第79話 真里姉と彼とのお・は・な・し
背中と手足が、硬くて冷たい何かに触れている。
けれど頭の後ろだけ、柔らかくて温かい、何かに乗っているようだった。
それはどこか懐かしい感触で、きっと私が一番子供らしかった頃の記憶に繋がっていて。
『母さん……』
そう心の中で
あまりの
目覚めると、そこには心配そうにこちらを見詰めるレイティアさんの姿が。
「大丈夫ですか、マリアさん」
「レイティアさん……どうしてここに?」
起き上がろうとする私を、レイティアさんの手がそっと押し
「まだ起き上がらない方がいいですよ。かなり強い衝撃を受けたようですから。
その手にはさほど力が入っているようには感じられないのに、私は不思議と
再び頭の後ろに、あの感触が戻ってくる。
そっか、
現実ではもう二度と
うん、なんだろうね? この物凄いガッカリ感は……。
「それで、皆さんが付いていながら、どうしてこんな事になったんです? そして彼は一体何なのですか?」
レイティアさんの
ちなみに増していく倍率は笑顔度1に対し、オーラが4くらい。
つまり、とても怖い。
少しだけ首を動かし彼の方を見ると、椅子に座るというより、椅子に置かれた感じで、動く気配は無かった。
そんな中、またも説明責任を
「イベントのポイントで交換出来る対象に、マリアの家族を作ってやれるスキルがあったんだよ、ネロや
責任を感じているせいか、ちょっとばつが悪そうだけれど、私の不注意もあるからなあ。
だって【
なおも
「もういいですよ、レイティアさん。ありがとうございます」
「マリアさん……」
起き上がって状態を確認してみるけれど……うん、大丈夫そう。
あれ? でもそうすると、なんか変じゃない?
「なんでHPは減っていないのに、
「それは原則、パーティーメンバーからの攻撃ではダメージを受けないからよ。でも一部の
なるほど、そう言われてみればそんな事もありましたね。
確か、初めてマレウスさんとカンナさんに会った時かな?
色々あり過ぎて、なんだか遠い過去の事のように思えた。
「では、彼が今動いていないのは?」
「マリアさんが意識を失ったことでぇ、スキルの発動が止まったからですねぇ」
すかさず答えてくれるルレットさんは、やっぱり頼りになりますね。
最近、ちょっと子供化が過ぎていましたけれど。
……しかしこれ、どうしたらいいのかな?
まだ怒りの
おかしい、レイティアさんとお茶をする前までは姿を見せていた
もしかして私の
平穏の
うん、今度
ただ見付かるかなあ、平穏……。
はっ! いけない、また遠い目をしてしまうところだった。
3人にはレイティアさんが付いてくれている。
それなら……。
私は立ち上がると、彼の
「「「「マリア(ちゃん)(さん)!」」」」
叱る側と叱られる側だったにも
心配してくれてありがとう。
でも彼とは、【厄災の荒御魂】を
【モイラの
すると、最初に見た時と同じように、指先がピクリと動いた後、その顔が持ち上がった。
「おはよう。さっきは急に
少しだけ距離を置き、彼の眼と高さが同じになるように私は上半身を
彼の眼はネロや空牙とは違い
それが私達が彼等にした事の
「なっ、貴様はさっきの冒険者!」
彼は椅子を倒しながら勢い良く立ち上がると、
座っていた時でさえ背が高そうだと思ってはいたけれど、実際に目にすると、もっと高かった。
190cmくらいあるんじゃないかな……。
べっ、別に
「オレは貴様ら冒険者を絶対に許さんぞ!」
10cmくらい私にくれないかなあとか、そんな事思っていないからね?
……でも150cmあったら、小学生ではなく、中学生くらいには見られるようになるかな。
「オレに宿る
それは嬉しいかも、と一瞬思ったけれど、冷静な私が実年齢を考えろとツッコミを入れてきた。
すいません、嘘を
羨ましいです、身長あと20cmは欲しいです。
「おい貴様、聞いているのか!!!」
「ごめん聞いてなかった。どうかしたの?」
「…………」
あっ、
顔立ちが整っているから、その
向き合うと言いながらスルーしてしまったけれど、取り
全部受け止めていたら、心が
「君は私が
「貴様ら冒険者のような悪を
「悪は根絶やしかあ。じゃあその時って、かなり痛い?」
「当然だ! 想像を絶するような痛みを与え続け、最後は
「痛いのは現実でもう十分味わっているから、出来れば
「他などあるか! さっきから貴様、オレを馬鹿にしているのか!!」
「馬鹿になんてしていないよ? 君の希望を聞いて、それで私が
真面目に向き合っているのに、酷いなあ。
ちなみにマレウスさん、こっそり『
今は詳しくは聞かないけれど、忘れませんからね?
そして彼を見ると、どうやら私では相手にならないと思ったのか、まるで助けを求めるように周囲に目を向けていた。
むっ、
こんなに真面目に話を聞いてあげているのに。
彼が目を止めたのは、レイティアさんだった。
「オレを形作るモノが言っている。お前はあの街の人間だったはずだ。何故冒険者と一緒にいる! 何故
その声は
「確かに、冒険者の方に思う事が無い訳ではありません」
「ならっ!」
「けど、私を救ってくれたのも冒険者の方……いえ、マリアさんです。ライルを除けば、あの街で誰よりも直接的に私を、私達を助けてくれたのがマリアさんなんです。そんな
「だっ、だがっ!」
レイティアさんに、まるで
「そんな事よりマリアさん、そろそろ
そんな事扱いで、レイティアさんがぶった切る。
さすがライルのお母さん、子供の扱い方は
では私も遠慮なく乗っかろう。
「もうそんな時間でしたか。ではちょっと行ってきます。レイティアさんはどうします?」
「私はこの3人にもう少しだけ、
にこりと笑うレイティアさんに、震え上がる3人。
えっと、頑張って下さいね?
心の中で応援の言葉を呟いたけれど、それが誰に向けられたものだったのか、私にも良く分からなかった。
と、それよりもこっちだね。
「それで、君はどうするの? 自由に行動は出来るけれど、スキルの制限があるから、あまり私から離れられないよ? 私の姿を見るのも、声を聴くのも嫌なら、スキルの発動を解除してあげられるけれど」
「…………
「えっ?」
「貴様の行いを監視し、貴様が悪だと証明してやる」
「悪の証明かあ。大変そうだけれど、頑張ってね」
「なっ! 貴様はそうやってまたオレを馬鹿に!!」
歩き出す私の後ろで彼はまだ何か騒いでいるけれど、無視無視。
そんな事より、貴様ねえ……ふーん。
彼は気付いているかな?
最初は『貴様ら冒険者』とか、冒険者の一部として私を見ていたのに、貴様と言いながら、今は私個人を見ている事に。
その
*** お知らせ ***
日頃お付き合い頂き、ありがとうございます。
明日から長めの夏季休暇に入るため、次回投稿は22日になります。
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