第12話 遊夜の会(友家の開)參
「ただいま」
ドアを開けたらさなちゃんが立っていた。もしかして、ずっと待っていたのか……?そして、頬を膨らませてこちらを見ていた。頬の中に何が入っているのか聞きたかったがあえて無視をした。つんつんしたら割れますよと言っているものだ。
「翠くん遅い!そして彩華ちゃんも!」
泣きながら怒ってきたさなちゃんにちょっと驚いた。何故、そこまで怒るのかが分からなかった。
「色々と喋ってたから長くなったんだよね」
「えええー!!彩華ちゃん!何聞いたの!!教えて!二人だけずるいよっ!」
さなちゃんは真剣な顔で何か慌てたような表情で彩華ちゃんの肩をバシッと持ち前後に振る。
「……教えないよ。翠くんとの秘密」
……おい。地雷を踏むようなことをするな。
もう地雷を踏んだのか――ぼくは肩を竦めてさなちゃんの方を見たら今から泣きますよと言わんばかりの状態へとなっていた。
ぼくはため息をした。
「……そこまでの話でも無いよ。彩華ちゃんが盛っただけ。さなちゃんにもいつか言うよ。安心して」
ぼくは靴を脱ぎさなちゃんを通り越しリビングへ向かう。
その時さなちゃんが「本当に?」と言う。ぼくは振り向かずうんと頷く。
そして、さなちゃんが後ろから抱きついて来てさなちゃんの右腕がぼくの右肩へ。左腕が左肩を通りギュッと抱きついて来た。
ぼくの心臓はドクっと動き始めた。
ドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンと何度も何度も口説く鼓動が鳴り、いつも以上に高鳴る。
こんなぼくでも異性に抱きつかれるのはものすごく弱い。多分、こんな欠陥なぼくでもなるなら駿我や出澄もなるだろう。
そして、さなちゃんはぼくの耳元で呟いた。
「……ありがとう……翠くん……」
と言いさなちゃんはぼくから離れ庭の方へと走って行った。
「………………」
ぼくは少しばかし沈黙した。
高鳴る心臓を抑える。
「ふぅ……」とため息を吐き、彩華ちゃんがこちらへ歩いてきた。
「分かったでしょ?さなちゃんが翠くんのことを好んでいる。好意を抱いているてことを。翠くんが来てから、彼女は変わったわ……本当に」
彩華ちゃんの瞳には、なにか悲しげに映っているように見えた。
それは走っていく彼女を見ての悲しみなのだろうか、それとも自分自身への悲しみなのだろうか。ぼくにはわからなかった。
それはぼくが来たことでさなちゃんが変わり、変わったせいで周りに迷惑を掛けて自然に、ごく自然に気づかずに飄々としていたと言うわけか。
またいつか聞けることを念じて、今日はパーティーを楽しむことにしようと思った。
彩華ちゃんはさなちゃんが走って行った方へ向かいぼくは相槌を打つ。
「……そう、だね……」と言い、足を止めて立ち止まった。
初めて会った時から変わったように見える。今の今まで気づきもしなかったが彩華ちゃんに言われて気がついた。
単純にぼくが鈍感で愚鈍で無神経で無感覚なだけで決して欠陥している訳ではない。と言いたいけれど多分……欠落はしているであろう。
止めてた足を進ませ庭へ向かった。
あれからまた何時間も経ちそろそろお帰りの時間だろうと思えてきた時。そして、約二時間ちょっとが経った。と、そのとき駿河は唐突にぼくのことを聞いてきた。
「そう言えば翠、前の学校はどうだった?」
「…………」
ぼくはそっぽ向いた。
そして、沈黙して俯く。前の学校か……。嫌な響きだな。そして少し前の学校のことを思い出した。
「駿我」
出澄が駿我の肩に手をポンとやり首を横に振った。
「悪い……」
「悪いな、翠。駿我はこういう奴だけど悪いやつではないから気にしないでくれ」
