第9話 真莉愛《マリア》様

 どんなにフルスピードで自転車ママチャリいでも、ものの数秒では駅まで着けない。


 第一、ママチャリなので思ったほどスピードが出ない。時速三十キロも出ればおんの字だ。


 それでも出来る限り早く喫茶店へ急行した。



「はァ~……、はァ~……😔💦💦」

 息を切らして喫茶店へ辿たどり着き、キョロキョロと店内を見回した。



 まだ昼間の二時過ぎなので客もまばらだ。


 店内には、流麗なピアノ曲が流れていた。ショパンの『別れの曲』だ。



「ン……❗❗」

 奥の方で真莉愛マリアが腕を振り上げ手招きした。



「おォ~ーい❗❗ ユーマァ~ー…😆🎶✨

 こっちだよ❗ こっちィ~ーー❗❗❗」

 ただでさえ派手なピンクゴールドの髪の毛なので、目立つ事この上ない。店内の全員が彼女を注視した。



「あ…、ど、どうも……😳💦💦」

 僕は店員や客の好奇の視線にさらされ、苦笑いを浮かべた。


 注目されて恥ずかしい。顔が真っ赤だ。

 ペコペコと頭を下げ歩み寄った。



『彼氏かしらァ~……❓❓』

『えェ…… 違うでしょ……』

 店内の客もザワザワと陰口を叩いていた。


 言いたいことは良く解かる。

 真莉愛マリアの彼氏が、僕では明らかに『ミスマッチ』なのだろう。



「遅ッせェ~よ…… ッたく、ユーマのクセに❗❗ 何時間、待たせるンだよ…… 

 放置プレイか❗❗❗」

 いきなり僕へのダメ出しだ。


「い、いや放置ッて、どんなプレイですか…

 何時間も待たせるはずないでしょ。

 今さっき呼ばれたばかりじゃないですか」

 仕方なく僕は真莉愛マリアの正面に腰を下ろそうとした。


「バァ~ーカ❗❗ こっちに座れよ❗」

 だが、彼女は隣りへ座らされようと強引に腕を引っ張った。


「わァ~ー😲💦💦💦」突然、腕を引っ張られたので僕はバランスを崩した。

 思わず、真莉愛マリアの柔らかな胸の膨らみへ顔面から突っ込んでしまった。


「キャァ~ー😆🎶✨ 何をやってンだよ」

 彼女はたのしげに悲鳴を上げた。


「おおォ……😲💦💦💦」

 一斉に、店内の客たちがザワめいた。



「ち、ち、ち、違うンです……😳💦💦💦」

 慌てて僕は座り直し激しく首を横に振った。

 濃厚な香水の薫りに目がくらみそうだ。


「はァ、何が違うのよ❗ ユーマのクセに、いきなり会った途端、オッパイに顔面かおを突っ込んで、どんなプレイだよ❗❗」



「べ、べ、別に、プレイじゃありませんよ。

 真莉愛マリア様が急に腕を引っ張るから…… バランスを崩して」

 なんとか言い訳をしないと痴漢で補導されてしまう。店内の視線も冷たい。



「何よ。それじゃ、まるで真莉愛マリアが無理やりオッパイに顔を突っ込ませたみたいじゃン……」



「そ…、そういうワケじゃないですけど……😳💦💦」

 生まれて初めてオッパイに顔を埋めて顔が真っ赤になってしまった。



「じゃ、そう言う事で、ここのお勘定、頼んだわ❗❗」

 不意に、伝票を僕の前に置いた。

 テーブルには食べ終えた皿が並んでいた。



「え……❓❓」お勘定ッて……

「な……、何、それ……❓❓」


「何それッて、何だよ…… まさか、タダでオッパイに顔面かおうずめられたと思ってるの❓❓」

 上から目線で睨まれた。



「え、いやいや、あのですねぇ……

 それは不可抗力と言うか」

 だが、言い訳もままならない。



『フフ……』

 店内の客らは興味津々に僕らのやり取りをうかがっていた。



「わ、わかりました。払いますよ……」

 他の客の手前、これ以上、店内で揉めても僕には不利になるばかりだ。



 仕方なく僕がここの代金を支払うことにした。






 ※。.:*:・'°☆∠※。.:*:・'°☆∠※。.:*:・'°☆

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