第282話 最後のお別れ

 祭壇場は真莉愛マリアと僕を残し静まり返った。

 

 お香の匂いだけが鼻孔へ漂ってきた。



「あのォ~…… マ、真莉愛マリア……

 僕も、そのォ」

 遠慮した方が良いのだろうか。



「フフゥン……、良いわ……

 これが佑真カレとの……

 しっかりユーマの目に焼きつけておいて」



「ハッ、ハイ……」僕は頷いた。

 


 真莉愛マリアは、ゆっくりと佑真の棺に近寄っていく。



 棺の前に立つと、かすかにドライアイスの白い水蒸気があがった。




「佑真……」

 マリアが彼の遺体を見つめ小さく呟いた。



 大きな彼女の瞳が涙で潤んでいる。

 軽く鼻を啜った。



「……😓💦💦💦」見ている僕も息が詰まるような気分だ。



 真莉愛マリアがゆっくりと唇を寄せていく。





 最後のキスをした。




 長い口付けだ。



 今生こんじょうの別れになるのだろうか。




 これで、もう二度と渡瀬佑真と会うことはないのだろうか……








∠※。.:*:・'°☆∠※。.:*:・'°☆∠※。.:*:・'°☆


 

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