第11話 遊夜の会(友家の開)弐

「さあ、どうなんだろうな。今後、自分がどうなっていくのか、予知してみようぜ」

 藍木あいきはシニカルに笑う。

「それは面白いな。たけれど辞めておこうぜ。今の自分にとって、そんなことをしている場合じゃ無いだろう?」

「ふん。そうだな。俺たちは、そういう者とは違うからな。何ていうか的が外れたと言うか、線路から転げ落ちた様な。うーん」

 藍木は一人で思考する。

 そして、ぼくはその隣で思考している顔を見る。

「思い浮かばねぇ」と頭を抱える藍木だった。

「おい、おまえはどうよ。おまえの考えを聞かせてくれよ」

「あ?考え、考えか。どうだろう。分かんねぇな。さっきも言ったように、今この時が大事で生きるのに大変なんだよ」

「おまえが生きるのに苦労してんのか。ハッハッ、笑っちまうぜ」

「おまえもそうだろう?藍木」

「あぁ、だけれど、俺の場合は苦労では無いんだよ。《クロウ》では無く、《苦労》でも無く、《くろう》では無い。簡単さ俺は努力してんだよ。生きるのに努力してんだよ。他のヤツらに比べて落ちているし欠落している。一般のレヴェルがどのくらいかは知らないけれどよ。例で言うなら半分としよう。そう、十分の五。まあ、二分の一だな。それで、俺の場合は二分の一に満たない。二分の零点三と言った所かな」

 またもやシニカルに笑う藍木だった。それは何の笑いなのかはぼくには分からなかった。

「お互い大変って訳か」

 うんと頷く藍木。

「他のヤツらはどう言う風に生きてんのか知らねぇけれどよ。息を吸うかの様にごく普通に理由も無く、目的も無く生きてるヤツらもいる。ただ、それって面白くないよな?人生において何か変動が無いとやってられねぇよな?一つの線だけ歩んでも俺はつまらないと思っているんだよ。サヴァン症候群とか言うんだっけな?俺はそれに反対さ、大嫌い。身震いするさ。だから、俺はこの人生に色んなものに挑戦し努力している」

「ふうん。なんか、楽しそうな人生ではないか」

「だろう?おまえもやれよ――って、そっか、おまえ、今生きるのに苦労してるんだから、楽しめれぇのか。なんか虚しいな」

 最初はシニカルに笑っていたが、徐々に表情が曇っていた。

「虚しくは無いさ。この世界は好きだよ。愛している。ただ、唯一許せないのが一つだけある」

「なんだよ」

 藍木は少し眉をひそめる。そして、前屈みになる。

「それは、どうして、このぼくがぼくなんだろうってな」

「あん?」眉間に皺を寄せる藍木。

「誰だってこういう風になりたくなかったって思う。本当はこういう風になりたかったって思う。当然さ。自然さ。明瞭さ。だけれど、それってさ世界のルールが自分と合わなくなっておかしくなって神経に死ぬほど痛感して思うんだよ。その時、察するんだよ。死ってこういうものだなって。ぼくは感じたさ。あぁ、感じ取れたさ。嫌という程感じ取れた。まあ、元々ぼくは何かになりたいって思わなかったけどさ。だけれども、それ以上に酷く醜く卑劣な存在は……その感情すらも無い。なろうとする感情も無い。それってさ、つまりさ………………」「あぁ、そうだな」「そう、さ」

「因果から追放か……久しぶりに聞いた呼符だな」

「因果から追放されたのはザット三年前ぐらいだったけな。あまり覚えはないけれどさ」

 ぼくは少しため息をつく。

「三年前か……あの事件があってから、もう三年が経ったのか早いな。クックック」と笑う藍木。

「聞いてた話ではこの日本でも例の事件のことを知っている人がいると聞いたけれども、漏れすぎだろう」とぼくは肩を竦める。

「あの時、でっかく新聞に載っていたからな。あれはひでぇもんだよ。多分、全人類が初めてゾクッとした話だな。まあ、載せなくてはいけない理由があったかは知らないけれどよ。本当にひでぇ話だよ」

