第33話 佑磨

佑磨ユウマよ……」

 静かに、真莉愛マリアつぶやいた。



「え、あ…、ハイ……」僕は小さく頷いた。

 おそらく真莉愛マリアの大事な彼氏なのだろう。イケメンと美女だ。

 さぞかし似合いのカップルだったに違いない。


 しかし容態が思わしくないのは、ひと目見て歴然だ。


「私の…… ただひとり愛した人……」

 いつになく優しい眼差しだ。

 心なしか、大きな瞳が潤んでいた。


「はァ~……」なんと声を掛けて良いか、解らない。

 真莉愛マリアは、ゆっくりと彼の手を握った。

「こうしていると、すぐにでも、『あ~❗ 良く寝た』ッて起き上がってきそうでしょ」


「ええ…、そ、そうですねぇ」確かに……

 

「フフ…、彼ッたら、ひどいのよ」

 哀しそうに、真莉愛マリア微笑ほほえんだ。

「え……❓」


「恋人の私をったらかしにして……

 二年も寝てるの」

「はァ…、二年もですか……」そうか。

 やはりずっと植物状態なのだろう……


「こんな良い彼女おんなほうって……」

 かすかに声が震えた。顔を伏せ、ひとしずくの涙がこぼれた。


「……」僕は掛ける言葉も見つからない。


「佑磨は、暴走車から私をかばおうと身を犠牲にして、事故に遭ったの……」 


「え……」庇おうとして事故に……


「おかげで、彼の家族には怨まれるし……

 『佑磨を返せ❗❗ この人殺し❗❗』

 とか……

 ッたく、散々よ」


「……」そうなのか……

 うつ向いたまま僕には応えようがない。




 ※。.:*:・'°☆∠※。.:*:・'°☆ノ∠※。.:*:・'°☆

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