第274話 葬儀場

 僕らは喪服に着替え、タクシーで渡瀬家へ向かった。



 さすが名門の渡瀬家の葬儀だ。


 市内で最も大きな葬儀場で、しめやかにいとなまれていた。



 駐車スペースにタクシーを停め、僕らは葬儀場へ降りた。



 深夜にも関わらず、葬儀場の前は多くの来客がいる。



「ふゥ~ー……」僕も深呼吸をした。



 葬儀場を前にすると緊張からか、かすかに全身が戦慄わなないた。




 だが僕だって男性おとこだ。

 真莉愛マリアに啖呵を切った手前、ここでシッポを巻いて逃げ出すワケにはいかない。



「怖かったら、ユーマは、ここで待ってても良いわよ……✨😌✨✨」

 真莉愛マリアは微笑みを浮かべ忠告した。



「え……、そ、そんな、関係者と揉み合いになったら僕がガードしますよ」

 いくらなんでも葬儀の場で刃傷沙汰や殴り合いにはなるまい。



「フフ…、ユーマのクセに……

 生意気ねぇ」

 

「ええ……、真莉愛マリア様と一緒だと災難続きですよ」

 まったくトラブルメーカーだ。

 



 こんなに年柄年中、トラブルに見舞われたら、命がいくつあっても足りない。



 だが、平穏無事だったこれまでの人生で、もっともスリリングでたのしい。



 まるでアトラクションシティに迷い込んだように興奮してくる。




「じゃ、行くよォ❗❗❗」

 気合いを入れ真莉愛は葬儀場へ足を踏み入れた。


「ハ、ハイ……😓💦💦」

 僕も気を引きしめて後ろから従った。






∠※。.:*:・'°☆∠※。.:*:・'°☆∠※。.:*:・'°☆

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