第75話 七夕祭り

 僕が小学六年生の時、早朝、不意に隣人のクレオの家族から誘われ、平塚の『七夕祭り』へ行った。



 クレオのパパの運転する高級自家用車でだ。


 クレオ以外あまり馴染みのない家族旅行へ帯同する形だった。



 ただでさえ人見知りなのに車の中は、ギスギスしていて、針のムシロのような感じだった。



 平塚へ着くと歩道の両側のアーケード街を色とりどりの笹が飾られてあった。



「あの平塚の七夕祭りが、パパとママとで行った最後の家族旅行だったわ……」

 クレオは瞼を閉じて、感慨深げに呟いた。




「え…、ああ…、そうか……」

 あの七夕祭りへの旅行の後、クレオの両親は離婚し、夏休みが終わるとクレオは母方の実家へ引っ越して行った。



「パパは、若い秘書と不倫をしてたのよ……」



「ン…、そ、そう……」

 僕もクレオの両親が、かなり前から揉めていたのは知っていた。


 あの旅行の際も夫婦の二人は終始無言だった。


「あの時、みんなで短冊に願い事を書いたの…… 覚えている❓」


「ああ…… そうだったかな」

 静かに僕は頷いた。短冊に何か書いた事は記憶にあった。



「トモローは、何て書いたの❓❓」


「え…… そうだな。僕は、別に普通の事だよ。成績が上がるように…… とか」

「ふゥ~ン…… クレオちゃんの事は❓」

「え……😳💦💦 ああ、なンか書いたけど」



「クレオちゃんは、ねェ……

 パパとママが仲良くなるようにッて……」

「あ、そうか……」

「家族が、バラバラにならないように……

 とかね」



「うン……」彼女なりに考えていたのだろう。


「あと…… 友朗トモローのお嫁さんになれますようにッて、書いたわ❗❗」



「え……❓❓」







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