エピローグ

「我が息子ヘンゼルよ。外交関係維持の為に尽力を尽くしたお前に褒美を授ける。遠慮せず申せ」

 国王グリートムの声が響き渡る。

 褒美と言われた場合、ヘンゼルは一つにすると決めていた。

「ならば、此度の戦いで命を落とした騎士達に立派な墓をお与えください。それぞれ宗派が違いますゆえ、それに沿った物を」

「ほう、墓か。やはりお前は出来た息子よ」

 殺そうとしたくせに、という気持ちはあったが、ヘンゼルは冷静さを保った。

「そして、隣国アスキトレの技術者ミナカミ・レイナよ。お主も無関係であるにも関わらず、よく戦っているくれた。お前にも褒美を授けよう」

「ならば」

 言いかけ、レイナは考え直した。

 旅費を貰おうと思ったが、よく考えたら目的がまだ達成されていない。目的を達成してこその旅だ。

 目的の為に今、頂いておくべきものは……。

「ならば、ヘンゼル王子の友人として暫くこのお城で養って頂けないでしょうか」

 沈黙。その時間は永遠のように感じた。

「は?」

 その沈黙を破ったのは、ヘンゼルの声。

「はあああああああ!!!???」

 広間に居た騎士、使用人、王女グレーテルまでもが、合わせて息を漏らした。

「ふはっはっはっは。面白い娘であるな! 気に入ったぞ!」

『おいらいと、流石に無理だろ!』

『友人なら大丈夫だろ』

『やっぱりお前は馬鹿だよ!』

「よろしい」

 ざわめきを止めたのは国王。しかしその言葉に一瞬だけの沈黙となり、再び広間は騒がしくなった。

「静まりたまえ」

 王の一声で、次第に声は消える。

「アスキトレの技術者、ドワーフの娘、ミナカミ・レイナを客人として迎え入れる」

 王は立ち上がった。

「ヘンゼルよ」

 話しながら、自室に戻っていく。

「いい妻を見つけたではないか」

「……へ?」

 その場の全員、王の言葉が理解出来なかったという顔をした。

 ただ一人を除いて。

「ぷあっはははははあ! 私が、妻って! やっべええ!」

「何笑ってるんだよ!」

「これからよろしくな、ダーリン」

 語尾にハートマークが着いた気がする。

「お前と結婚なんて嫌だからな! 可愛くても中身はおっさんだ」

「そんなこと言うなって、ダーリン」

「うるさい!」

 ただ一人の少女が入居した事により、ケンリ国ベルロード城内は騒がしくなってしまったのであった。

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