第2話 新しきクラスメイト(深愛のキミ)
何も無き一日に祝福を!
と言う簡単な言葉だけで世界は変わるのだろうか。世界は変わらずとも身近な人達は変わるであろう――と願いたいね。
片付けがやっと――終わった。
疲れた。
朝から何で疲れないといけないんだよ。
全く。
もう出る時間だと気づきぼくは家を出て鍵をかい、走る。
学校に着き、ぼくは
多分、職員室にいるだろうと思い向かった。職員室の中を見たら一里塚先生がいたので失礼しますと言い職員室へと入った。
「先生、おはようございます」
先生に挨拶をした。
「あぁ、《いーちゃん》。おはよう」
いーちゃん?ぼくは首を傾げた。
「なんか言いやすいから《いーちゃん》にしたのよ」
言いやすいからって……。それになんの意味で。
「はあ……」ため息をした。
「じゃあ行きましょうか、荷物を持って私と来なさい」
「分かりました」
ぼくは職員室を出て教室を向かう途中、面倒ごとが待ち受けていた。
そう、
何故作ったのかがとても疑問で苦労する。
回りからすればそんな
それにしても、あの孤島にあった異様にとてつもなく大きかった螺旋階段とはもう二度と御免だ。
全く……。
「――無意味だな」
ぼくはふと、一里塚先生を後ろから見てたら疑問となったので先生に質問した。
「先生、先生はなんで先生になろうとしたんですか」
「それは、キミがなんでキミになろうとしたんですかと同じ質問よ」
即答された。
だったら、
「言い方を変えます。一里塚先生は何故この場所にいるのですか?」
先生はぼくを横目で見て目線を変え、目線を戻した。
「それは、私を必要とする者がいるからよ」
「誰にも必要とされてない人は一体どうなるんでしょうね」
「さあ?どうだろうね。私にしてみれば無縁の世界だからね。百パーセントそうだよ。とも言えないし、零パーセントそうだよ。とも言えない」
「人間は何かを求めて何かを必要として人間をかき集める。その逆もあるがな。例えで言うなら砂場がある。私は必要の分だけを集め積み重ねていく。ただ、キミの場合はバケツに砂を入れてそこから必要か不必要かを分ける。それがキミのやり方よね?」
「そうです」
「この社会だと私のやり方が多く使われている。キミのやり方もあるかもしれないが――」
「はあ」
「まあ、必要とされてる人よりはされてない人よりは――」
「あ」
目的地の場所へと着いてしまった。
「じゃあ、行きましょうか」
さっきの余談が無かったかのように表情を変え教室の前へと立つ。
「分かりました」
何故か緊張してしまった。心臓の鼓動が早く高鳴る。久しぶりだな。
「面接の時を思い出すなあ」
零れた。
先生がドアを開け先生が教室へと入りその次にぼくが入る。周りの目線がぼくの方へと突き刺さりぼくは恐怖心がした。
「え、なになに。昨日の人じゃん。あれ、まさか《転校》してくる人ってこの人なの!?」
って皆が皆、驚いていた。
正直、ここまで驚かれるとは思わなかった。
教壇に立つと視線が飛んできてやっぱり怖かった。
「はい、静かにー」
先生は拍手をするかのようにパチパチして生徒の目線が先生の方に向けられ、スゲェとぼくは思った。
感心した。
リーダー的な存在。
親に似た存在。
頼れる兄姉に似た存在。
まさにこれこそが先生と言う意味なのかもしれない。
「関東の方から来た。いーちゃんです。多分、何もわからない状態で来たと思う。この地域の地理にも詳しくないと思うので誰か教えてやってください。ではいーちゃん、自己紹介的なのをお願い」
「はい、分かりました」
一呼吸した。
「先ほど一里塚先生から紹介されたぼくです。ここに来たのは一週間ほど前です。分からないことが多いですが、話しかけてくれると幸いです」
ぼくは周りを見て自己紹介と言う自己紹介じゃない自己紹介をした。
「宜しくお願いします」
一礼を終えると先生が横目でこちらを見てニコッと笑っていた。
ふと、目線を変えたら
「うん……?あれ、いーちゃんと佐々昏さんって知り合いなの?」
先生はぼくに質問をしてきた。
「まあ、色々と昨日ありまして……」
「いや!! 昨日佐々昏に告白してたが!!」
