの言語なの?」


 シャルロット王女は首をかしげながら何冊もの本に目を通していた。

 その集中力は、実の父親が部屋に入ってきても気がつかないほど。


「シャルロット?」


 クレイクの言葉に、ようやく男性が入ってきたことに気がついたシャルロットは、ジッとまっすぐクレイクを見たあと、「ここって地球じゃないんですか?」と、クレイクに語りかけた。





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