第53話 真莉愛《マリア》様……😆🎶✨

 そうだ……


 やっと思い出した。



 あの夏の日、お嬢様と日傘を差した母親らしき女性二人が海岸線を散歩していた。

 山の方からセミの声が聴こえた。



 その時、強い突風が吹いた。

『キャァ~ーーッ』

 美少女の悲鳴がしたので、見ると真っ白な帽子が強い風に舞い、波間に落ちていった。



 お嬢様は、すぐに帽子を追いかけようとしたが母親に止められた。



『離してェ~、だって、あの帽子は……』

 美少女の泣き叫ぶ声に突き動かされ、少年だった僕は服を脱ぎ捨て夢中で海に飛び込んだ。



 波間に沈む寸前、僕は帽子を拾いあげた。

 そして岸辺で待っていたお嬢様の元へ帽子を送り届けた。

 


 あれは、今から十年前の夏の出来事だ。





 ∠※。.:*:・'°☆ノ∠※。.:*:・'°☆※。.:*:・'°☆





「まさか……」

 あの時の清楚なお嬢様が織田 真莉愛マリアだったなんて……



 信じられない。




「帽子なら…… いくら高くてもまた買えるけど……

 ママと一緒に買ったあの帽子はから……」

「え……」……

 まさか……

 それじゃ……




「そう、あれから間もなくママは倒れて……

 帰らぬ人になったの……」

 つらそうに目を伏せた。



「ううゥ~…… そんな……」言葉もない。


 また遠くで子供たちの騒ぐ声が響いてきた。



「あの時は、何も言えなかったけど……」

 真莉愛マリアの大きな瞳が涙でうるんだ。


「ありがとう……👄✨💕 ユーマ」

 真莉愛マリアは僕に抱きついた。



「いや、べ、別に……😳💦💦」

 僕は首を横に振った。


 礼を言われる事でもない。

 当たり前の事をしただけだ。

 


真莉愛マリア様……

 僕、真莉愛様の事が好きです……❗❗」

「フフ…… 生意気ねぇ。ユーマのクセに」




 見つめ合いながら、どちらからともなく僕たちは微笑み、唇を重ねた。



「おおォ~ーー😆🎶✨」その瞬間、周辺で観ていた子供たちがどよめいた。


 


 抜けるような青い空にポッカリと白い入道雲が浮かんでいた。





 真夏の【婚活サバイバル】は、まだ第一ラウンドのゴングが鳴ったばかりだ。



 


 第二ラウンドへつづく……






∠※。.:*:・'°☆∠※。.:*:・'°☆∠※。.:*:・'°☆∠※。.:*:・'°☆ノ∠※。.:*:・'°☆ノ∠※。.:*:・'°☆

 

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