「んで、」とぼくは両手でパチンと鳴らす。

「その被害者の一人がこのぼくって訳だ。どう思うよ?」

 藍木はこほんっと咳払いする。

「正直にすげぇと思う」

「おう、そうか」

「あれ、なんだよ。その呆気ない感想は、よう」

 藍木は怪訝そうに伺う。

「いや、気にするな。やっぱり、同じ道を歩んできた奴の感想だなと思っただけだよ」

「そうかい」

 藍木は肩を竦める。

 何故、肩を竦めたかは知らないけれども、ぼくの感想についてはちゃんと理解したようだ。

 藍木とぼくは一対一。そして、零対零。

 ぼくと藍木は瓜二つの存在なのかもしれない。

 さっきも感じたけれど、一目見て何処か似ている。……本当に、何処かが。似ている……

 類は友を呼ぶ。

 それとも、友は類を呼ぶのか。

 表と裏。

 それか、裏か表か。

 どちらが表で裏か。

 どちらが裏で表か。

 それはわからなかった。

 どちらが表の人間なのか。

 どちらが裏の人間なのか。

 結局終言だった。

 けれど、ぼくと藍木は何かどこか似ているように感じる。

「結局さ――そう、考える事は無いってことかな」

「――多分な」

「――ふん」

 ぼくと藍木は何気なく会話を交わしその場で別れた。


 と、数時間後。

「はー楽しかったー。もう二十一時を過ぎているのかー」

 出澄は腕をぐぅーと伸ばした。

「そうだな。あっという間だったな」

 出澄が言ったように同意する駿我。

「そうだね。誘ってくれてありがとうね。さなちゃん」

 なっちゃんはさなちゃんにお礼を言って、なっちゃんは飲み物を取り、口にした。

「いや、そのこちらこそ」

 頭を掻き照れるさなちゃんだった。

 ぼくは彼らの行動、言動を見る限り友達って多い方が「いいのかな」って自然に呟いてしまった。

「うん?何か言った?翠くん?」

 さなちゃんはぼくの独り言を聞いていたのかぼくに聞いてきてその隣にいた、なっちゃんも疑問になったのだろうか、こちらを見ていた。

「いや、気にしないで。ちょっとお手洗いに」

「――あっ」

 さなちゃんとなっちゃんは顔を赤くして「ごめんなさい」と言った。

 リビングに向かい、壁にもたれて数秒沈黙する。

「なんかこんな感じ。久しぶりだな……」と呟く。

 ぼくはことを済ませ庭へ向かった。

「お待たせ」

 ぼくは手を振った。

 あ、そう言えば料理……、

「そう言えばさなちゃん。料理することができないって言ってたのに物凄く上手にできてたね。それに朝くれたおにぎりも美味しかったし」

 ぼくの唐突の質問に顔を真っ赤に染めこちらを見て頬を膨らませた。

「え?さなちゃん。料理出来ないの?」なっちゃんが言う。初耳なんだ。

「あ、いや!もう、翠くん!言っちゃダメだよ!デリカシーないんだから!」

 子供みたいにムキになってぼくに怒るさなちゃんだった。

「ん、てか。朝、翠におにぎりをあげたと?」

 駿我はぼくの方を目を細め意味ありげに言ってきた。どうでもいいところによく気づくなこいつは……。

「そこまで進んでるかー!いいね!いいねー!」

 駿我は肘でグイグイと茶化してきた。

 なんていう誤解をしているんだ。全くと思い、ぼくはため息をして肩を竦めた。

「いや、そういうのではいんだが……さなちゃんも否定して欲しいんだが……」

 ぼくは否定をしたが、さなちゃんの方を見たらプイっと向いてた。

「そう……」呆れた感じに言ってきた。やれやれと言わんばかりの表現にも捉えられた。

 ……そうだ。

 出澄がリビングから出てきて何かソワソワしていてぎこちなさそうにしていた。

「出澄どうかしたか?」

