第51話 魂浄請負人・茜
―――
「ここからはキミも知っているとおりだよ、アカネ。少し長くなってしまったが、ここまでがボクの過去のことだ」
「なるほどね。亡くなってから、アオイもいろいろあったんだね…………」
「ああ、そうだね」
「……………………」
「……………………」
「じゃない! わたしは聞き逃さなかったよ! 今の話が本当なら、わたしはアオイに能力(チカラ)を貸し与えられたんじゃなくて、分け与えられたことになる。だとしたら、アオイ、アオイは今、危険な状態なんじゃないの!? …………そういえば、最近アオイの気配が感じられなくなるようになってきた! それって消滅が近いってことじゃないの!? どうして? どうしてわたしに力を分け与えるなんてことしたの!?」
わたしは怒涛の勢いでアオイに詰め寄る。だって、今の話が本当なら、アオイは…………。そんなの、絶対に認められない。アオイの生きた証、わたしとアオイの思い出が無くなるなんて、絶対に嫌だ!
「アカネ」
わたしと対照的に、アオイはとても落ち着いて、笑顔を見せている。
「だから、キミがさっきここに来た時に言っただろう? ボクは依頼人だ、って。」
「…………!」
アオイの肩を掴んでいた腕の力が弱まる。
「キミが、ボクを救うんだ」
***
「…………」
アオイが消滅を免れるにはそうなる前に未練を断ち切って成仏させる必要がある。でもそれは、アオイとのお別れを意味する。わたしはずっと、アオイといっしょにいられると、そう思ってたのに…………。
「アオイ、一応聞いとくけど、わたしたちがこのままいっしょにいられる方法はないの?」
アオイは力なく首を横に振る。
「ない。キミがボクを認識できなくなっているということは、ボクが生と死の境界で曖昧な存在になっているということだ。仮にボクがこれ以上キミに力を分け与えないようにしてぎりぎりでその存在を保ち続けたとしても、キミはボクの力を与えられなければボクと話すことができない。キミがボクの未練を断ち切る。それ以外の選択肢はない」
「そんな…………。…………!」
わたしは、淡々と話すアオイの唇が震えていることに気づく。バカ、バカだわたしは。アオイは覚悟を決めてここにいるんだ。わたしがそれを揺るがすようなことをしてどうする。覚悟ができてないのはわたしだけなんだ。
「そっか…………わかった。わたしに…………わたしに任せてよ! 魂浄請負人である、このわたしに!」
寂しさも悲しさも、今はぜんぶ心の奥に押し込んで、無理やり笑う。未練を抱える人を助けるのがわたしの、わたしたちの仕事なんだから。
「…………ありがとう、アカネ」
アオイの笑顔は、優しくて、とっても寂しい。こっちが泣きそうになるくらいに。だからわたしは頑張らなくちゃいけない。わたしを救った、一人の少女を救うために。
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