第16話 二人のその後

 婚約ははじめから考え直すことになったが、二人の交際は続いていた。私は、大学入学を目指し勉強を始め、入試までの間響さんが時々勉強を見てくれることになった。そして猛勉強の甲斐があり、翌年の春大学生になることができた。高校を卒業してから勉強から遠ざかっていたこともあり、思い出すのが大変だったが、やれるだけの事はやり受験に臨んだ。


「はい、この問題やって」

「うーん。難しい」

「はい、十点。やり直して」

「ああ、教えてください」


 そんなことの繰り返しだったが、響さんの指導が上手だったのだろう、数校受けた中の一校に合格することができた。学費は、響さんのグループの奨学金を借りることになった。


「合格おめでとう。それと、合格したら言おうと思っていたことがある。まだ言ってなかったこと。正式に僕と付き合ってください」

「えっ、こんな私で、本当にいいの? あなたならいい人はいくらでも見つかるはずよ」

「そんなこと言わないで。君の事は旅をしてよく分かったから」

「すごく、嬉しい」

「めぐるといっしょなら、これからも色んなミッションに挑戦できそうだ。これからもよろしくね!」

「私こそ、響さんと釣り合わないと思って、自分を卑下していたみたい。少しだけ、自信が持てそう」

「僕の方こそ、いつも弱弱しいこと言ってて、嫌われちゃったかなと思ってた」

「これからはお互い余計な心配をするのはやめましょう」

「そうそう、僕の事だけ見てて!」

「わかってます!」


 響さんは、私のおでこにキスをした。暖かい気持ちが伝わってきた。


 その後私は大学を卒業すると同時に、結婚することになった。結婚式は私の誕生日に行われた。家族や友人、そして執事の早坂さんが参列してくれた。早坂さんは懐かしそうにミッションのことを振り返っていった。


「あんな真剣な響様を見たのは久しぶりです。まあ楽しそうでもありましたが。会長は、響様が真剣に何かに取り組んでくれればよかったようですね。婚約のことは正直冗談だったのではないでしょうか」

「あら、そうだったんですか?」


 私たちは必死だったのだが、お爺さんは本当に私たちが親しくなるとは、思っていなかったようだ。

 新居は、響さんの希望で、最初のミッションの家そっくりな、恐ろし気な雰囲気の家になった。響さんはときどき私を脅かした人形を取り出しては、にやにや笑っている。


 私は現在早坂さんのアドバイスの元、家事をこなしている。一方響さんは、お爺さんの会社で、一社員として働いている。あの時の小判は、今は金庫に厳重に保管され誰も取り出すことはできなくなっている。


 突然やってきた早坂さんの提案から始まった三つのミッションは、私と響さんを結び付け私の人生を大きく変えていった。

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奇妙な旅の招待状 東雲まいか @anzu-ice

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