第82話 真里姉と彼と王様
取り
そして、本日二度目の
元々この小部屋は、他の人に見聞きされたくない患者さんのために、
そのため家具といえば二脚の
それが今、床には真っ赤な
丸椅子はクッション性のある素材を用いた、背もたれのある立派な物に、テーブルは木製の物から、植物を
誰がやったかは一人しかいない訳だけれど、その前に。
「……どうして王様がここにいるんですか?」
もし普通にホームの扉から入って来たのなら、私が不在であることをレイティアさんが伝えただろうし、そもそもこの部屋の
となると、王様は何らかの方法で
「城には、代々
そう言われてみると、部屋の
えっ、じゃあ最近感じていた揺れって、もしかして王様が地下を掘り進ませていたことによる影響?
「
『ハッハッハッ』と王様は笑っているけれど、ツッコミどころが多過ぎて、困っている私がここにいますよ?
まず、王都で評判になっているのは、この際いいとして、なんで
王様でしょう? いっぱい美味しい食べ物あるよね?
さらに言うと、そんな評判誰が王様の耳にいれたのよ!
もっと重要な情報が他にいっぱいあるでしょう!!
それからしれっと抜け道からこの小部屋に繋げたって言ったけれど、内装含め、私はそんな許可出していないからね!?
あと突貫で造らせたって一体どれだけかかったの!!
そんなお金があるなら王都の人のために、と思ったけれど税金じゃなく自費だから何も言えない!!!
それにこれを
「現状を受け入れたようだな。なら
お腹を押さえ少し
具体的にどこがと言われると良く分からないのだけれど、なんだろう、妙に引っ掛かる。
「……そこはちゃんと食べて下さいよ」
結局答えは出ず、部屋から出た私はクラン共有のアイテムボックスに
あの部屋の雰囲気に木製の食器は合わないだろうけれど、そもそも王様が家庭料理を食べる時点で、そんなギャップもう
小部屋に戻り、私は持って来たカスレをガラスのテーブルの上に置いた。
「どうぞ。王様のお口に合うか分かりませんけれど」
「
カスレを木匙で
ゆっくりと時間をかけて
「余はな、母を知らぬ。病弱ながら、民から
「王様……」
「そんな母を知らぬ、母の味を知らぬ余だが……なるほど、母の味とはこういうものなのだな。多くの民が、この味を求めるのも無理からぬことよ」
しんみりとした話に、私は思わずうるっときてしまい…………ん?
いやいや、私はみんなのお母さんではありませんからね!?
私が
その
「実に美味かった。では約束
そう言って王様がテーブルの上に置いたのは、対価というにはあまりにも額の大きいお金だった。
「あの、さすがにこれは貰い過ぎだと思うんですけれど?」
「お主の
「それにしても……」
正直、これまで
「全ては余の力が
「十分過ぎますから!」
私は思わず叫んでしまっていた。
「ふっ、無欲なことだ……知っておるか? お主が今、王都でなんと呼ばれておるか」
「すごく聞きたくないですけれど、後で
「
「あっ、やっぱりもういいです」
これ以上続けられたら、私はまた遠い、遠ーーーーーーい目をしてしまいそうだから。
「ところで、さっきから気になっておったのだが、そこにおる長身の男は何者だ?」
王様が、思い出したかのように彼について聞いてきた。
「私の新しい家族なんです」
「かかっ、家族だと!? オレは、お前と家族になど……なった覚えはない!」
「ちょっと素直じゃないんですけれど、可愛いでしょう?」
「確かに、不思議と
「オレの話を聞けっ! そんなことより、お前はこの国の王なのだろう? 何故、冒険者共を放置する! 冒険者共がいるせいで、あの
まるで何かに追い詰められたかのように、彼が王様に言葉を叩き付けた。
「お主の言わんとすることは、分かる。しかしその冒険者にはこのマリアも含まれることになるが……さてお主、それを
「それ、はっ」
「そしてお主も見たであろう。我らの中にも、良い
「……」
「その反応、どうやら気付いてはおるようだが、認められんといったところか。だがな? お主に宿るその
青年のような外見をしているけれど、
その言葉が本気だということは、王様の眼を見れば分かる。
そしてそのおかげで、私は引っ掛かっていた正体に気付くことが出来た。
彼を見ると、まさか自分の国の王様から
「その言葉は嬉しいですけれど、やっぱり私達に責任が無いとは思えません。ですから王様、彼の言い分も間違いではないのです」
「お前……」
「お主はまた、そうやって」
「それに、王様は私一人にと言ってくれましたけれど、それを今度は王様が一人で
クマがあることに、私が気付いたからかな?
まあ、気付けたのは
昔の母さんが同じことをしていた、それだけのことだから。
そう思ったら、
こんな酷い状態で、わざわざここに来た理由……。
カスレを食べたかったから、というのは理由としてちょっと弱過ぎるよね。
「私達に……いえ、ひょっとしたら私に、何か頼みたいことがあるんじゃないですか?」
「……お主、どうしてそれを」
「どうしてでしょうね? 私にも分かりません。ひょっとしたら、そんなスキルを覚えたのかもしれませんよ?」
今度は私が戯けてそう言うと、王様は『くはっ』と笑い声を
降参してくれて何よりだね。
それから王様が話をしてくれた内容は、けれど、私の想像を大きく超えるものだった……。
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