出澄は駿我をフォローしたが、ぼくにとってはどうでもいい、誰にだってミスはある。失敗については何も言わない。
「うん。……悪い人には見えないよ」
彼らはぼくの方を見た。何か寂しいように見てきた。そして目を逸らす。
寂寥感に埋まった。
「…………、」ぼくがいて本当にごめんなさいと思った。
「…………、」この空気をよく作ってしまうこのぼくにぼくは堕ちてしまった。
「――そうだ!」
沈黙の中先手を取ったのはなっちゃんだった。そして両手でパチンッと鳴らす。
「ねぇっ!記念に写真撮ろうよ!」
ぼくにはなんの記念なのかはわからず適当に相槌を打つ。
「いいね。撮ろうぜ。翠も来いよ」
駿我はぼく呼び、頷いた。
「うん」
ぼくは駿河の方へ寄った。
六人全員集まり、なっちゃんはカメラの位置を合わせる。
「よっと、よーしいくよー」
全員が全員画角の中へと入る。
なっちゃんは準備はOK?と言う比喩表現をしカメラに向かって「せーの!」と6人全員が同時にピースをした。そして、カシャッと言う音が鳴り響いた。
なっちゃんはスマートフォンの画面を弄り写真を確認する。
「いいね!みんなイイ笑顔してるねっ!」
さなちゃんがハニカムように笑っていた。
「そう言えば、LINE交換しようよ!」
なっちゃんは言ってきた。
「ああ、わかった」
全員とLINEを交換してなっちゃんにグループ招待され、参加した。さっき撮った写真をグループに貼る。
そして、ぼくは先ほど撮った写真を見た。
なんか悪くないと思った。思ってしまった。
さなちゃんのほうに目を向けるとさなちゃんは俯いていた。
ぼくの名前を見て俯いていた。
「…………」
ぼくはさなちゃんが俯いてたのを見て沈黙した。
あー、そういうことかぼくはさなちゃんに悪いことをしたんだと今思った。
これは、ぼくが招いたものでも有り、招いたものでも無い。因果の誤りによって現れた時間。それを時間傾向、バックノイズ、またはバックノグラ。
因果からは逃れないし、避けられない。
そして、その後。
ぼくたちはやる事を終え、帰る時間がやって来て皆が皆帰る支度をしていた。
「じゃあーね。また、遊ぼうねー」
なっちゃんは手を振り彩華ちゃんはペコリと礼をして一緒に帰って行った。
「ありがとう」
ぼくは軽く手を振った。
「じゃあ、俺らも帰るわ」
次に駿我が言った。それに続き、出澄はうんと頷き立ち上がった。
「今日はありがとう。駿我、出澄」
唯一の男子友達。無くしては困る友達。大事な友達かな。
駿我と出澄の方見た。
「いや、礼を言うのは俺達の方だ。有難うよ」
「そっか。じゃあ、また」
駿我と出澄も帰り、背中をずっと見ていた。
「良い仲間を見つけてしまったな」と呟いた。
残り、さなちゃんだけが残っている。
「さなちゃんも、もう帰りなよ。両親が心配するよ?」
「だけど、片付けないと……」
何故か心配そうな顔をするさなちゃん。
「いや、良いよ。それぐらいはぼくがやるよ。それにさなちゃんには感謝しきれないほど感謝してるし」
ぼくはハッキリと答えた。
だが、表情は変わらなかった。なんでだろうとぼくは思ったのだが、考える余地も無く次の言葉出てしまった。
「そのお礼というか、お礼ではないけれど、家までは送るよ」
ぼくはそこまで紳士的な存在ではないけど、女性が一人で夜道を歩くのは危険だと、ぼくは思った。
「そう、ありがとう。送ってもらえると有難いかな」ニコッと笑った。
「うん」
ぼくは結局、さなちゃんを家まで送ることにした。こんな夜中に女性を歩かせる訳にはいかないし、さなちゃんの両親に悪い目で見られるのも嫌だった。
そして、ぼくは面倒ごとを起こすのが大の苦手で大ッ嫌いだ。それに好意を持ってるわけではないし恋愛感情を持っている訳ではない。
