第74話 ニートは働いたら負けなの

 ようやく日がかげったモノの気温は三十度を下回る事はない。



 今夜も寝苦しい熱帯夜だ。



 汗まみれになって僕が炊事、洗濯、風呂掃除をし、部屋へ戻るとクレオは、まだベッドに寝転がってスマホで遊んでいた。



「おい、クレオ❗❗ お前、いつまで遊んでンだよ……」


「ン……、ああ、お風呂は❓」

 スマホに掛かりっきりで僕の方を見ない。



「え、風呂なら掃除して、今、沸かして来たよ」


「何よ…、もっと前に掃除しなさいよ。

 ったく…、気がきかないわねェ……」

 こっちを見もしないでクレームだけつけた。



「くゥ~ー…、そんなに風呂に入りたいなら自分で掃除しろよ❗❗」

「何、言ってるのよ❓ クレオちゃんは現役バリバリのプロニートなのよ」



「な……、ど、どんなプロニートだよ。

 現役バリバリッて…… メジャーリーガーに使ううたい文句だろ」



「フフゥ~ーン……、プロニートは、家事や雑事など一切、働かない事をコンセプトに作られた画期的なお仕事なのよ❗❗」

 鼻で嘲笑った。


「どんな仕事だァ~~ー……❗❗ 

 そりゃァ~ー、仕事じゃねェだろ…❗❗」



「よく覚えておいて、ニートは働いたら……なの❗❗」

 

「なんじゃそりゃァ~ー❗ 負けッて、誰と何を争ってンだよ……❗❗」

「クレオは、誰にも負けたくないの❗❗

 だから、のよ❗❗」



「どんなしょーもないバトルをやってンだァ~~❗❗」

「わかったら、暇つぶしに、何か『スベらない話』でもしてよ❗❗」



「はァ~…… 何で、僕がクレオのために『スベらない話』をしなきゃならないンだよ……」


「じゃ、代わってクレオちゃんが話をするわ❗❗ ついてらっしゃい❗❗」

 クレオは僕の腕を引き外へ引っ張り出した。


「え……❓❓ おいおい、何処へ連れて行く気だよ」

 その時、花火の音が響いた。

 そう言えば、今夜は花火大会だ。



 念のため風呂を消して、僕らは花火大会へ出掛けた。

 



 

 ∠※。.:*:・'°☆∠※。.:*:・'°☆






 僕らは歩道橋の上から花火を見上げた。

 

 

 辺りには子連れの家族も見物していた。


 派手に花火が舞い、ドォーンと大きな炸裂音が腹まで響いた。



「ねぇ、覚えている❓ 『七夕祭り』の時の事を……」


「え……、『七夕祭り』ッて❓ 平塚の」


「そゥ……」

 クレオは、『七夕祭り』の思い出話しを始めた。




 ∠※。.:*:・'°☆∠※。.:*:・'°☆∠※。.:*:・'°☆

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