 駿我は出澄に質問した。

「なあ、この歳になってもなんだけれどよ。花火持ってきたからやらないか」

「あぁ、やろうぜ。歳なんぞ関係ねぇ。うん。いいよねこういうのも悪くないね。大好き」

 ぼく達は同時に感想を言った。

 袋から出し遊び、彼らは子供みたいにはしゃいで、

 暴れて、

 喜んで、

 飛び跳ねて、

 笑っている彼女たちにぼくは見惚れていた。

 こういうのが友達って言うんだろうかとぼくは思った。

 なんか、久しぶりな気分だな。

 何年ぶりだろうか。

 ……やっぱり思い出せなかった。

 本当にどうしたんだろうな。

「やっぱりこういうのって良いもんだな」

 花火を遊んでいる彼女らを見ると落ち着くなあ…… 駿我と出澄も笑い合って彼女らの元へ行った。

 こういうのも悪くないな。


 駿我や出澄やなっちゃんの三人は現在花火をわいわいと遊んでいる。まあ、子供が遊ぶような物だが、やっぱりこの歳になっても笑顔を見せ喜んで笑って遊ぶ。

 それに彼らは幼馴染だ。

 幼馴染か……ぼくには分からない世界だな。

 ふうん。こう言う感じ、なんか悪くないな。

 まあ、後ろから彼らが遊んでいるのを見るのもなかなか乙みたいなものだ。

 なんか、幸せって気分だよな。……幸せか、なんかいいよな。ぼくには分からないが、こう見ていると少し良い気分になってしまう。これが幸せなんだろうか。

 なんか切ない感じで苦しい感じだ。

「……こう言うのもなかなか……だな」

 まあ、だけれど。彼らについて行くには当分先になるだろう。

「ねえ、ちょっとコンビニ行かない?」と話しかけられ振り向いたら彩華ちゃんだった。

「良いけど。何か忘れたの?」彩華ちゃんはうんと頷いた。

「ふうん。さなちゃんたちは?」

 彩華ちゃんは彼女達を見て視線を戻した。

「いや、良いよ。二人っきりで話したいこともあるし」

 話したいこと?なにか悪いことをしたのかな。

 してはいけないこと。

 言ってはならないこと。 

 ……分からなかった。

「……うん。分かった」

 ぼくたちが玄関へ向おうとした時、さなちゃんに声を掛けられた。

「ねえ、翠くんと彩華ちゃんどこ行くのかなっ?」

「ちょっとコンビニ付き合うだけだよ」

 ぼくはさなちゃんに言った。

「……?なら私も行くっ!」

「辞めておけよー。さな!二人っきりにさせておけ。それに、翠なら変なことしないぜ。俺には分かるぜ。それに、俺の勘だけれどよー相談したいことじゃねえか?」

 さなちゃんが頬を膨らませ、駿我の方を見てじぃーと見た。駿我が少し驚いて手をひらひらさせた。

 ちょっとしか会っていない奴のことをこうも 分かるとは流石だな。

 ぼくもかなり落ちたものだ。

「……変なことって」

 ぼくは駿我に言った。だが、駿我は酔っているのか知らないが曖昧な返事をした。

 まあ、酔っていようがぼくには関係無かった。

 そして、ぼくと彩華ちゃんは玄関へ着き靴を履いた。

「じゃあ、行ってくるね。さなちゃん。家のこと任したよ」

 さなちゃんはうんと頷き、表情は少し悲しげになっていた。

「んで、話って何なの?」

 ぼくは彩華ちゃんに聞いた。

「うん。さっきの話なんだけどさ。本当にさなちゃんのこと本当にどうも思ってないの?」

 心配そうに上目遣いでこちらを見てきた。

「……さなちゃんのことを思っているか……。ぼくには分からないんだよね。その、詳しくは言えないけれどさ。ぼく病気なんだよね。積極的感情と言うものが結構欠けているんだよね。かなり酷く醜く。そのもの自体が分からないってことかな。思い出したくないけれどね。あの時のことは……」

