チート能力
まさか、らいとに背中を押されるとは思わなかった。勿論、再開できることすら。
ただ今は、あの地龍を倒すこと。それだけに集中する。
俺のチート能力。らいと言葉を信じたいが、なにぶん使い方が分からない。
「神様。こんな時こそ祈ろう。俺にチート能力の使い方を教えてくれ」
そう呟いてみたものの、何も変わった様子はない。
チート能力。名前的にはなんでもアリというイメージを持つが、流石になんでもアリという訳ではないだろう。
しかし、やれるだけやってみよう。
剣を握り、上に振りかざす。
頭の中で、剣を振った風圧で地龍を斬る。なんて妄想をしてみる。
……その瞬間だ。
「豪雨」「赤い部屋」「ノブのない扉」「無風」「インコ」「阿修羅」「人形」「真っ白い太陽」「幼い少年」「スマホ」「血」「神社」「トリカブト」
なんの関連があるのか分からないイメージ、激しい頭痛と共に、忘れていたことを思い出したような感覚がいっぺんにやってくる。
「大丈夫ですか王子!」
「今日ちゃんしっかりしろ!」
騎士やレイナの声が聞こえてくる。
頭痛が収まると、ヘンゼルはゆっくりと立ち上がった。
先程まで倒れていたというのに、今までにないほど清々しい気分だ。
らいとの言っていたチート能力。使い方が分かったのだ。まるで、生まれた時から当たり前にできていたことのような、そんな感覚だ。
「もう大丈夫だ」
騎士に、そして自分に言い聞かせる。
「さあ地龍」
ヘンゼルは鋭い眼差しで空を睨む。
「反撃させて貰うぞ!」
空中に向かって剣を振る。すると、ヘンゼルの思い描いたように風圧が刃となり、空中の地龍に見事当たったのだ。
「おおおお!」
「王子、今のは!?」
「やっぱできるだろ!」
地龍にも何が起こったのかわからなかったらしく、切り傷の入った左前脚とヘンゼルの姿を何度も見返している。
「どうした地龍。驚くのは早いと思うぞ?」
地龍の理解が追いつかないうちに、ヘンゼルはもう二回、剣で空中を斬った。それは地龍の両方の翼に当たり、右の翼が切断された。飛行を維持出来なくなった地龍は真っ逆さまに落下し、頭から地面に叩きつけられた。
「いやいやいや。流石にやべえわ」
レイナでも予想しなかった事態に、地龍はまだ驚いている。
「地龍よ。お前が地龍としての
ヘンゼルは地龍の首元に近寄った。
「人語を理解できるなら覚えておくといい」
剣を構え、地龍の首に向かって大きく振りかざす。
「もう覚えてもしょうがないがな」
そして地龍の首は完全に胴体から切り離され、ゆっくりと目を閉じ絶命した。
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