第90話 田山イズミ

 公園の街灯に止まったひぐらしが『カナカナカナ……』と哀しそうに鳴いていた。



「だって…… 俺、バレンタインのチョコも女子から貰った事がなかったから……」

 


「ありがとう…… あの時、アキラ君が庇ってくれなきゃ、私はずっととして心に刻んだわ……」

 哀しそうにみを浮かべた。


「そんなだいそれたモノじゃないよ」

 微笑んで首を振った。



「でも、あそこでアキラ君がかばってくれた事で、私は救われたの」

「救うなんて…… 烏滸おこがましい」

 ただいやしくてチョコが勿体なかっただけだ。



「私は……、それからひそかにアキラ君の事を追いかけたの……」

「え…… オレを」



「フフ…、キショいわよねェ。

 まるでストーカーみたいで……」

「いや、別に…… 俺なら良いけど」



「ッで、わかったの……❗

 アキラ君は口が悪いけど優しくて正直な人ッて事が❗❗」

「フフ…… そうかな」

 照れ笑いを浮かべた。



「ずっと見てて、そう思ったわ……」

「はァ~……😳💦💦」大きな瞳で見つめられると頬が火照って紅くなった。



「それから…、私は高校へ進学すると同時にアメリカへ留学したの…… 

 そこで整形をしたのよ」

「うン……」



「何回も…… 気に入るまで

 アキラさんに認めて貰って……

 愛されるように……」

「認めるなんて…… 大袈裟だよ」



「そして…… 夏休み前、アキラさんが婚活で、マッチングアプリに登録している事を知って……

 私も同じアプリに登録したンです……」

「うン……」多少、驚きを隠せない。



「一歩間違えば……いいえ、もう完全にストーカーですよね。怖いでしょ」



「いや、エリカさん…… 

 ううン…、田山イズミさんなら構わないよ」

 好きな彼女ならストーカーされても構わない。





 ∠※。.:*:・'°☆∠※。.:*:・'°☆∠※。.:*:・'°☆

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