第8話 エピローグ

 だんだん、狂った日常は戻っていた。泉は両親と話し合い、両親と仲直りすることができた。小雪も学校に馴染みすっかりクラスの人気者になった。

 年が明けて、泉たちは卒業し、それぞれ、進路を決めた。泉は医療の道へ。小雪は適当にアルバイトをし、三輪は教師の道を選んだ。

四月の桜の舞う駅前の広場は大勢の人々で賑わっていた。三輪は、待ち合わせスポットで有名な銅像でスマホの時計を見ていた。スマホの画面を消すと、

「おーい」

 と、聞き覚えのある声がする。

「遅いわよ、泉君」

「ごめん、ごめん」

「おはよ! 三輪ちゃん」

 泉の横で手を繋いでいる小雪が笑顔で言う。

「おはよ」

「さっ、早く行きましょ!」

 小雪は、二人の手を掴み走って行く。

「お、おい小雪!」

「ふふっ可愛い」

「行くわよー!」

 三人は走って行く内に自然と笑顔になる。

「ねぇ、このあとどうする?」

 小雪がカップジュースを飲んで言う。

「そうねぇ……特に行きたいところは行きつくしたのよねぇ」

「ほんと、ここ遊ぶ場所少ないよなぁ」

「そうだ、まだ時間あるし電車乗ってどっか行く?」

「おっ良いな」

「私電車乗るの初めて!」

「じゃあそうしましょ」

 三人は駅に向かって歩き出す。ホームに入ると、ちょうど電車がやってくる。小雪は小さな子供のように電車に乗り込む。

「わぁーこれが電車……!」

「小雪ちゃん、電車では静かに」

「はーい」

 三人は空いていた席に座る。小雪は流れる車窓に興味津々に見ていた。それを泉と三輪は笑顔で見ていた。

 数時間後、空は既に真っ暗だった。

「楽しかったー」

 小雪が駅前の広場で言う。

「時間も時間だしお開きにする?」

 三輪がスマホの時計を見ながら言う。

「そうだな」

「えぇー」

 小雪が残念そうに声を上げる。

「また一緒に行きましょ」

「うん!」

「じゃあね。泉君、小雪ちゃん」

「ああ。またな」

「じゃあね三輪ちゃん!」

 三輪は泉と小雪たちとは反対の方向へ歩いていく。それと同時に、ライトアップされた桜の花びらが風に乗って舞う。まるで、泉たちの新たな日常の始まりを祝うかのように。

 泉の狂った日常は、平和に幕を閉じたのでした。めでたしめでたし。

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幽霊と契約したら幽霊と闘うことになりました 星空青 @aohoshizora

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