男性が席から立ち上がりぼくを指した。
ぼくは勘違いにため息をつく。
「……いや、告白ではなく――お礼をしに行っただけですよ。それにぼくの恋愛はそう安くないし――それに……」「――こんな可愛い方なら彼氏がいるとぼくは思いますけれどね」
「いないよ」興味津々に口を尖らせる佐々昏さんだった。ぼくたちの会話に不備があったと思い口を挟んだろうとぼくは思った。
その《いないよ》と言う四文字でぼくは驚いた。
「……え」
ぼくは口がポカンと開き、周りも彼女の方へ目線をやり、驚愕していた……。へぇ、知らなかったんだ。
「…………」
ぼくは彼の目を凝視し続けた。
「……あ、すまなかった」
彼は目を泳がせ、気まづくなり謝罪をして席に座った。
「私、聞いてないけど」不満そうに言う先生。
「いや、言うほどでも無いかと……」
横目で先生を見て一歩横にずれた。
「ふうん」
意味ありげに目を細め、ぼくのほうを見る先生。
「ま、いいや。じゃあ、いーちゃんは一番後ろの席ね」
窓側の一番後ろの席を指を指した。
「分かりました」
ぼくは席へと向かった。
向かってる途中、佐々昏さんが腕の辺りで紙を隠すように見せてきた。その内容は昼休憩のことだった。と、ぼくはその紙を見ると《昼休憩屋上へ✩》と書かれていた。
ぼくはそれに気づき相槌を打った。
彼女も察したのだろうか、ぼくと同じことをした。
ぼくは席に着き、隣を見ると誰もいない。なんか寂しいな。
「早々一日目から最悪」
窓の外を見てボヤいた。
「困ったな―」ぼくは一日目から困ったことが起こり今後のことが心配になり、ため息をついた。
―あっという間に時間が経ち昼休憩が近づいていく――昼休憩だ。早……。
「屋上へ行くか……待たせては悪いからな」
席から立ち上がろうとした時、男子がぼくの元へと来た。目が敵意の目になっていた。これは何とか避けないとな。
「おい、おま――」
「あれ、どこ行った?さっきまでここにいたんだけど」
彼らはよくよく見るとダミーだったことに気づき回りを見渡していた。
「危ない、危ない、ダミー人形持ってきて正解だった」
小走りで屋上へと向かうと螺旋階段があった。
「はあ……」
大きくため息をつく。
「これ、本当に登るのか……」
なるほど、つまりこの階段を登らなければ、佐々昏さんと出会えないというわけか、佐々昏さんもここの螺旋階段を登ったとなると凄いとしか言えない。
それに見た感じ、スポーツはしていないと見える。だから、男性たるもの女性に負ける訳にはいかない。と言うか登らなければならない。
がくりと頭を下げていると後ろの方から声が聞こえてきた。
「ね、キミ。何かあったでしょ?」
その声に振り向くとクラスメイトの
そう、休憩の時に話しかけて来た女性だった。ぼくに優しく対応してくれている方だ。
肩までは付かず普通の黒髪だった。
「まあ、男子から敵意の目と言うか殺気を感じたと言うか……」
「あらま」
手を口にやり、笑いをごまかそうとする夕霧さん。
「まあ……」
「困ったね―」フフっと笑い。ヤレヤレと言わんばかりの表情をする夕霧さんだった。
「ぼくは一日目からこんな感じになるとは露ほども思ってませんでしたから」
「そうね。転校初日にこんなことが起こる人なんて、この世界でキミだけかもね。フフっ」と夕霧さんはキッパリと言った。
「……困ったな。あの目線は相当厄介な目をしてたからなあ。彼らも馬鹿では無いからすぐ気づくしな……どうしたものやら」
ぼくは何を言っているんだ。まるで他人行儀みたいな言い方になっていたことに気づき、拍子抜けだと感じた。と夕霧さんは手を挙げた。
それに疑問となり何でしょうと言った。
「ここは私に任して、誤魔化しておくから」
「いいんですか?」
夕霧さんはうんと頷き軽く手を振る。
「あ、ありがとうございます」
礼をして急いで屋上へ向かった。
扉を開くと佐々昏さんがいた。
風に吹かれて髪を耳の後ろへとやる佐々昏さん。ぼくはその仕草を見て、美しいと感じた。
……――多分。
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