合流

 レイナだからこそわかる。

 今日はエンジンの調子がいい。

「冗談抜きで、これから戦うドラゴンの情報をくれ」

『私ハ情報通信ノ可能ナAIデハナイノデ詳シイ情報ハ分カリマセン』

「有用なのか無意味なのかわかんないなマジで。せめてドラゴンがどういうやつか教えてくれよ」

『ソレガ物ヲ頼ム態度デスカ?』

「……教えてください」

『ショウガナイデスネエ』

「人工知能ってろくなもんじゃねえな!」

 レイナは怒りに身を任せてハンドルを思いっきり握った。意図せず鳴ったクラクションはドラゴンに聞こえてしまったかもしれない。

『ドラゴンハ主ニ四種類ニ分類サレマスガ、イズレモ生物ノ中デ随一ノ魔力を持チ、火竜ハ火魔法、水竜ハ水魔法、地竜ハ光魔法、闇竜ハ闇魔法ニ特化シテマスガ、コノウチ地竜ノミ飛行ガデキマセン』

「しかも地竜なのに光に強いのな」

『名前ノ由来ハ飛ベナイ事カラト言ワレテイマス』

「他には? これから戦うかもしれないからちゃんと知りたい」

『ドラゴンノ中ニ、伝説級ト呼バレル程ノ力ヲ持ッタ個体ハ、龍トナリマス』

「それ、文字変わっただけじゃねえの?」

所謂いわゆる、カッコヨサノ問題デス』

「そんな事で重要なモンスターの呼び方変えるんだ」

 レイナはこの世界の情報を知る度に、この世界に呆れてしまっている。

 らいとだった頃はよく異世界アニメを見ていたため、その中で生まれた期待がこの世界と合わないのだ。

「……お?」

 少し車を進めたところに、人影の集団が見えた。ドラゴンの姿はない。

「ガルルンバ。なんの集団かな?」

『王子一行ノ可能性ガ高イデス』

「だよな! んでも、まだドラゴンと戦ってないのかな」

『マズハ合流スル事ヲ推奨シマス』

「だな!」

 レイナはアクセルを思いっきり踏んだ。

 人影の招待は、予想通りと言えば予想通りだが、狙いの王子はいなかった。

 皆、騎士の格好をしている。

「おい、あんたら騎士だろ?」

「……お前は?」

「私はアスキトレからの旅人、レイナだ」

「アスキトレから? 帝国に用があるならわざわざ我が国の領土に入る必要はなかったのではないか?」

「王子様に用があるんだ。ドラゴン倒しにこの辺来てるって聞いた」

「王子に……?」

 不安げな表情だ。女が一人で来たことを怪しく思っているのだろう。

「あんたら王子様と一緒にドラゴン退治しに来た騎士じゃないのか?」

「……そうだ」

「こんな所で油売ってて良いのかよ」

 騎士は皆見つめ合い、渋った顔で言った。

「お前に教えてもどうにもならない事は分かっている」

 おっと。そう来てしまったか。

 しかしレイナには、取っておきの秘策があった。無謀ではあるが。

「私もドラゴン退治に手を貸すよ。アスキトレ製の武器をいっぱい持ってきたからな」

 たまたま荷台にあった父の私物だが。

 騎士達は再び見つめ合い、頷いてみせた。

「わかった。話そう」

 聞けば、戦っていた地龍に魔法をかけられて騎士の一部が壊滅。その後地龍は自己回復の為この位置からも見える住処に逃げ戻り、特に体力の消耗が激しかった自分達を除いて皆、住処まで戦いに行ったというのだ。

「あれから一晩中戦っている。たびたび声が聞こえるから戦闘は続いているだろう」

「おーけーおーけー。話は大体わかった」

「我々も十分回復した。これより王子の援護に向かう」

「んじゃ、一緒に行くか」

「助太刀感謝する」

「良いってことよ」

 騎士を後部座席に座らせる。「女に頼んでも大丈夫か?」なんて聞こえたが、そんなのレイナ自身だって心配である。

「んじゃ、行くぜ!」

 レイナはこれまで以上の笑みを浮かべ、車を動かした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る