 ズキリ痛む心臓にぼくは狼狽えた。

 ズキリ痛むこの痛みなど前に比べればマシなもんだ。だが、痛いことには変わりはないがやっぱり痛かった。

「――え?」彩華ちゃんは驚き、声が出ていた。

「病気……それは治らないやつなの?」

「医者からはそう言われてるね。あまり覚えてないけれど」

「……私、悪いことしたのかも。翠くんの過去を掘り起こしたりして……」

 彩華ちゃんの体がブルブルと震えていた。

「いや、良いよ。いつかは本人にも言うつもりだったからね。いつかね……」

「そっか……」

「さなちゃんがぼくのことをどう思っているかは知らないけどさ。多分……いや。日本に来て初めて優しい人に出会えて良かったなってぼくは思っているからさ」

「それは良い出会いをしたね」

 ぼくはうんと頷く。

「さなちゃんはさ、ぼくのことどう思っているんだろうね。嫌いが七十で好きが……どのくらいだろう……」

 彩華ちゃんは首を横へ振る。

 コンビニまではあと十五分ぐらいで着くことを確認して話を続けた。

「多分。いや、多分じゃないよ。翠くんのことを心の底から好きだと思っている。嫌いなんて一欠片も片鱗も微塵すらも思ってないよ。だってさ、今さっきだってさなちゃんが心配しそうになってたでしょう。それに、玄関を出ようした時泣いていたもん」

 ……泣いている?何でだ?

 彩華ちゃんの言っている意味が分からなかった。

「そう。ぼくの、ことを好き、なんだ……。これはひどい仕打ちだな。これ以上好きになって貰うのは構わないけれど本人へのダメージがでかくならないうちに別れた方がいいかもな……やっぱりぼくには、もう――できないな」

「何でできないって思ったの?」

「それは一度やってたからです」とは言えないよな。

「さなちゃんに助けてもらった日からお世話になっているからね。それに、なんか裏切るとぼくのほうが苦しくてね。なんか、分からないけれど……」彩華ちゃんはフフッと笑った。こちらを見て涙を拭き何度も見てきた。

「やっぱり、翠くん。さなちゃんのこと好きなんじゃない」

「……どうだろうね。さっきも言ったように分からないさ。だけれど彩華ちゃんが言うのなら……そうかも、そうかもしれないな」

 少し身体が重く感じる。

「翠くん優しいもんね。さなちゃんだけに、集中的に」

 彩華ちゃんはハニカムようにこちらを見てきた。

「………………」

「そう」ぼくは適当に相槌を打った。

「それに、さなちゃん。翠くんと出会ってから本当に変わったよ。なんて言うんだろう。別人になったと言うのかな。出会う前と出会った印象、イメージは遥かに変わっていよ」

「……それ、前にも誰かに言われたよ。遥かとは言わなかったけれども、変わったね。と言ってたよ」

「……やっぱね。ふふっ。話変わるんだけれど……いいかな?」

「うん?良いよ」

「私ね。つい最近好きな人が出来たんだよね。普通にかっこよくて、誰にでも優しくてね。だけれども、その人の詳しく分からないんだよね。……本当に。なんだろうね。一目惚れってやつなのかな。その人のこと、毎日考えてる感じでさ……声掛けようとしてもさ、掛けられないんだよね。私こう言うの苦手でさ。勇気が出ないんだよね。それに、もしその人にさ彼氏がいた場合さ、私ショックになってその人のことを嫌いになるかもしれないんだよね。好きな人を嫌いになるの私嫌なんだよね。大嫌いなんだよね……」

 彩華ちゃんが言っていることに少しばかり同情はできないけれども残りの部分は同情することができてしまった。

 それはぼくの欠落しているせいでは無く。単純に……………………

「声掛けにくい気持ちは分かるかも。ぼくもあちら――いや、留学していた時に好きな人がいたんだよね。だけれど、この性格じゃあ声を掛けようにも掛けられないし、例え声を掛けたとしても何の話をすれば良いか分からなかったんだよね。何ていうかさ。男子は男子。女子は女子って言うかさ。その、異性の人よりもさ同性の方が声掛けやすいってのあるじゃない?ぼくはそのシステムのやり方だったみたいだったんだよね。まあ、その後声を掛けられず終わったんだけれどね……」

