第39話 碧い瞳に輝く星

「街に出てきたけど、アオイは何がしたい?」


 わたしは人が多い場所に慣れない様子のアオイに尋ねる。


「う……、正直勢いでここまで来たけど、ボクは女子高生がどういう遊びをするのかわからないんだ…………。アカネ、教えてくれるかい?」

「え、そんなのわたしだって…………」


 いや、待てよ。アオイがこんなに素直にわたしを頼ったことが今まであっただろうか。いやない。だったらここは頼れるところをアピールしなきゃ……!


「しかたないなあ! いい、アオイ? ナウでヤングなJKはみんなタピオカ飲んでるんだよ? まずはタピオカを確保してタピオカ片手に街を闊歩するとこから始めよう!」

「タピオカ? よくわからないが、それはおいしいものなのかい?」


 無垢な瞳でアオイは聞いてくる。


「うん! それはもうナウでヤングなJKに大ウケのおいしさだよ!」


 ……わたしタピオカ飲んだことないけど。


 その後わたしたちは、タピオカを飲んだり、ゲームセンターに行ったり、服を見たり、ごはんを食べたりして日が暮れるまで遊びつくした。


 わたしはその一瞬一秒が楽しくて、こんな時間がずっと続いてほしいと、本気で思った。アオイは、今までわたしに見せなかった表情をたくさん見せてくれた。


***


 そして、時刻は夜の10時半頃。アオイはベランダに出て星を眺めていた。


「アオイ、なにしてるの?」

「今日は、星がとてもきれいだ。ずっと、目に焼き付けていたくなるくらいに。」


 アオイの透き通った碧い瞳に、夜空の星が輝いていた。


「昼間すごい晴れてたからね。アオイって、意外とロマンチストだったんだ」


 少しからかうように言ってみる。怒るかとも思ったけど、そうはならなかった。


「……そうだね。今は、もっと世界のきれいなものを見てみたい。そう、思っているよ」

「アオイ…………」


 いつもより儚げな顔で、アオイは空を見上げている。


「だったら! これからいっぱい見ようよ、一緒に! 見たことないもの、見てみたいもの、わたしもいっぱいあるから!」

「うん、そうだね。いっぱい、見よう」

「うん!」


 この時の、言葉とは裏腹に寂しげなアオイの表情が、わたしには少し気になった。


「そろそろ寝ようか、明日も依頼があるからね」

「じゃあ、明日も頑張ろうね! 明日の依頼人はどんな人なの?」


 わたしはベランダから家の中に戻るアオイの後ろ姿に問いかける。


「間違った道を選んでしまった少女だ。会えばわかるさ」


 アオイはそう言うと、わたしに振り向かず寝室へと去ってしまった。

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