第85話 真里姉と女帝
王様と一緒に向かったのは、”メメントモリ”から少し離れた山の
「ここは”
「それも
「おそらくの。というのも、この洞窟は”メメントモリ”よりも
洞窟の前にはレギオスとカルディアの兵が並び、
その二つの列の間を、先に着いていたらしい
その顔が、一瞬だけこちらを向く。
揺れたヴェールの
「っ!」
それを見た瞬間、私は
私のことを心配するように、彼が視線を向けているのは分かる。
けれど、私はあの女性の姿が見えなくなるまで、どうしても目が離せなかった。
警戒とは違う。
多分これは、恐怖。
それも、どこかで感じたことのある…………。
女性の姿が洞窟の奥へと消え、王様も続いて歩き出す。
王様の後を追いながら、私はある物をこっそり彼に手渡した。
「これは……」
「君に持っておいて欲しいんだ。私では扱えないけれど、君ならもしかしたら、ね」
少なくとも、私より彼の方が扱える可能性は高いはずだし、何も無いよりはましだと思う。
いや、私がただ
まあ、どっちでも構わないか。
何事もなければ、それで良いのだから……。
洞窟の中は私の予想と違い、岩を
ごつごつした
その表面に
中に明かりらしい物は何も無いのだけれど、どうやら石自体がうっすら緑色の光を発しているらしく、進むのに困ることはなかった。
ただ
ちらっと後ろを振り返ると、それまで見ていた光景との違いのなさに
もしも王様とはぐれてしまったら、私一人では地上に戻れない自信がある。
最悪、空腹からの死に戻りでなんとかなるだろうけれど……。
「それにしても王様、よく迷わず進めますね?」
「これは王や、王に
王様の忠告に、私は激しく首を縦に振った。
そして進み続けること、数十分。
それは近付く程に明るさを増し、眩しさを覚える頃には広い空間が現れていた。
「うわぁ……」
その不思議な光景に、私はそれまで
空間の中央、そこには青く
「ここが”誓約の洞窟”の最奥。湛えられた水の形から”ラクス・ラクリマ”、”
「綺麗な場所ですね」
石灰岩のテーブルへと続く細い道を進むと、地面に突き立てた剣の
王様と共に近付き、互いの距離が2m程になった時、その目がすっと開かれる。
少なくとも美女の前に、
アイスブルーの長い髪は後頭部の少し上で
腰は驚く程細く、それなのに胸の豊かさときたら……。
思わず自分と見比べてしまい、私は
長い
「さて、そろそろ本当の狙いを聞かせて貰えるのであろうな、ヴィルヘルミナ・フォン・レギオス」
女帝の容姿に一切気を取られることなく、王様が
「
「
「我は戯れ言を好まない。
「なんだと?」
ちらりと私に向けられた、女帝の視線。
その視線はゾッとする程冷たく、人に向けていいものとは思えなかった。
「我の強さと比較する価値も無い
「ほお、
「我は事実を口にした。そして我に面白さなど無い、アレイス・ロア・カルディア」
弱者と言われても私は別になんとも思わないから、
私は自分を強いと思ったことはないし、相手は実力主義の国の頂点にいる人なのだから、私が弱く見えても仕方がない。
実際、大規模アップデートに
困り果てた私は、一つ気になっていたことを聞いてみることにした。
「そういえば、他のお二人はどこに行ったんですか? 洞窟に入る時は三人でしたよね」
私の言葉に王様も興味を持ったのか、女帝に向けられていた圧力が少し弱まる。
それを受け、女帝も圧力を
王様と私が答えを待っていると、
「我は知らない」
…………ん?
「でも一緒に入りましたよね、この洞窟に。知らないってことは……」
「我の後ろを歩くのは自由。我の弟と、弟の言う
いやいや、それで途中で姿を消すとか明らかに怪しいでしょう。
「お主それは……」
王様は何かを
そして王様が察した何かは、
最初に現れたのは、いや、聴こえてきたのは無数の足音。
それが入り口の方から響いてきて、やがて実体となり帝国の兵の姿になった。
先頭を歩くのは、私が
そして彼が率いる兵とは別の集団が、後に続いてきた。
その集団は装備もバラバラなら、兵とは違い
無理もないか、だって兵じゃないからね。
その正体は、帝国の冒険者。
そこには出来ればもう会いたくなかった、レオン達の姿もあった。
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