「翠くんにも好きな人いたんだね。それってさ――」「うん。そうだよ。起きる前の話さ。それに、その声に掛けにくかった相手は元カノだね」

「あ――そうなんだ。もしかしてだけれどさ、その、元カノさんから声を掛けてきてくれたの?」

「うん。そうだよ。その時は本当に嬉しかった。飛び跳ねた。もう、心臓がドクンドクンと高鳴って言葉が出なかったさ」

「そっかー。なんか……その、言いずらいのだけれどさ……その、元カノさんとはさ、何で別れたの?」

「詳しくは言えないのだけれどさ。ぼくのせいで別れたんだよね。決してぼくが悪いことをしたとかそういうのではなくてさ。単純にぼく自身に理由があって別れたんだよね」

「……………………」

「その時、そこで、アイツに言われたんだよね。《二度と会えないかもしれない。だから、またいつか会えたら会おうね》ってね。ぼくはその時、アイツが言ったことが全く理解出来ずにその場から離れてたんだ。今、アイツが何をしているのかも分からないんだよね」

「……そうだったんだ。翠くんはさ、その元カノさんとはまた会いたいとは感じないの?」

「多分、無いかな。いや、無いな。全く持って。決してアイツのことが嫌いになったとか、恨んでいるとかそういうのでは無くてさ。単純にまた会ったらさ、アイツを悲しませるかもしれないしさ。それに、彼氏いるかもしれないしな」

「多分彼氏はいないと思うよ?」

 彩華ちゃんはどうしてか分かったような口振りをする。

「――どうして?」

「女の勘って奴かな。結構当たるんだよ。女の勘って奴はさ」

「それは随分と良いものを持ってるね。ぼくにも分けて欲しいものさ」

「フフフッ」と笑う彩華ちゃん。「――男の勘って聞かないもんね」

「だね。そうだね。そうかもしれないね」

「だからさ、その彼氏がいるとか考えない方がいいと思うよ」

 彩華ちゃんはハニカムように笑う。

「……うん」と頷く。

「なら、彩華ちゃんも好きな人に彼女がいるとか思ったらダメだよ」

「……うん。痛いところ付くね……」

「それは、お互い様でしょう。良い意味でさっき相当響いたからね。日本に来てなかったら、こんな出会いすら、迎えることが出来なかっただろうな」

「フフっ。そうだね。私も翠くんと出会えて良かったよ」

「うん」

 決して、アイツに彼女がいたところでぼくは悲しまないだろう。アイツに笑っておいてほしいだけ、楽しんでいてほしいだけ、喜んでいてほしいだけ、もう二度とあんな……アイツの顔を見たくもない。

 ……一体、今、どうしているんだろうな。ぼくはこうして元気だからさ、おまえも元気だせよ。また、いつか、

「何してるの!さあ!」

「あぁ……」

「もうそろそろコンビニ着くよ!早く行こうよ!」

 彩華ちゃんはぼくの手を握る。

「別にコンビニは逃げないよ……」

「ま、そうだけれど。コンビニの方からも来ないよ!」

「……そうだけれど」

 ぼくと彩華ちゃんはコンビニへと走って入っていた。

「……さなちゃんにだけ優しいか」

 ふと、先ほど言われたことを思い出した。

「……なんとも言えないな」

 ぼくもコンビニへ入り彩華ちゃんの忘れ物に付き合った。

 どうでもいいと思い、買ったものは聞かなかった。

 当たり前なのか知らないけど、荷物は全部、ぼくが持った。

 ぼくと彩華ちゃんはコンビニを出たところで、少し風に当たり夜空を少し眺めてた。

「……なんか、星って良いよな」

「うん?どうして?」

「……いや、なんとなくそう感じたんだよね。もう家に戻ろうか」と言い。彩華ちゃんはうんと頷いた。

 最初来た道と同じ道を歩いている。

 誰もいない静かな夜にぼくは寒気を感じた。 夜だから仕方の無いことは知っていたが流石に寒すぎだ。

 ぼくは早く帰りたいと思い帰路へと向かった。

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