第13話 仕掛け扉の中に

「食事が終わったら、一階の家具を開けてみよう」

「中に隠されているかもしれないわね」

「それに、仕掛けも気になる」

「食器棚はどうかしら?」

「入っている食器は、普通のものみたいだけど、扉は全部開くかな?」


 私は、食器棚の上の段を開けてみた。上の段はガラスが入れられていて、引き戸になっていて、すんなりと開いた。


「下の引き出しを引いてみよう」


 引き出しを、端から順に引き出してみた。四つあった引き出しはすべて引き出すことができ、中のスペースには、スプーンやフォークが入れられていた。


「これは、何の変哲もない家具だな。廊下はどうだろう?」

「ここにベンチがある」


 ベンチは木製で、椅子の部分には収納できるスペースがある。


「どうやって開くんだろう?」


 響さんは、座ってみたり、あちこち触って試してみたがびくりとも動かなかった。


「もう一度入ってきたところから見てみましょう」


 玄関のげた箱の上にも小箱がいくつか置いてあったはずだ。私は、箱を回したりひねったりして一つ目を開けた。同じような箱が十個近くも置いてあった。響さんも箱と格闘していたが、次第にコツがつかめてするすると動かせるようになっていた。開け方の異なる箱をほぼ開け終わったところで、中から小さな紙切れが出てきた。

(書斎へ行って、机の引き出しを開けなさい)


「この指示に従って開けていけば……」

「そうか、最後に小判の隠し場所にたどり着けるかもしれない!」

「いきましょう!」


 書斎には、様々な木製の家具が置かれていた。


「真ん中に一つと、右側に四つある」


 初めに真名の抽斗を引っ張ったが、動かない。次に右側の一番上の引き出しを開けると、中に小さな紙切れがあった」

(二番目の引き出しの左側を触ってみろ)

 響さんが手を中に入れ探ってみると、取っ手のようなでっぱりがあり、それをいじっていると、真ん中の引き出しが動いた。そっと力を加えると、前にスライドした。


「動いた! 引き出しの中に開けるための仕掛けがあったのね」

 

 引き出しの中には、またもや紙切れが入っていた。

(チェストを開けなさい)

 二人で、チェストの引き出しをいじり、またもや引き出しの中の仕掛けをスライドさせてすべて開けると、最後の引き出しの中に紙が置かれていた。紙には椅子を開けるように、次に本箱を、次に戸棚を開けるように指示があった。


「いくつ開けさせるつもりなんだ?」

「まだまだ家具はありそうです」

「次は戸棚か……上に四か所の開き戸がある。下には引き出しがある」

「また引き出しから、引っ張りましょう」


 私は、ひとつづつ引き出しを開けていった。三つ目まではすんなり空いたのだが、最後の一つが引っかかっていて出てこない。


「今度はここか」


 響さんはほかの引き出しに手を突っ込み、中を探っているが何も変わったところはないようだ。


「どの面も変わったところはない。メモにはなんて書いてあるんだっけ?」

(次は戸棚を開けなさい。開ける順序が重要だ)


「ヒントが書いてあるわ!」

「そうか、開ける順序。じゃあほかの三つの引き出しを開ける順序か?」


 一、二、三と数えながら三つの引き出しを開けてみたが開かない。


「三か所だと六通りある」

「じゃあ、上の扉の順序なんじゃない?」

「よし、やってみよう」

「できるかしら、何通りあるの?」

「四つあるから、四×三×二通りだ」

「へえ、すごい」

「普通でしょ? 全部で二十四通りある」

「私、頭悪いからわからなかった」

「そうか……」


 これは、一つ一つやってみるしかないので、順番を変え何度も開けてみた。するとやはり下の引き出しが開いたのだ。そして引き出しの中には、


「鍵がある!」


 二人同時に叫んだ。


「メモもあるぞ!」


 響さんがメモを手に取る。

(これは金庫の鍵だ。金庫はクロゼットの中にある)


「ようやく見つかった」


 クロゼットには仕掛けがなかったので、そのまま扉を引いて金庫が現れた。響さんが、鍵を差し込みまわすとカチッと錠が外れる音がした。重い金属の戸を開けてみると、中には、布の袋が見えた。袋は重く、巾着を開け一枚小判を取り出した。楕円形の小判は金色をしていた。


「響さん、やったーっ!」

「見つかったね。ドキドキした」

「私も、ほっとしました」

「めぐるさんと見つけた最初のメモがカギだった。ありがとう」

「響さんが頭がいいからです。響さんの力です」

「早速爺さんに連絡しよう」

      

 響さんは、小判を元通り金庫に戻し鍵をかけ、会長に電話した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る