第65話 『婚姻届』

 しかしスマホ代金が無料になるから結婚するなんて、聞いたためしがない。


 そんなのは、単にオプションのひとつに過ぎない。



「うゥ~……😓💦💦」

 僕は、ただ唸るばかりであきれて返す言葉もなかった。



「さ、解かったら友朗トモロー……❗❗

 早くサインしてよ❗❗」

 クレオは、しきりに『婚姻届』をトントンと指先で叩いて催促した。


 初めはジョークかと思ったが、どうやら本気らしい。



「ちょッ、ちょっと待ってよ……😔💦💦

 いきなり『婚姻届』にサインなんて……」

 予期せぬ、不意討ちだ。


「ンゥ~…、待たないわよ❗ もちろん待たないわ❗❗❗

 クレオちゃんは待たされるのと前戯イントロもなしに、いきなり合体ジョイントライブをあおって来るヤツが大嫌いなの❗❗」


「いやいや、どんなハードバイオレンスな合体ジョイントプレイだよ…😓💦💦💦」 

 

「さァ~……、解ったら、とっととサインしなさい❗❗」

 また催促した。



「だから、全然、解らないッて……❗❗

 お前こそ結婚するって何をするのか、解っているのか❗❗」

 こっちは、絶賛婚活中なので願ったり叶ったりなのだが……。


 こんな形で婚活が成功するのは、あまりにも不本意だ。


 もっと愛し合ってから結婚するモノだろう。



「フフ…、もちろん解っているわ。結婚ッて言うのは、友朗トモローしものお世話をする事でしょォ~ー……❗❗❗」


「はァ~……、どんな老人介護だよ❗❗❗

 この歳でしもの世話になんてなるかァ~ーー❗❗❗」

 全くアホらしい。


 それから小一時間あまり押し問答があった。

 


 しかし、これ以上、揉めても僕には何もメリットがない。




 結局、渋々、『婚姻届』にサインをした。






 こうして後日、この『婚姻届』を提出し、僕とプロニートを名乗るクレオの波瀾万丈な新婚生活の幕が切って落とされた。







※。.:*:・'°☆※。.:*:・'°☆∠※。.:*:・'°☆※。.☆

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