そう、単純に友達として好の上を抱いているだけだ。
痛くもない腹をさぐられるのは嫌いだ。
そして、さなちゃんの足が止まり家の方へ体を向けた。
「ここっ!」
シニカルに笑うさなちゃん。
「ここ?」
オウム返しをした。
「今日はありがとうね」
「いや、こちらこそ、さなちゃんのおかげで友達も増えたし、本当に感謝している」
さなちゃんは首を横に振った。
「じゃあ、またね!翠くん!そして、おやすみ!」
「あぁ、おやすみ」
手を振って玄関の中へと入っていった。
さなちゃん家を後にして辿った道を歩く。
「――そして、ありがとうねっ!」
振り向いたがさなちゃんはいなかった。でかい声で言ったなと思ったが。――ぼくの方こそだよ。
本当に今日は疲れたな。
家に帰ったら片付けをしてシャワーを浴び寝て……、
…………
佐々昏さな……、
そして、
岸城樹駿我……、
早代乃出澄……、
弐華井彩華……、
白柳菜津未ことなっちゃん……、
彼女たちは本当にぼくのことをどう思っているんだろう。
ぼくにとって友達はなんの関係のない人だと思っている。気軽に嘘を付き。気軽に逃げ。気軽に騙す。それが友達と言う意味だった。あの時、あの部屋で教わった。《友達と言うのは敵です。キミ達がここで1位になるにはどうすれば1位になれますか?それは……、騙し合い、嘘を付き、裏切ることだと私は思っております。》
だけれども、今は違う。何でだろう。それはさなちゃんと出会い、一里塚先生とも出会い、駿我や出澄や彩華ちゃんやなっちゃんに出会って変わった。変わってしまった。変わって良かったとぼくは今思った。
そしてぼくは少し黙り込み進ませてた足を止め、大きくため息を吐く。
「畜生……」
本当に全く。あの時のさなちゃんの一言が蘇る。
決してさなちゃんのことが嫌いという訳では無かったらしい。それは結局のところ好きなのかもしれない。それが本当に好きなのかはぼくには分からない。
……ただ、あなたに言いたいことがいくつもある。日本を去る前に一つだけ言っておきます。
「………………、………………、――――」
――佐々昏さん、とぼくは改めて苗字の方で呼ばさせて貰います。それは佐々昏さなさんだけではなくて、家族に向かって言うことです――
「――ありがとう」
ぼくを変えてくれて、ありがとう。
それは決して変わったと言う訳では無く、何処かが変わったのだろう。それはぼくには分からなかった。理解できなかった。そして、足を進ませさなちゃん家を後にして帰路へと向かう。
帰路に辿り着いたぼくは最後に呟いた。
「ちゃんとしろ……よ、ぼく」
そこまで朴念仁でも、ふてぶてしくも卑劣漢でもない。……けどやっぱり。
とぼくは何故このような事を呟いたのか、
それに何故
ちゃんとしろよ、
と思ったのか。
本当にわからなかった。
家の前に着きぼくはこう思った。
自分を嫌いになるな。
そして、世界はぼくらに優しく厳しい世界。それは当然のように必然のようなことだ。「自分は自分で変えないとなんの意味もないってことを教わったけな……」
ドアに手をつけようとした時、煌々と照る月を見る。
今日は満月か……綺麗だな。美しい。
紅い月に蒼い月……
もう、そろそろ終焉を迎えるときか。
「ふん。辛いな……」
ドアを開け家の中へ入る。
ぼくは寝室へ行きベットの中へ潜り込み、数秒沈黙する。
そして、少し唸る。
「おやすみなさい、そして、さようなら」
この日がもうすぐ終わることを知り、ぼくは眠りについた。そして、目を閉じた。
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